謁見 地竜の国の女王様
僕達は門をくぐり、シュリちゃんの案内通りに進む。通路には木々が植えられ太陽の光が射し込んでいる。
「おお!来たなお客人!」
「リザードマンさん!」
門を守っていたリザードマンさんが奥で待っていた。その周りには他のリザードマンさん達も!きっともうすぐなんだ……。
「ここを真っすぐ進めば謁見の間に着く。くれぐれも失礼の無いようにな!私は城の警備をしてるから、何かあったら呼んでくれ!では!」
リザードマンさんはそう言ってから、通路に入って行った。
「わ、分かってるし!俺ならこれくらいへっちゃらっしょ!」
「声が震えてるぞ。少し落ち着くんだ。」
「まあまあ!皆ならきっと大丈夫だよ!」
シュリちゃんの後ろから更に進むと……見えた。ここが謁見の間だ。
「ここまで来ればもう平気だね!じゃあ皆、頑張って!」
「えっ!?シュリちゃんは!?」
「わ、私はお仕事があるから。ちょうど面会しないといけない人達がいるの。だから、ここで一旦お別れ!」
シュリちゃん、忙しいのにここまで付き合ってくれたんだ。感謝しないと!
「そうか……だが、案内してくれて助かったよ。おかげでスムーズにここまで来れた。私達だけならこれで数日かかっていただろう。」
「ホントホント!シュリっち、ありがとうな!後はお、俺達に任せろし!」
シュリちゃんはこっちを向いて、手を振ってくれた。
「うん!皆ならきっと大丈夫だね。それと……終わったら外で待ってて!私の仕事はそこまで時間はかからないと思うから、一緒に帰ろうよ!」
「分かった!ありがとうシュリちゃん!」
「じゃあ、また後で!」
「またな!」
それから僕達と違う通路に入って行くシュリちゃんをしばらく見て、僕達は門の前に立つ。
「ティム様、行きましょう!」
「びー!びー!」
「俺達も一緒だし!」
「ああ。私もいるよ!行こう!」
皆が居てくれるんだ。絶対に大丈夫!僕達は同じ所に手を当てて、一緒に門を押した。
「し、失礼します……。」
僕達が謁見の間に入ると……そこには高い段差、その上にある豪華な装飾の施された椅子と、それを囲む人達が目に入った。この人達は国の偉い人かな……?
「ようこそ謁見の間へ!女王様がいらっしゃいます。しばらくお待ち下さい!」
「は、ひゃい!」
「ティム、君も落ち着いて。」
「は、はい!」
周りの人達に促され、僕達は少しだけここで待つ。すると大声が響いて来た!
「女王様がいらっしゃったぞ!皆、頭を下げろ!」
「あ、あわわ……。」
「来たな!サキっち頭を下げて!ここは俺達の真似してくれれば平気っしょ!」
「は、はい!」
僕達は地面に膝をつき、頭を下げる。それと同時に歩く音が聞こえてきた!コツコツと歩く音が聞こえてから……その人は椅子に腰掛けたみたいだ。
「そこの者達、頭を上げなさい。」
「「「「はい!」」」」
僕達が一斉に頭を上げると、目の前に居たのは長身の女性だった。緑色の髪を揺らし、堂々としている人だ。耳には竜のアクセサリーを付けていて、近寄りがたい雰囲気が伝わってくる!
「まず、貴方達の名前とスキルを教えてもらえないかしら?」
「はい!僕はティム、テイマーをやっています。」
「私はカズハ、スキルは狩人です。」
「お、俺はラーチャオです。タンクをやっております。」
「わ、私はサキと言います!私、サキュバスなんです!」
女王様はにっこりと笑い、改めてこちらを見た。
「そんなに緊張しないで!リラックスリラックス!さて、次は私の名前ね。」
女王様は椅子に腰掛けたまま、両腕を前に出しガッツポーズ。上品な印象と共に、楽しそうな雰囲気も出ているなあ。
「私の名前はジュリア。地竜の国、アースラの女王を務めています。今はこうやって座ってるけど、昔は結構色んな所を冒険してたのよ?」
「そ、そうなんですか……。」
「さて、本題を伺いましょう。貴方達は今回、何の用事でこちらに来たのかしら?」
「はい!僕達は」
「ティム、ここは私に任せてくれ。」
「カズハさん?」
カズハさんは僕達より一歩前に出て、改めて膝をつく。ここはお願いしよう!
「私達は今回、依頼を受けてこちらに来ました。目的は、こちらのダンジョンで採集出来るヨツバソウです。
依頼者のご子息の病気を治すために必要な物です。こちらを採集する為、ダンジョンへの通行許可……これをお願いしたいと思います。」
「なるほど、お金儲けの為では無さそうね。では……。」
「何か必要な事がありますか?」
「そうねぇ。じゃあ、許可を出す為に貴方達の事、ちょっと調べさせてもらうわね。何かこう……実績を示せる物って無いかな?」
僕達の身元を知っておきたいんだ。これはチャンスだ!僕達が悪い人じゃ無いって証明すれば、すぐに許可をもらえるはず!
「冒険者証ならこちらに。」
「ならそれを見せて!こっちで確認できれば許可を出せるわ!ちょっと預かっていい?」
「ええ。皆もいいな。」
「はい!ちゃんと管理してくれるなら。」
「俺のも出すし!」
「ありがとう!では、こちらでしっかりと保管させてもらうね!他は何か無い?」
他に出せるもの……他に出せるもの……。
「ティムっち、あれあれ!配信あるっしょ!」
「あ……はい!あの!僕配信者をやってるんです。それを見てもらえれば、実績になると思います!そこでこの国の魔法使いさんと一緒に冒険したんです!」
「本当!?貴方配信者さんなのね!それにこの国の魔法使い……気になるわ!じゃあティム君、その配信ちょっと見せて!」
「はい!」
「ではこちらに!お持ちします!」
僕は魔導カメラをお付きの人に渡すと、それを持ってジュリア様の所に。カメラを冒険者証と同じ所に置いて、それからまたこっちを見た。
「協力ありがとう!ダンジョンの許可はこちらで判断するけど、それはそれ。貴方達はお客さんよね。しばらくはここでのんびり過ごしてね!誰か案内役をつけるかなぁ……。」
「それならこちらから希望があります。」
「カズハ?希望ってもしかして、その……魔法使いさん?」
「はい。」
「分かったわ。名前を教えてちょうだい。」
「名前はシュリさんです。彼女にお願いしたい。」
あっ。シュリちゃんの名前を聞いた瞬間……ジュリア様がとても嬉しそうな顔をしてる!目を閉じてガッツポーズまで……信頼してるんだ。やっぱりシュリちゃんは凄い!
「それならこちらで手配しましょう。それでは、判断はまた後程。ようこそアースラへ!楽しんでいってね!では私はこれで……。」
「あ、あの!」
「ごめんなさい!ちょっと待ち合わせが入ってるの!また後日、その時に!」
行っちゃった……忙しそうな人だったなあ。それに途中から雰囲気が変わって、一気に親しみやすい感じに変わった。信用してもらえたならいいなあ。
「皆様お疲れ様でした!これからどうお過ごしに?」
「は、はい!僕達、ちょっと待ち合わせをしていまして……。」
「かしこまりました。結果は後で出ますので、その時はまたお越し下さい!」
「ありがとうございます!」
お付きの人達も奥に入って行った。ここでひとまず終わり、かな?
「さて……外に出ようか。上手くいくといいが。」
「き、きっと大丈夫っしょ!」
「わ、私緊張でずっと震えてました……。」
「びー!びー!」
「サキさんお疲れ様です!びー君もお疲れ様!びっくりしなかった?」
「びー!」
とりあえずこれで一段落!外に出てシュリちゃんと合流しよう!
シュリちゃんお仕事終わったかな?早く会いたいな!




