食事と今後の方針について/ともだちができた日
「これでよし!ごめんね、今はこれ位しか出来ないけど……。」
「だ、大丈夫です!だいぶ楽になりました!」
僕はシュリちゃんの手当てを受け、今は馬車の荷台に腰掛けている。ここまでカズハさんが運んでくれたんだ。
「ティムっち平気!?足痛そうだし!」
「はい、シュリちゃんのおかげで落ち着いてます。」
足には添え木を着け、包帯が巻かれている。目的地に着いたらちゃんと診てもらおう。
「もう少ししたら行くから!ちょっと休んで、な!」
「ありがとうございます。」
ラーチャオさんが馬車から離れ、皆の所に行くと、馬車の奥からゴトゴトと音が聞こえた。
「だ、誰!?」
「がおー。」
……シュリちゃんと一緒に居たドラゴンの赤ちゃんだ。口には食べ物……そっか、襲撃の時、ラーチャオさんがご飯出しっぱなしだったんだ!
「がおー!」
「えっ、これくれるの?」
赤ちゃんは手にチーズの欠片を持って、パタパタ飛んで来た。心配してくれてるんだ。
「ありがとう!いただきます!」
僕はチーズを頬張り、赤ちゃんを抱きながら皆の方に目を向けた。
「もう少し待っててね!皆来るから!」
「がおー!」
◇◇◇
「やった……やった!私にも、出来たんだ!」
「サキっち、メチャ強いじゃん!これは頼もしいっしょ!」
「ああ、助かったよ。しかし君は……そうか。」
サキさん大喜び!でも、カズハさんは少し戸惑った表情だ……。
「君はサキュバスだったんだな。てっきり人間の助手なのかと思ったよ。」
「あっ……は、はい。隠してて、申し訳ありません……。」
「す、すまない!気にしないでくれ!別に責めてるわけじゃないんだ。ただ驚いてしまったんだよ。」
「私……やっぱり変ですよね。」
「えっ?」
サキさんの今の格好……背中の服が破れ、黒い羽二本が大きく開いている。……きれいな人だなぁ。控えめに言ってもすごくかわいい女性だよね。
「私、見た目は人間なのに、本当は魔物なんです。だから、それを隠しておきたかったんです。もし魔物って分かれば、私を嫌いになりますよね……。」
「そんな事無い!」
サキさん、そんな風に思ってたんだ……。一緒に居たのに、気付けなかったよ……。
「魔物だろうが人間だろうが関係無い!私達は種族じゃない、君を……サキを見てるんだよ!」
「そうだし!サキっちはメチャかわいくて落ち着いてて、メチャかわいいし!どの種族かなんて関係無いっしょ!」
「ほ、本当ですか……?私……」
心配そうに下を見るサキさん。そこにシュリちゃんもやって来た。
「サキちゃん向こうを見てよ!サキちゃんにはティム君もいるし、今は私達もいるよ!」
「わ、私は……。」
サキさんがこっちを向いた。そうだ、サキさんは……
「サキさーん!」
「ティム様……。」
「サキさん!僕達はサキさんの味方ですよ!だから、そんな心配はしなくても平気です!一緒に少しづつ、進んでいきましょー!」
「ティム様、皆様……あ、ありがとうございます。ありがとうございます……!」
大声で伝えると、サキさんはすごく、すごく嬉しそうな笑顔になった!昔の事が足を引っ張るかもしれない。でも今は僕達が居るんだ!ちょっとずつでも前を向けるように、何か出来ればいいなぁ。
「さ、馬車に戻ろう。すっかりお腹がすいてしまったよ!」
「メシだメシ!俺腹ペコだし!早く食おうぜ!」
「行こうサキちゃん!ティム君も待ってるよ!」
「は、はい!」
皆こっちに戻って来る!僕もご飯を食べないと、たくさん食べて力をつけなきゃ!
それから僕達は、ご飯を食べて休憩中。マスターさんの件もあるけど、まずは一休みだ!
「いやー疲れたっしょ!これでシュリっちの仕事は終わったんだな!」
「ラーチャオ、守ってくれてありがとう!こんな見た目でも頼りになるんだね!」
「お、おう……。」
「ラーチャオ、私からも礼を言わせてくれ。今回は助かった、ありがとう。」
「いや……う、嬉しくねえし!こんなの当たり前だし!」
ラーチャオさんは顔を赤くして喜んでる。タンクは大きな盾に鎧っていうイメージだったけど、こういう人も居るんだ。参考に……なるかな?
「カズハっちもシュリっちも、ティムっちもびー君も……皆、俺と同じくらい凄いっしょ!」
「それはそうさ!私達は一人前の冒険者なんだからな!」
「そうだ!さっき話が止まっちゃったけど……皆は一人前の冒険者なんだよね?ここの辺りに居たのは、もしかして依頼を受けてたの?」
シュリちゃんの質問。これが僕達の本題なんだ、ちゃんと伝えておこう!
「うん!僕達は依頼を受けて、アースラに向かう所だったんだよ!」
「アースラに?どうして?」
「私達の依頼者がある薬草を探しているんだ。ヨツバソウと言う植物、君は知っているよね。」
「ヨツバソウ?うん、私達の国にあるけど……結構珍しい植物だよね。私達でも中々お目にかかれないレア物だよ!」
それはそうだよね。簡単に手に入るなら、ここから買えば解決するんだから。
「ああ。そのヨツバソウが生えているダンジョン、そこに行くために向かっていたんだ。」
「そっか……もしかして、私に頼みたい事って!」
「ああ。私達の交渉に、協力してくれないだろうか?」
「なるほど、ダンジョンに入るなら許可が欲しいもんね。普通は結構時間がかかるんだけど……むう。」
シュリちゃんはパンを頬張り、もぐもぐ口を動かしていた。
「どうだろう、頼めないかな?」
「いいよ!私でよければ!私、こう見えても少しは偉い魔法使いなんだよ?だから……一緒についていってあげよう!」
「いよっ、頼りになるねぇ!」
胸を張るシュリちゃんに、手を叩くラーチャオさん。これで目的地への道筋が立った!なら今は……
「では皆さん!話も落ち着きましたし、ここからは……本格的にご飯だー!」
「おう!」
「ああ、頂こう!」
「うん!サキちゃんもたくさん食べよう!はい!」
「あ、ありがとうございます!」
ご飯だご飯だ!おなかがペコペコだよー!
「びー!びー!」
「ぴゅーー?」
「うわっ!?びっくりしたし!?」
びー君とレイクドラゴンが、馬車に顔を突っ込んできた!?そうだよね、おなかすいてるよね!
「びー君、はいご飯!レイクドラゴンくん……ちゃん?君も一緒にどうかな?」
「がおー!がおー!」
ドラゴンの赤ちゃんがチーズの欠片を見せて、レイクドラゴンに押しつけていた。同じドラゴンだからかな、一緒に食べたいんだね!
「ぴゅー!ぴゅー!」
「うん!はいどうぞ!」
僕達は馬車の中で、のんびりしながら食事を楽しむ事にしたよ!皆で食べるとおいしいなー!




