冒険者一行、気配の先へ
「びー!びー!」
「がおー!」
びー君とドラゴンの赤ちゃん、ふわふわと馬車の中を飛んでる!かわいいなー。
「そうだお嬢ちゃん、名前は?」
「私?ええと……シュリ。アースラで働く魔法使い!よろしくね!」
「シュリ様ね!俺はラーチャオ、あっちの運転してる人はカズハっち!ヨロシクー!」
「僕はティムっていいます!この子はポイズンビーのびー君、あちらはサキさんです!シュリさん、よろしくお願いします!」
「は、はい!私がサキです!よ、よろしく……。」
「むっ!」
緑髪の女の子……シュリさんはほっぺを膨らませた。僕と同じ位の身長だ。同い年くらいかな?
「せ、せっかく一緒になったんですから……その……うん!普通に呼んでくれても構わないよ!呼び捨てでも、何でも!」
「えー?いいの?偉い人なんでしょー?」
「うん!その、私こうやって近くで人と話す事、あんまり無くって……。だから、ね!お願い!」
しばらく考えて……僕とラーチャオさんは、同時に答えた。
「オッケーっしょ!よろしくシュリっち!」
「うん!よろしくね、シュリちゃん!」
「びー!」
「がおー!」
「ティム様。すみません……。」
「はい!どうしました?」
「ちょ、ちょっとカズハさんの所に行ってきます。風に当たりたくて……。」
「分かりました。顔を出す時は気をつけて下さいね!」
「き、気をつけます。」
サキさん……僕達が馬車に戻ってからそわそわしてる。何か気になるのかな?
◇◇◇
(あの子……こんな場所の任務を受けたのだ。相当な腕前と地位を持っているのだろう。本命の為にここで恩を売っておくのも手か……。)
「あ、あのぉ……。」
「ハッ!い、いや!別に何も考えて無いぞ!」
(いやいや何を考えている!元々心配で助けに来たというのに!……こんな事を考えるとは、まだまだ未熟者だな、私は!)
「本当に何も考え……サキ?どうしたんだい、そんな暗い顔をして。」
「は、はい。その、風に当たりたくて……。ラーチャオさん、すごい怖い顔してましたよね。何だか、私全部見透かされてるみたいで……。」
「そ、そういう事か。確かにな。アイツはふざけた奴だと思っていたが……中々しっかりした奴のようだ。気配察知、動き方、それに洞察力……。見た目で判断してはいけないな。」
「え、ええ……。」
「……どうした?これから戦いになるかもしれない。気になる事があるなら言ってくれると助かるし、私も嬉しいな。」
「っ!い、いえ……私は……。」
「……一緒に乗るかい?こっちに来るといい、気持ちいいぞ!」
「わっ!?」
「ほら、しっかり掴まって!」
「ヒヒーン。」
「いい風……気持ちいいな。こんなの、感じた事なんて今まで一度も無かった……。」
「フフ、大げさだな。……私達は仲間なんだ。もし話したい事があれば皆に言ってくれ。男共に聞かれたくないなら、私でもいいからな。」
「あ……はい!その時はお願いします!」
「さあ、今は風に当たろう!私達二人だけの特権だ!」
◇◇◇
「シュリっち!感じた気配ってのはどの辺よ?俺はまだ分からないんだけど?」
「ここを真っすぐ、そしたら……湖かな?広い範囲に、まーるく怪しい気配があるんだ!」
「びー君、分かるかな?」
「びー!びー!」
「……そっか!何となく分かるみたい!シュリちゃんの言う事は合ってたんだ!」
だいぶ走ったなあ。シュリちゃんの感じる気配って一体何だろう。
「びー君、もう一度力を貸して!」
「びー!」
一応備えておこう。僕はびー君の力を借りて、紫色の短剣を取り出した。
「すごい……ティム君はテイマーさんなんだね!」
「はい!魔物から力を借りて戦うんです!」
「おお!実際に見るとスゲーなあ!」
「ラーチャオ?実際にって?」
「おう!ティムっち配信者やってるのよ!メチャスゴな配信ばっかなんだぜ?俺も見てるし、カズハっちも見てるんじゃね?」
「おおー!」
ラーチャオさんが得意げに語り、それにシュリちゃんが目を輝かせる!
「はい!パートナーが居れば、僕達はもの凄く強いんです!たくさん特訓もしたし、色々と頑張って来ましたから!」
「よっ!テイマー最高!」
「テイマーさいこー!」
……何だか変に盛り上がっちゃった。目的地はまだ
「あっ!み、皆!気をつけて!急に気配が強くなった、そろそろ到着するよ!」
シュリちゃんが馬車の中で杖を持つ。それと同時にラーチャオさんは目を閉じて、どっしりと座り込んだ。
「オッケー!俺も探ってみるわ!カズハっち!聞こえた!?」
「ああ!前は任せろ!早めに停めて態勢を整えるぞ!」
「僕もやります!びー君、一緒に外をお願い!」
「びー!」
それからすぐ、僕達の走る道に暗い霧が出てきた!間違いない、この先だ!
「よし!止まってくれ!」
「ヒヒーン。」
カズハさんが馬車を停め、僕とびー君は外に出る。
その目の前には……大きい湖が広がっていた。




