街へ向かって。さらば地竜の国!
僕達はお城の側で五人、シュリちゃんを待つ事にした。体操したり、空を見たり、それぞれで待っているとラーチャオさんが突然声を上げた。
「そういやさ、リードもジュリア様もだけど、何かトントン拍子に話が進んでるよな?まるでもう帰るみたいじゃね?」
「そうだぞ、今日ここを出る。」
「へえ。今日……今日かよ!?」
「ああ。」
「えっ!?」
焦った顔のラーチャオさん。うん。正直僕もびっくりした。だって皆お別れみたいに挨拶をするから……赤ちゃんドラゴン君もお別れの挨拶をしてたし……。
「驚く事でも無いだろう。私達の目的はこれだ。すぐに帰らないと依頼主が心配じゃないか?」
そう言って出したのはヨツバソウ。確かに一番大事な事だ!
「そ、それなら言ってくれよ!そうしたら昨日色々買う物あったのに!」
「それは悪いと思っている。だけどお前達は相当疲れていただろう。言ったら慌てるだろうし、二人には落ち着いて休んで欲しかったんだ。」
カズハさん、今日遅れて来たよね。リードさん達は僕達が帰る前提で話をしてたんだ……まさか!
「カズハさん、まさか今日寝坊したのは!」
「そうだ。シュリ達には昨日伝えておいた。いきなり居なくなるのはまずいからね。幸い彼女は徹夜だったから、城に行けばすぐに会えたよ。」
僕達何にも気にしないで寝ちゃったんだ……反省しないと。
「そろそろかな……うん。皆、シュリが来たぞ!」
「おおい!?まだ俺心の準備が出来てないし!?」
あ……僕達が話してると、シュリちゃん達が走ってこちらにやって来た!ど、どうしよう!?もうお別れなんて、僕も心の準備が……。
「やあまた会いましたな!五人とも、女王様との話は終わったみたいで良かった!」
「皆お待たせ!あれ?二人ともどうしたの?」
「私がさっき伝えたのさ。二人とも驚いてるよ。」
シュリちゃんとリードさんが合流、シュリちゃんはカズハさんをじーっと見てる……。
「だが実際、依頼の品が手に入った時点で帰ることは決まってたんだ。最優先はこれを届ける事、だろ?」
「ま、まあね。でも、やっぱり教えてあげても良かったんじゃないかな?」
三人で和やかに話してる。僕達はそれをじっと見てから、二人で顔を合わせて、それから……
「ま、まあ確かにな!カズハっち、サンキューな!」
「カズハさん、僕達の体を気遣ってくれてありがとうございます。」
「ありがとう。私も次は気をつけるよ。」
同時にカズハさんにお礼を言った。僕達の事を考えてくれてたんだ、感謝しないと!
「じゃあ、いよいよお別れになるんだね……。」
「本当に急ですまないと思っているよ。でも、これが私達の仕事だからな。」
「うん、分かってるよ。だから……これ!リードさん、お願いします!」
「これは?」
「うむ。これはな、シュリ様からの贈り物だ!」
リードさんが持ってきたのは大きな箱。中身は……
「おおー!俺の欲しいアクセサリーがたくさんあるし!これ貰っちゃっていいの!?」
「うん!ラーチャオこういうのが好きだと思って買っておいたんだ!」
「マジ助かるし!嬉しいなぁ!」
箱を受け取り大喜びのラーチャオさん。続いてカズハさんに箱が渡される。
「カズハにはこれ!この国周辺の魔物の素材だよ!警備隊で保管していた物をちょっとだけ分けてもらったんだ!皆からのお礼だよ!」
「こんなに……ありがとう!大切に使わせてもらうよ!」
「次に、はい!サキちゃんとびー君!」
「わ、私にもですか!?」
「びー!?」
二人にも箱が手渡されるけど、びー君は持てないからサキさんが持ってあげてるね。
「二人には果物とハチミツの豪華セットだよ!両方とも特産の物を用意したから、たくさん食べて強くなってね!」
「あ、ありがとうございます!」
「びー!びー!」
そして最後に、シュリちゃんは僕の方を見る。な、何か恥ずかしいよ……。
「ティム君にはこれを!」
「こ、これは?」
渡されたのは一本の短剣。持ち手と刀身が緑に光っている短剣だ。
「ティム君って軽い武器を使うよね。だから短剣をプレゼント!私が頼んだ特注品なんだ!」
「あ、ありがとう!でも、カズハさんは昨日帰るって言ったんだよね?すぐに用意できる物なの?」
「うん!これはリードさんが治ってからすぐ用意したの。元々お礼として作るつもりで、材料はあったからすぐに準備できたんだよ!」
「なるほど……。これ、大切に使うよ!本当にありがとう!」
僕は短剣を自分の腰に掛けた。うん、似合ってる!これで僕も少し大きくなったぞ!
「しっかし色々あったなー。シュリっちと会って、ここで依頼を受けて……。」
「本当だね!私なんて初めて会った時、ラーチャオに拘束されたもんね!」
「何!?ラーチャオそれはどういう事だ!?」
「り、リードさん待って下さい!?」
槍を突きつけるリードさん、ラーチャオさんは真っ青だ!
「ちょ!?待てし、あれはシュリっちがスパイだと思ったんだよ!よくあるだろ?逃げ出した子が敵と繋がってて情報を教えてるとか!
普通偉い人が、あんな場所に、少ない護衛で来ないだろ?逃げた奴らと同じ一味と思ったのよ!」
「!!」
早口で話すラーチャオさん。槍の先が近いから慌ててるんだ……サキさん?一瞬顔色が悪くなった?あっ違った。気のせいかな。
「私も初めはおとぎ話の読み過ぎと思っていたが……今ならそう考えるかもな。確かに不自然だった。」
「だ、だってあの時は人手が足りなかったんだもん!」
「でもラーチャオさん、シュリちゃんは悪い人じゃ無かったですよ!」
「ああ!本当にありがとうな!」
「そういう事なら私も疑うかもしれないな……次は気をつけるように。」
リードさんが槍を下ろしたね。これで一安心だ!
「じゃあ、そろそろ行くかな。」
「うん!依頼主さんの所へ早く行ってあげて!」
「今回は忙しかったから、今度はちゃんと遊びに来るし!その時はかわいい子を紹介してくれよ!」
「ラーチャオさんと気の合う人がいればいいですね。」
「探すのは難しいな。」
「えぇ……。」
僕達は門の外に歩き、森の方を見る。ここからまた馬車に乗って帰るんだ。道中何も無いといいけど……。
「そうだ!私達の仲間が街まで送ってあげる!皆来てー!」
「ぐおーー!」
「ぐおおーー。」
「がおー!」
シュリちゃんの掛け声で来たのは……ワイバーン!?そうだ、忘れてたけどここは地竜の国、ドラゴンの仲間も暮らしてるんだ!
「この子達に乗っていってよ!馬車よりも早く着くよ!」
「助かるよ!それではお言葉に甘えて。」
「がおー!」
「びー!」
あっ、赤ちゃんドラゴン君!ワイバーンの上に乗ってる!そこから降りてきてびー君と回ってるね。
「そうだシュリちゃん。ジュリア様の所にドラゴン君が居たんだ。もしかして迷子だった?」
「えっ!?そ、そうなの?……たぶん探検中だったんじゃないかな?色々飛んで遊ぶ子だし。」
「ティム、準備出来たぞ!君も早く乗れ!」
「はい!じゃあシュリちゃん……またね!」
「うん!また来てね!その時は色々紹介するよ!名所とか、食べ物とか!」
そして僕達はワイバーンの背中に乗ると、ワイバーンが翼を広げて空に浮かぶ。ここからまた空を飛ぶんだ。急いで依頼主さんの所へ!
「ありがとう!また来るからねー!」
「うん!頑張れ皆ー!私達、応援してるよー!」
さあ帰ろう!早くヨツバソウを届けるんだ!
◇◇◇
「行ってしまいましたな……。」
「そうですね。」
「シュリ様?寂しく無いのですか?」
「も、もちろん寂しいですよ!でも、近いうちにまた会える気がするんです。だから……平気です!」
「それはいい予感ですな。……シュリ様、その手紙は?」
「はい。これは……。」




