大浴場でゲン担ぎ、訪れる判断の時
「ティムっちー。これ持ってー。」
「はーい。サキさんはこっちをお願いします。」
「お、お任せ下さい!」
女王様にダンジョンの許可をお願いしてから数日。今は僕とラーチャオさん、サキさんの三人でお買い物中なんだ!
「そろそろ結果が出てもいいんじゃねーの?時間ってこんなにかかるものかな?」
「でも、そろそろだと思います。このチラシを見て下さい。」
僕はお店でもらった張り紙をラーチャオさんに手渡す。
「これって店に貼ってあった奴?えーっと……[深緑の神殿]、部隊派遣?」
「はい、ここが僕達の入りたいダンジョンみたいです。さっき教えてもらいました。近々遠征の予定があるとかで、準備をしてるみたいです。もしかしたら、僕達にも声がかかるかも!」
「おお!楽しみだし!俺達特訓も続けてるから、少しは強くなったんじゃね?」
「早く結果が出るといいですね。そうしたら私、頑張ります!」
「サキっちならメチャ強いから問題無しっしょ。頑張るのは俺だな!タンクの仕事はきちんとしとくからな!」
話しながら僕達はシュリちゃんのお城に帰る。今日のご飯は何かな?おいしく食べるために、少しだけ体を動かしておこう!
「ただいま戻りましたー!」
「おかえりティム君!今日のお買い物は?」
「はい!新鮮な果物が売ってたので買ってきました!後はお肉と、パンと、色々です!」
「ありがとう、お疲れ様です!ラーチャオもサキちゃんもありがとう!」
荷物を降ろして準備完了。もう一度訓練場に出発だ!
「ふう。シュリ、ただいま。今日は忙しかったよ。」
「カズハ!おかえり!そっちはどうだった?」
「ああ。今日も警備隊に混じって依頼をやって来た。やはり鍛えるなら実戦が一番だ。」
あっ、帰って来た!カズハさんはお金と素材稼ぎも兼ねて、見回りや魔物の討伐依頼を受けてるんだ。今日のお仕事も終わり、これで皆揃ったね!
「びー。びー。」
「ぴゅー!ぴゅー!」
……びー君とレイクドラゴン君は二人で水浴び中。のんびりと羽を伸ばしてる……。
「ティム君?」
「あっ、うん!びー君達に目が向いてたんだ。何だか気持ち良さそう!」
「だねー。……そうだ!なら今日は皆で入ろう!」
「入る?どこに?」
「お風呂。」
「そうだね。皆順番で入ってたもんね。……お風呂?」
「そっ!」
お風呂……皆で入ると確かに気持ち良さそう!それもいいかな。
「良いんじゃないか?だがシュリ、そんな広い浴場があるのかい?」
「うん!お城の裏に温泉があるの!今日はそこでどう?」
「分かった、ではまた夕方。私は素材を整理しておきたいからね。」
カズハさんは自分の部屋に入る。僕も特訓頑張ってるし、ここでがっつりと汗を流そう。でも、まだ時間がある。なら!
「ラーチャオさん。僕達もう一回特訓しましょう!」
「お、俺はちょっと休むわ。」
「ティム様、ここは私が!」
「本当ですか!お願いします!」
僕はもうちょっと特訓だ。たくさん動いて、お風呂に備えよう!
そして夕方。太陽もだいぶ落ちてきた。ついに、ついに……!
「というわけで、ここが大浴場でーす!」
「おー!」
「いい景色だ。それに温度も丁度いい。これは楽しみだな。」
大浴場に到着!お城の裏にこんな所があったんだね。外は景色が見えるようになっていて、端っこには巨大な木が立っている。緑色の風景……リラックスできそうだ!
「じゃあ服脱ごうか!皆着替えるよー!」
「おう!で、俺達の風呂は?」
「何言ってるのラーチャオ?ここは混浴だよ?」
「………混浴?マジで?」
「うん。終わったら集まってね!」
「では行こうか。」
「わ、私も行きますよー!」
シュリちゃん、カズハさん、サキさん。三人は近くの小屋に入り、服を脱ぐんだ。僕も早くしよう。
「ラーチャオさん!僕達はこっちですよ!」
「お、おう!任せろし!」
それから数分後。僕達は服をしまって、大浴場に戻って来た。
「僕達の方が早かったですね。……ラーチャオさん?」
「そ、そうだな!落ち着け落ち着け……。」
「皆おまたせー!」
あっ、来た!
「やあ!久しぶりだな。」
「よ、よろしくお願いします……。」
カズハさんとサキさんがタオルを巻いて登場!二人ともスタイルいいなー。僕も将来はこんな大人になるんだ!
「じゃあシャワーを浴びないとね!こっちこっち!」
シュリちゃんの後に続き、まずは木の側に。彼女が杖を振ると、植物の茎が現れ、お湯が流れ出す。
「まずは体を清めましょう!空気がきれいだから、お湯もきれいになってるよ!」
「やったー!」
僕はシャワーを浴びながら頭を洗う。皆も体を洗ってるね。
「ティム様……かわいい……。」
「確かに……とても可愛らしいな。」
二人の視線を感じるけど、とりあえず洗っちゃおう。
「うおーー!洗え洗えー!」
ラーチャオさん……さっきから様子が変だ。後で聞いてみよう。
そして体を洗った僕達は、お湯に入る。熱くないかな?あっ、これは……
「あったかーい!」
「そうでしょそうでしょ!ここは私自慢の大浴場なんだよ!」
「気持ちいいな。しかしシュリ、いつもの風呂と違うという事は……何かあるな?」
「えっ!?やっぱりそう思う?……うん。そ、それはね、明日は大事な用事があるからなんだ。ゲン担ぎみたいな物なの。」
大事な用事?それって!
「女王様のお城で報告があったの。皆のダンジョン突入の許可、明日判断が出るんだ。」
「そうなの!?」
「うん。だからここで運を良くしようと、特別に用意したんだ。びっくりしちゃったかな?」
「いや、ありがとう。シュリのおかげで良い結果が出る気がするよ!」
「私もです!シュリ様、ありがとうございます!」
「喜んでもらえてよかった!今日はのんびり楽しんでね!えいっ!」
シュリちゃんは立ち上がり、くるくる回りながらお湯をバシャバシャとこっちに!
「わっ!?シュリちゃん!」
「どうだ!ここのお湯は気持ちいいでしょう!ティムくぺぷっ!?」
「お返しだよ!負けないぞ!」
「やったなー!えいっ!」
僕はシュリちゃんと勝負だ!ここで勝って明日も許可をもらうんだ!
「アイツは……少しからかってやろうかな?サキ、君もどうだ?」
「えっ?私もですか?……は、はい!やってみます!」
「よし。じゃあこんな感じに……。」
あっ。カズハさんが立ってラーチャオさんのすぐ横に!
「やっべぇ……俺どうしよう?」
「ラーチャオ、どうしたんだ?」
「あ?……ってカズハっち!?何してんの!?」
「ラーチャオさん……。」
「サキっちまで!?」
サキさんは反対からラーチャオさんに近づく。あれは……。
「ほら、喜んだらどうだ?お前の言うハーレムとはこういう物だろう?」
「ラーチャオさん、私……。」
「何!?俺何かした!?」
「ほら、私を良く見ろ。お前の望む者がぶっ!?」
あっ……カズハさんが蹴られた。
「無理無理無理無理!?俺こういうのはちゃんとしてんのよ!?そういうのは段階踏んでやって欲しいし!?」
「貴様……やってくれたな!」
「勝手に来たのそっちだし!?もう怒ったっしょ!」
「お、お二人とも落ち着いてください!」
二人はお風呂の中で取っ組み合いを始めちゃった!?
僕達も止めないと!
「い、行こうシュリちゃん!」
「う、うん!こんなはずじゃ無かったんだけどな……。」
僕達は慌てて二人を止めて、今度は仲良くお湯の中に。……でも、楽しいなあ。サキさんもだいぶ打ち解けてきてるし、皆も楽しそう。
勇者パーティーに居た時は、一度も経験した事が無かった事……。それが今出来てるんだ。このメンバーでここに来れてよかった!
「皆さん、ありがとうございます!」
「えっ?ティムっち、何か固いっしょ!リラックスリラックス!」
「ああ。ほら、こっちに!」
「ティム様!一緒に!」
「ティム君!」
「はい!」
「びー!」
「ぴゅー!」
びー君達もやって来た、今日は皆でたくさん遊ぼう!
そんな事があった次の日。僕達は再び女王様のお城にいる。シュリちゃんはやっぱりお仕事。僕達は謁見の間に膝をついて待機している。
「来たね皆!どう?楽しんでるかな?」
来た……ジュリア様だ!
「ご連絡頂きありがとうございます。シュリさんからこちらに来るよう教えて頂きました。」
「ええ!貴方達の頼み事、結果が出たわよ!」
「来たし……!」
「それで、結果は?」
ジュリア様は大きく息を吸ってから、こっちをじっと見た。いよいよだ……!
「では、発表します。貴方達のダンジョンに入る許可、これは……。」
僕達は膝をついたまま、ジュリア様の次の言葉を待っていた。




