サキュバスの炎弾、異形との決着
「サキさん!」
「だ、大丈夫です!私、頑張りますから!」
サキさんの魔法が直撃し、ふらふらとよろめく魔物。だいぶ弱ってきてるけど、今の僕達じゃ……ここはサキさんに任せるしかない!
「サキさん、行けそうですか?」
「はい!行けます!私なら出来る、私なら出来る!」
馬車からこちらに走るサキさん。僕とラーチャオさんの前に立ち、魔物を睨みつけた。
「い、今のうちに後ろへ!」
「分かったし!サキっちも無理すんなよ!」
ラーチャオさんが僕を背負って馬車に歩く。サキさん、お願いします!
「逃げてこれた……カズハっちまだか!?」
「今魔力を矢に込めてる。まだ時間が必要だ!」
「もー!ティムっちここに置いてくから!俺はまだやれるし!」
ラーチャオさんは馬車の横に僕を降ろして走り出した。サキさん、ラーチャオさん……。
「カズハさん、ごめんなさい……僕のせいで負担をかけてしまって……。」
「そんな事無いさ。君がいなければまともに戦う事も出来なかっただろう。それに君が先頭に立ってくれたから、私もシュリも準備出来たんだ。だろう、シュリ。」
「そうだよ!皆で頑張ってるんだから、自分が悪いなんて思っちゃ駄目だよ!」
「だが……確かに今の君に出来る事は無いかな。怪我もしてるからね。……だから」
カズハさんは矢の調整をしながら、僕に提案をしてくれた。
「今はじっとしていて。私達が勝つ事を信じて待って欲しい。それも仕事のうちさ。」
「わ、分かりました……。」
今出来る事……ここで待つ事だ。でも、ここから見える景色もある。今は、皆の動きをしっかり見ておかないと……。
「こ、ここは通しません!ここで倒してみせます!」
「ピギャァァァ……ピギャァァァァァァ!!!?」
「やらせねえし!」
サキさん目がけて、転がりながら突進する魔物。そこに割り込むラーチャオさんによって、奴は弾かれた!
「ぴゅー!」
その魔物の後ろから、レイクドラゴンのブレスが飛んで来た!体が変形した魔物は動けない、ブレスが直撃し、手足を吹き飛ばす!
「ピギャァァァァァァァァァ!!!!」
再生を始めるけど、体がもぞもぞと動くだけだ。……毒が完全に回ったんだ!今なら!
「サキさん今です!」
「はい!……ファイアブラスト!」
サキさんの手から炎の弾が現れ、それを魔物に叩きつける!
「ピギャァァァァァァァァァ…!?!?!!……ピギャ。」
動きが止まった。これで、本当に終わりなのかな……。ううん、そんな訳無い、さっきも騙されたんだ。ちゃんと見てやる!
「ピギャァァァァァァァァァ!!!!??!」
「オイオイまだ続くのかよ!?こっちももう限界だし!?」
太い足が四本、魔物から生えてきた。そしてラーチャオさん達に背を向ける。ま、まさか……。
「サキさん、ラーチャオさん、魔物が逃げ出します!」
「ピギャァァァァァァ!!!????ピギャァァァァァァ!。????」
に、逃げた!勝てないと思ったんだ、動かなかったのは動けないからじゃない、力を溜めていたんだ!
「どうする!?俺じゃ追えないっしょ!」
「私が行きます!はぁぁぁ………!」
サキさんが魔力を込めると……服の背中がビリっと破れ、黒い翼が二つ、ぱっと開いた。
「さ、サキっち!?」
「逃がすもんか!私が倒してやる!」
勢い良く飛び出したサキさん。……速い、すぐ魔物に追いついた!
「ファイアブラスト!」
地面にそっと浮きながら、炎の弾を撃ち込むサキさん!それが魔物に当たり、地面を転がっていく。
「ピギャァァァ!????ピギャ!!?。???」
「キャッ!?」
もう余裕が無いんだ、闇雲に暴れ出した!その爪がサキさんに引っ掛かる!
「うわっ!?」
サキさん!?魔物に押し倒されて、腕を押さえられてる!
「ピギャァァァァァァ!???!!」
「わ、私なら出来る!私なら出来る!」
「ピギャァァァ!ピギャァァァ!!!!」
サキさんは手に魔力を溜めるけど、それを見られたのか踏みつけられた!
「痛……痛くない、痛くない!ティム様達の痛みに比べれば!ファイアブラスト!」
踏まれたままの手から炎が噴き出す!それが直撃した魔物が、火だるまになって吹き飛んだ。
「そこだっ!ブラックアロー!」
そこにカズハさんが攻撃を加える!魔物の体が弾け飛んで、バランスを崩した!
「ピギャァァァ!!!????!」
「びー!びー!」
び、びー君!?……そうか、チャンスを待ってたんだね!
「びー!びー!びーーー!!」
毒針が紫色に輝き、大きくなった!?あれは……
「びー!」
「ピギャァァァァァァ!!。???」
びー君が毒針を魔物の体に突き刺すと、バチバチと火花を起こしながら魔物が倒れ込む。……やった!今度こそやったんだ!
「ピギャ……ピギャァァァァァァ…………。」
魔物の体は黒い霧になって空に飛んでいく。そして残ったのは……黒い玉が一つだけ。
それからすぐ、黒い霧が晴れてきた。上を見ると、青い空が広がっている。
「か、勝った……?勝ったの?」
「……ああ!やったぞシュリ!私達の勝ちだ!」
「ほ、本当に!?やった、やったー!」
シュリちゃんとカズハさんは二人でハイタッチをしてる。よかった、僕達はちゃんと出来たんだ!
「ティム君、勝ったよ!」
「うん!やったねシュリちゃん!い、痛たた……。」
「ま、待ってて!今治療するから!」
「お、お願いします。」
ほっとしたら急に痛みが押し寄せて来た……い、今はじっとしてよう。
「や、やった……。」
「びー!びー!」
「サキっちナイス!大手柄だし!」
サキさんの側にはびー君とラーチャオさん。それと……
「ぴゅー!ぴゅー!」
レイクドラゴンが三人の側で寝そべって転がり始めた。もう安全だって、ドラゴンも判断したんだ。
「よ、よかったー!やったぞー!」
ひとまずこれで、解決したんだ!それじゃあ、今は一休みだ。これからの事は、後で考えよう!




