調査開始、現れた黒い魔物
「よし、バインド解除!」
「あっ!外れた!」
「こっからはシュリちゃんにお任せっしょ!お仕事頑張ってくれよな!」
「うん!任せてよ!」
揺れ動く馬車から僕はそっと降り、びー君と一緒に馬車から距離を取った。
「大きい……シュリちゃん、ここが目的の場所?」
「うん。間違い無い、ここから黒い霧が広がってるんだよ。」
僕とびー君の後ろにシュリちゃんが付き、一緒に湖に近づいていく。馬車の先頭にはカズハさん、中ではラーチャオさんとサキさんが待機中だよ!
「二人とも、気をつけてくれ!あまり遠くに行ってしまっては援護できないからな。」
「はい!まずは短い範囲で周りを探って来ます!大丈夫そうなら馬車を進めて下さい!」
僕達は馬車を目視できる範囲内で、少しずつ歩く。それに合わせて馬車もゆっくりと後をついてくる。離れ過ぎないように、ちょっとだけ進むんだ。
「ティムっち!シュリっち!聞こえる?」
「ラーチャオさん!敵ですか!」
「ああ!こちらに三つ、高速で近づいてくるし!準備をヨロシクー!」
「了解です!シュリさん、来ます!」
「わかった!ここは任せてよ!」
僕達は周りを確認、……来た、うっすらと影が三つ!真っすぐこちらに向かって来てる!
「びー君、お願い!」
「びー!」
「先手必勝!ホーリーヴェール!」
シュリちゃんが魔力を込めた杖を振るう。すると僕達の前に、白い壁が現れた!襲って来た魔物はゴツンと頭をぶつけて怯んでいる。……黒いモヤがかかってる、何の魔物なんだ!?
ガンッ!ガンッ!
「どう!すごいでしょ!」
怯んだ魔物は壁に頭をぶつけて壁を壊そうとしてる!でもそれに集中してる今、攻めるチャンスだ!
「シュリちゃん、僕達の攻撃はここを通る?」
「もちろん!私が認めた人ならここを通れるようになってるんだ!」
「なら、これでどうだ!」
カズハさんが弓を構えると、矢が黒く変色する。その後黒い炎に包まれ、太くなった!
「行くぞ!ブラック……アロー!」
掛け声と一緒に矢が飛び出す。それは魔物の一体に当たって……体を粉々にした!?
「ウガァァァ!?」
「ガァァァ!ガァァァ!」
「今だ!」
今度は僕の番だ!壁を超えて魔物の後ろにジャンプ。びー君の短剣を握り、敵に打ち込む!
「ガァァァ!?」
「ウガァァァ……。」
それから急いで壁の中に戻る。魔物は壁を攻撃してるけど、だんだん勢いが落ちていく。毒が効き始めたんだね。
「ハァッ!」
「これでトドメだ!」
放たれたカズハさんの矢が、まず一体に当たる。そしてもう一体、僕は真正面から短剣を構えて突進だ!
「ウガァァァ!?」
慌てて後ろを振り向き走り出す魔物。でも毒で弱った今なら、僕の方が早い!
「うりゃぁぁぁ!」
空中から短剣で一閃すると、魔物が真っ二つに。僕は地面に着地し、その相手を見た。
「勝った!……でも、この魔物は一体?」
僕は倒れた魔物を確認しようと近づく。魔物のモヤは無くなっていて、その体が見えてきた。
「あれは……ブレードウルフ!?」
倒れた魔物はブレードウルフ……間違い無い、さっきシュリちゃん達の馬車を襲ってた魔物だ!
「皆さん!こっちに来て下さい!」
「おっ、終わった?おつかれー!」
「お、お疲れ様です!」
ラーチャオさんとサキさんも馬車を降りてこっちに来てくれた。カズハさんは馬車に戻り、馬と一緒に合流だ。
「この魔物、さっきのブレードウルフですよ!馬車を追っていたウルフです!」
「本当か?妙だな。随分姿が違っていたようだが。」
「間違いありません!だって、頭を見て下さい!」
「頭……傷があるな。この傷……これは私の矢か!」
カズハさんが手持ちの矢を取って、傷口を確認する。……やっぱり、カズハさんの撃ち込んだ矢だ!
「やっぱり……。」
「ん?どしたのシュリっち?」
深刻そうな顔でウルフを見下ろすシュリちゃん。ラーチャオさんが心配そうに肩に手を置く。
「あのね、今アースラでは、魔物の動きが活発になってるの。それで魔物が活動する時、そこには黒い霧が広がってて……魔物も種類が分からない位、黒いモヤがかかってるんだ。原因は調査中なんだけどね。」
「それで君がここに来たのか。」
「うん。国の魔法使いや冒険者、皆であちこちを調べてるの。私達がここの担当になったんだけど……。」
「なるほど、それで奴らが逃げた訳か。未知の魔物なら怖気づくのも分かるかな。……ラーチャオの予想もありそうだが。」
「と、とにかく原因を探しましょう!こういうのは、そう!一番気配が強い所に何かあるはずです!」
議論は一度後にしよう。何か起きてるなら必ず原因がある。皆で手分けして……は危ない。本命を探すのはシュリちゃんを中心にして、僕達は周りの調査だ!
「また何か来たし!敵の数は……今度は四体!」
「迎撃しながら動くぞ!早く元を断たねばならないんだ!」
「シュリちゃん、さっきの壁で敵を止めて!僕達が倒すから!」
「分かった!無理しないでね!」
敵を倒しながら、一斉に移動して辺りを調べ始める。早く探そう、僕達ならきっとできる!




