少年テイマー、覚悟を決める!
どすん。どすーん。
「ぴゅー!ぴゅー!」
ぎーーーーっ。ぱたん。
「ぴゅー!……ぴゅー?」
「「「「「ギィィィィ!?」」」」」
どすん、どすん。
「ぴゅー。」
じーっ……。
「ぴゅー!ぴゅーぴゅーー!」
ぴょーん。ヒューーーーー。
「ぴゅーー!?」
◇◇◇
「ティム君!?何とかならない!?早くしないと!」
「シュリ様後ろに!壁ももう限界ですぞ!」
壁の向こうから二人の声が響く。すぐそこなのに何も出来ないの!?
「カズハさん、弓矢を使えば!」
「ブラックアローか……だが部屋が狭すぎる!二人とも粉々にしては意味が無いだろう!?」
「それでも!」
「ティムっち、悪いけど俺も同意見だし。索敵したけどあんな狭い部屋じゃ無理っしょ……。」
「そんな……。」
僕は短剣で壁を削るけど、これじゃ間に合わない!
レルが、レルが居てくれれば……!
「あ、あの!」
「サキさん!?どうしたんですか!?」
「わ、私がここを壊してみせます!魔力を調節すれば、壁だけ吹き飛ばす事が出来るかもしれません!」
「お、お願いします!」
さ、サキさんが名乗りを上げてくれたんだ!僕もサポートしないと!
「それなら僕も手伝います!一緒にやりましょう!」
「は、はい!……え?」
僕はサキさんの手を握り、一緒に手のひらを壁に向ける。二人でなら上手く魔法を使えるはずだ!
「サキさん、僕の魔力を使って下さい!」
「ティム様……はい!ありがとうございます!」
二人で息を吸い、呼吸を整える。タイミングは……ここだ!
「「ファイアブラスト!」」
炎の弾丸が壁に命中、その部分が焦げてへこんでいく。ここだ!ここに集中して……
「ティム様、お願いします!」
「はい!僕達なら絶対に出来ます!」
火力を調節し、二人で壁を削り続ける。このまま、このまま進めば……
「あっ、また手が滑っ」
「貴様!いい加減にしろ!」
「ゴボッ!?」
後ろの冒険者が爆弾を取り出したタイミングで、カズハさんが殴り飛ばす。奴は壁に激突し、そのまま動かなくなった。
「今回は手加減したが……貴様ら、次に手を出してみろ!私がこの手で粉々にしてやる!」
「こ、この悪魔め!俺達は同じ冒険者だろ!?仲間じゃないのか!?」
「友達を閉じ込めるような奴が仲間?私は嫌だね、死んでもお断りだ!」
「こ、この……!」
「ティム、この馬鹿達は私が引き受ける!シュリを頼む!」
「はい!」
壁はだいぶ掘り進めた!もう少しだ!
「シュリちゃん!リードさん!もうすぐです!」
……声が聞こえない?嘘でしょ!?
「サキさん!」
「はい!これで……終わりです!」
ファイアブラストが遂に壁を突き破る。威力を調節したから、シュリちゃん達には壊した壁の粉がかかるだけ。
でも、シュリちゃんの目の前には、倒れたリードさんが居た。そして二人を見る、巨大な魔物が……。
「も、もう魔力が……で、でもリードさんは、私が守る!」
「うう……。」
「ピギャァァァァァァ!!???!」
二人に覆いかぶさるように、魔物は牙を向ける。
そんな事、絶対にやらせるもんかぁぁぁ!
「いっけぇぇぇー!」
僕は二人の前に滑り込み、びー君の短剣を魔物の口に突き立てる!
「ピギャァァァァァァァァァ!!!??!!?」
「シュリちゃん今のうちに逃げて!」
「ティム君!?で、でも!」
「早く!」
「ピギャァァァァァァ!!!!」
「邪魔だぁぁぁぁ!」
魔物の鉤爪が僕を狙う。それを足元へ潜って避け、今度は腹部を斬りつける!
「ピギャァァァァァァ!!!???」
そして後ろに下がった所へ、思いっ切り魔力を込めたキックを叩き込む!
「ぶっ飛べぇぇぇ!」
壁に叩きつけ、僕は魔物に短剣を何度も突き刺す。
ここで逃がしたら駄目だ!絶対に倒すんだ!
「ティ、ティム……。」
「皆お願い!攻撃してー!」
ちょうどシュリちゃん達が外に出た!今がチャンスだ!
「……ああ!行くぞ!ブラック……アロー!」
「えいっ!」
僕は地面を蹴ってすぐに部屋を出る。入れ替わりに入ったのは、カズハさんの黒い矢だ!
「ピギャ……ピギャァァァァァァァァァ!???!」
矢が奴の体を貫きバラバラに。でも、すぐに破片が動き出し、再生を始めた!
「ティム、よく頑張ったな!」
「こっからは俺達に任せろし!」
カズハさんとラーチャオさんが僕の前に立つ。凄く、頼もしいなぁ……。
「み、皆!お願いします!ここであの魔物を倒すんです!力を貸して下さい!」
シュリちゃん……
「おう!彼らが頑張ってるんだ、俺達だって負けられないぞ!行くぞ皆ー!」
「「「「「おおおおーー!」」」」」
僕なら出来る……僕達なら出来る!
「必ずお前を倒してやる!ここからが本番だ!」




