少年テイマー、ヨツバソウの効果を見る
「カズハさん、これは!」
「ああ。私達が見つけたヨツバソウだ。」
「ま、待って下さい!」
僕はカズハさんを止めた。彼女が次に何を言おうとしてるのかが分かったんだ。
「これはマスターさんの息子さんの分です!それを使うと……。」
「だが、今はこれしか無い。それにここで効果があれば、彼にも使う事が出来る。どうかな?」
わ、分かるけど……リードさんには早く治って欲しいし、効き目のテストも出来る!でも今ここにあるだけじゃ……。
「わ……分かりました。な、なら後で一緒に来て欲しいんです!」
「一緒に?」
「はい。ヨツバソウはここでリードさんに使って、効き目を確かめましょう。それで効果が出るのは時間がかかると思いますから、そこで待っている間にもう一つ探して来ます!」
「ああ!じゃあ行こう、早速シュリに渡さないとね!」
リードさんに効き目があれば、マスターさんの息子さんも安心して使える。その為に……もう一つ!後で探さなきゃ!
「ラーチャオ、お前はどうする?」
「任せろし!先に行ってるからな!」
「わ、私も一緒に行きます!」
「びー!びー!」
「そうか……ありがとう。」
「ちょ照れるって!そっちも早くしろよ!」
ラーチャオさん達は先に深緑の神殿に走って行く。ここで見つかれば一番良い。でも……まずはシュリちゃんだ!
「君はここで待っていてくれ。私が最初に入るから。」
「はい!」
「シュリ、入るぞ!」
「あっ……カズハ。どうしたの慌てて?」
カズハさんが入ったのは豪華な部屋。ここにリードさんが寝かされている。彼の体に手をかざしながら、シュリちゃんは魔法を使っていた。
「リードの調子はどうだ?」
「だ、駄目。全然起きないんだよ……。私リードさんがふざけてると思って、さっき思いっ切り叩いたの。でも、起きないの……。ハッハッハ、冗談ですぞー!……って今にも言い出しそうな顔色なのに。」
リードさんの見た目は落ち着いている。僕からすれば普通に寝ているようにしか見えない。でも何をしても起きないなんて……。
「そうか……シュリ、君に渡したい物があるんだ。手を貸してくれないかい?」
「な、何?」
シュリちゃんが手を出すと、そこにカズハさんがヨツバソウをそっと置いた。
「これって……ヨツバソウ!?」
「ああ。彼に使ってくれないか?依頼主に持っていく前に、ここで効くかを試してみたいんだ。」
「だ、駄目だよ!これはその依頼主さんに使う物でしょ!私が使ったら、ヨツバソウ無くなっちゃうよ!?」
「大丈夫だよ。私達でまた探しに行くから。」
不思議そうな顔をするシュリちゃん。そろそろだ!
「私達?」
「ティム!来てくれ!」
「はい!おはようシュリちゃん!」
「ティム君!?起きたの!?怪我とかは大丈夫!?」
「うん!シュリちゃんのおかげでどこも痛くないよ!」
僕はガッツポーズで彼女に答える。でもシュリちゃん、やっぱり不安そう……。
「ね、ねぇ……本当に使っていいの?」
「ああ。また探せばいいさ、どうせ待つのに時間を使うんだ。あの神殿ならもう一つ位すぐに見つかるよ。」
「ティム君も?」
「うん。だから早くリードさんに使ってあげて!」
「……分かった。これ、使わせてもらうね!」
シュリちゃんがヨツバソウを手に取り、すぐに駆け出す。彼女の向かった先には、大きな鍋や薬が置いてある部屋だった。
「ここで薬を作るんだ!二人も手伝って!お願い!」
「任せろ、何をすれば良い?」
「カズハはお鍋に湯を沸かして!えーっと、これとこれと……うん!ティム君はここに書いてあるポーションを持ってきて!」
「はい!」
カズハさんは鍋にお湯を注ぎ、僕はメモにある薬品を持って行く。ポーションってこんなに種類があるんだ。間違えないように……。
「はい持ってきたよ!」
「ありがとう!確認するね……毒消し、解呪のポーション、魔力補給用のポーションに……。」
お店で買えるものから貴重な物まで、色々必要なんだね。これだけ揃えられてるのは、きっと女王様のおかげだ!
「うん!これで全部だよ!」
「シュリ、こっちも終わったぞ!」
「ありがとう!じゃあ始めるよ!」
シュリちゃんはお鍋にポーションを複数入れていく。最初は透明な水が入っていたけど、だんだん色が付いてきて……緑色の綺麗な液体になった!
「準備はこれでいいかな?後はヨツバソウを!」
ヨツバソウを細かく切り、それをお鍋に入れると液体が光り始めた!シュリちゃんは自分の魔力を手に集め、お鍋にかざす。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「わっ!?」
「眩しいな。ティム、気をつけろ!」
液体が更に光り出し、僕達は目を閉じる。こんなに輝くなんてびっくりだよ!
しばらくして輝きが無くなり、僕達はそっと目を開けた。完成したのかな……?
「お、終わった?」
「うん!出来た!出来たよ!」
お鍋の中にはトロッとした液体が入っていた。
……量減ってない?た、たったこれだけ……?
「シュリちゃん、これは……?」
「う、うん。煮ているうちに量が減っちゃってね。で、でも効果は完璧なはずだよ!だって私が作ったんだから!」
それから液体を冷やして、瓶に詰める。シュリちゃんの顔はきらきらと輝いていた。
「これがあれば……きっとリードさんも治せる!」
「シュリちゃん早く行こう!リードさんが待ってるよ!」
「きっと上手くいくさ!これはシュリが作ったんだからな!早く飲ませてやろう!」
僕達は道具を置いたまま急いでリードさんの居る部屋に!
「リードさん、これを飲んで下さい!」
シュリちゃんが口に薬を流し込む。効いてくれるといいけど……。
「さて、私達はしばらく待つか。ティム、ヨツバソウを探しに行こうか!」
「はい!じゃあ行ってきます!」
僕達は外に走る、ラーチャオさん達に合流しないと!
「う……うーん……。」
「「えっ?」」
リードさんの声!?嘘、もしかして!
「ティム、聞こえたかい?」
「は、はい!」
僕達が後ろを振り向くと……。
「ん……ああ。よく寝た気がするな。お、シュリ様!それとお客人達、どうしたのだそんな顔をして?」
ぱっちりと目を開けたリードさんが体を起こしているのが目に入ったんだ。
もしかして……もう治ったの!?




