冒険者一行、霧の中を進む
「そうだ!ティム君は配信者なんだよね!なら今の風景も撮っておいてよ!」
「今って、この状況を!?待って待って、それどころじゃないよ!」
「いや、それはアリかもしれないな。」
「カズハさん?」
敵を倒して進む中、シュリちゃんからの突然の提案。それにカズハさんは乗り気みたいだ。
「ティム、さっきシュリが言っていただろう。国中の魔法使いや冒険者達も調査に当たっているんだ。もしここで原因が分かれば……大きな情報になる。」
「そ、そうか!」
「それに。」
カズハさんは僕の側で耳打ちした。
「私達が彼女を助けた証拠にもなる。私達が向かっているのはアースラ、彼女の所属先だ。交渉するのなら、これはいいカードになる。」
「なるほど!僕達のクエストにも繋がります!」
僕はすぐに魔導カメラを用意し、プロペラで空に浮かべた。参考にもなるし、本命にも使える!カズハさんはすごいや!
「少し余裕が出来たな。今のうちに挨拶を済ませておこう、そうすればどこの配信かがすぐに分かる!」
「はーい!こほん。こんにちは!私はシュリって言います。私は今…………。」
カズハさんとシュリちゃんをカメラに映し、僕は周りを警戒する…………僕は配信者をやってるのに気づかなかった。こういう考え方も勉強になるなぁ。
「来たよシュリちゃん!壁を!」
「うん!ホーリーヴェール!」
「馬車の右から!今度は五体来てるし!」
「次から次へと……キリが無いな!」
「俺が外出て惹きつけようか?」
「お前は中に居ろ!索敵に集中してくれ!」
「びー!びー!」
「ありがとうびー君!そこだっ、えいっ!」
それから僕達は馬車を進めながら魔物と戦う。先に行けば行くほど魔物が増えている……この先に何かがあるんだ!
「今度は七体!?多すぎっしょ!?やっぱり俺出るわ!」
「おい、勝手に出るな!」
「さっさと止めたほうが消耗も少ないっしょ?一撃で決めれるようにしてちょーだい!……ウォークライ!」
ラーチャオさんが迫る魔物に向けて技を使うと、魔物は一斉に彼を狙う。攻撃を避けたりガードしている間に、僕は短剣、びー君は毒針、そしてカズハさんは矢を撃ち込む。
「ど、どうだ?これで終わったか?」
「ひとまずオッケーっしょ!疲れはあってもダメージは無いんじゃない?」
「ああ。ありがとう、助かったよ!」
「ま、俺がやれば当然だし?ここからも任せといてー!」
カズハさんのお礼を胸を張って受け取るラーチャオさん。彼は凄い人だ。でも、僕達だって負けてないよ!
「皆!たぶんあの先だよ!異様な気配があそこに集まってる!」
「ついに終わりが見えてきたな。行けるか?」
「もちろん!」
「はい!」
「びー!」
僕達の返事を聞いたシュリさんは手を上に突き出し、やる気をアピールだ!
「じゃあ突撃するよ!皆、あと少しよろしくね!」
「「「おー!」」」
「びー!」
「ティム、これは?何か分かるか?」
「わ、分かりません。初めて見ました。」
僕達の前に現れたのは……巨大な丸い玉。真っ黒でつやつやな、宝石みたいな玉がふわふわと浮いていた。
「絶対にこれだ!間違いないよ、これを壊せばいいんだ!」
「シュリっち、出来そうかい?」
「もちろん!私にお任せだよ!」
「ラーチャオ、敵は居ないよな?」
ラーチャオさんは目を閉じ、辺りを探っている。そして大きく手を振った。
「……オッケー!今は大丈夫っしょ!早く終わらせちゃってー!」
「はーい!」
シュリちゃんは玉の前に立ち、体の前で杖を握る。そしたら一気に魔力が溢れてきた!これがシュリちゃんの力……!
「今からこれを浄化するね!私はしばらく動けなくなるから、周りを見張ってて!」
「任せろし!俺にかかれば安心安全よ!」
「急いでくれ、いつ敵が来るか分からないんだ!」
僕は短剣を構え、シュリちゃんの後ろに立つ。カズハさんとラーチャオさんも立って、三人で周りを見張っているよ。
「んっ。結構強いなこれ……まだ時間かかりそうだよ!もうちょっと頑張って!」
「慌てるなよ。落ち着いた方が早くなる、慎重にな。」
「びー!びー!」
「どうしたのびー君?」
「びー!びー!?」
びー君が羽をパタパタ動かし、大きな鳴き声を発した!僕は目を閉じると……何かこっちに来てる!
「ラーチャオさん!」
「ああ!でっかいのが来てるし!皆気をつけて!」
「私達も気合を入れろ!シュリの仕事が終わるまで、ここを死守するぞ!」
僕達がここを守るんだ!でも……近づいてくる気配、これは一体……?
◇◇◇
「……はい。無事に潜り込めました。現在は………………わ、分かりました。」
ピッ。
「……つ、次の仕事は……あっ!」
「な、何か来る……!外は!?ティム様達は!?」
「ヒヒーン。」
「ど、どうしよう……どうすればいいんだろう……!」




