異形の魔物、再び!
「来てるし来てるし!もうすぐだし!」
「分かっている!あまり声を出すな!」
「霧が晴れてきた、あれです!」
こちらに来るのは、巨大な生き物。……息抜きをしてたのか、湖からひょっこりと顔を出したその生き物は……つぶらな瞳の魔物だった。
「あ、あのー。」
「ぴゅー?」
「僕達、ここでお仕事してるの!ちょっとだけ静かにしててね!」
「ぴゅー!」
あっ、僕の声に反応して出てきた。お、大きい。その魔物は湖から足を出して、ドスンと音を出しながら陸に上がった。大きい翼に水色の体色。これは恐らく……。
「ぴゅー。」
「な、何だこの魔物は?私は見た事が無いな。」
「俺は知ってるし!レイクドラゴンって奴だろ?」
「レイク……ドラゴン?……ドラゴン!?」
レイクドラゴンは水辺に住んでいる、珍しい魔物。街や国を滅ぼす程の強さを持つと言われるドラゴン……その中では下の方のドラゴンだ。
「落ち着いて下さい!こっちが何もしなければ無害ですから!」
「しかし、ドラゴンだぞ!?あのドラゴンだ!本当に大丈夫なのか!?」
「カズハっち落ち着けし!騒いだら気に障るかもしれないでしょーが!」
レイクドラゴンは確かに「ドラゴンの中では」下の方。でも、魔物全体から見れば凄まじい強さを持ってるんだ。実際、魔物が暴れ出すこの黒い霧の中で、影響を全く受けずに遊んでたんだから……。
「皆さん、ここは静かに!僕達は何もしないよ!だから、少しだけここに居させて!お願い!」
「ぴゅー?ぴゅ!」
分かってくれたのかな、レイクドラゴンは陸地に寝そべって、ごろごろと転がっていた。
「もう少し、もう少し……。ティム君、ラーチャオ!そっちは大丈夫?」
「平気平気!ちょっとドラゴンが居ただけだし!」
「そうなの?なら問題無しだね!こっちももう終わるよ!」
「問題無し!?そ、そうだ。君は龍の国に住んでるんだ、ドラゴンには慣れているんだよね。」
シュリちゃんのお仕事ももうすぐ終わりだ!そうしたら、報告の為にアースラに帰るはず。一緒について行っていいか、お願いしてみよう!
「うん!せーのっ!」
「眩しっ!?目を塞いで!」
「うわっ!?」
ラーチャオさんが手で僕の目を塞ぐ。急に真っ暗になったからびっくりした!
「ハァァァァ!ホーリーブレイク!」
杖の先がピカッと輝き、白いビームが出てきた!?それが黒い玉に当たって……ヒビが入った!
「負けないぞ!うりゃぁぁぁ!」
ピシッと音を立て、黒い玉が割れていく!……たぶん。目を閉じていても、このビームの強さは分かるよ!僕は音で判断してるけど、きっと上手くいってる!
「みんなー!終わったよ!」
「本当?よかったー!シュリちゃんお疲れ様!」
「シュリっち、お疲れっしょ!でも、俺も褒めてほしいし!頑張ったんだぜ?」
「ありがとラーチャオ!よーしよーし。」
「何をしてるんだお前は……。」
シュリちゃんの報告を聞いて一安心!彼女の前には粉々になった玉の破片が散らばっている。空を見ると、黒い霧が……
晴れてない。薄くは……なってない?周りを見るけど……どこも変化ない!?
「霧は残ったままか。これが発生源だったのではないか?」
「うん。そのはずだよ!私が完璧に対処したんだから!」
「なら、もうすぐ晴れてくるさ。配信はちゃんと出来ているな。」
「はい!ちゃんと映せてますよ!」
しばらくすれば晴れるんだよね。なら、今の僕達に出来る事は無いかな。
「なら、ちょっと休憩して出発するし!俺達の本題はこれからだ!」
「本題?そう言えば、皆は何であの道に居たの?結構険しい道だったと思うけど。」
「ああ。その事で君には頼みたい事があるんだ。よければ聞いてくれないかな?」
「頼み事?うん、いいよ!手伝ってもらったし、出来る事なら何でもやるよ!」
するとラーチャオさんが馬車から食べ物を持って来た!あれはマスターさんが用意してくれたご飯だ!
「んじゃ休みながら話ししようぜ!早く馬車へ行くし!」
「はい!びー君行くよー!」
「びー!び、…………びー?びー!びー!?」
びー君?羽をパタパタさせて、空中をぐるぐる周っている。……何か焦ってるんだ!
「皆止まれ!何か嫌な予感がする!」
「どしたのカズハっち?……いや、その通りだ!何かヤバいぞこれ!?」
皆も何か感じたんだ!僕達の目の向かう先、そこには砕けた玉の破片が散らばっている。そこから、煙が出てきた?
煙がくるくる渦を巻き、だんだん形になっていく。これは……
「あっ……あ、あれって!?」
「びー!?びー!びー!」
「どうした二人とも!あれが何か分かるのか!?」
「皆気を引き締めて下さい!これは今までの相手とは違う!」
「びー!」
異様な気配、これは以前にぶつかった事がある!これは、この感じは……!
「ピギャァァァあぁ!?、ぁ!」
あの時の……異形の魔物だ!




