少年テイマー、狩人とタンクの強さを見る
馬車の周りに近づくブレードウルフ……レルと同じ種族だ。自分のブレードを使って狩りをする魔物で、武器を使うからか、知能も高い。そんな魔物が群れで来るんだ、気をつけないと!
「ラーチャオさん!行きますよ!」
「オッケー!」
「……ガウ?」
一体がこちらを向いた!僕達は走って近づいてるから、これはしょうがない。不意打ちは無理だけど構わず突き進む!
「アォォォン!」
「ガウ!」
「ガウゥゥ!!」
一斉に来た!こっちに……いや違う!?ラーチャオさんの方へ向かっている!するとラーチャオさんが方向転換。僕とは違う方向に!
「ティムっち!ここは俺に任せろし!馬車の警備にいってちょーだい!」
「は、はい!?」
「さっきも言ったっしょ?俺、チョー凄いから!先に行った行った!」
「わ、分かりました!行こうびー君!」
僕は急いで馬車に駆け寄り、中の人達に声を掛ける!
「皆さん!大丈夫ですか!」
「あ、貴方はさっきの!」
女の子がこっちに気づいた。それと同時に冒険者さんも気づいたよ!
「何だお前は!この方をどなたと……。」
「それどころじゃありません!すぐ後ろにブレードウルフが居るんです!この馬車、狙われてます!」
「な、何ですって!?」
「今は僕の仲間が引き付けてくれてます!今のうちに防御態勢を整えるか、ここから離れて下さい!」
あの数だとラーチャオさんも厳しいはず、カズハさんの援護に賭けて、僕達はここを離れないと!
でも、冒険者さんから出た答えは、僕の想像とは違っていた。
「いや、必要無い!馬車はここに留まる!」
そして本当に馬車を止めて、ここに置いちゃった!?
「な、何で!?危ないんですよ!」
「う、うるさい!旅の冒険者には関係無い事だ!さっさと消えろ!」
「そんな!あの数は大変ですよ!?」
「黙れ!おい皆行くぞ!ここなら大丈夫だろう!」
……冒険者さんが皆出てきた。六人……ラーチャオさんの予測通りだ。
「撤収だ!後はこのガキ共が何とかしてくれるだろう!」
「分かった、行こう皆!」
…………え?何で!?逃げた方がいいとは言ったけどまだ馬車に二人乗ってるでしょ!?
「ま、待って!?それならこの人も連れてってくださいよ!」
僕は女の子を指差して要求したけど、彼らは一目散にここから退散してしまった。
「あ、あの……彼らは?」
「逃げちゃいました……。一緒に行ってくれればよかったのに……。」
「ええっ!?」
顔が真っ青になる女の子。こうなったら僕がカバーしないと!
「中に居て下さい!絶対にここから出ないで!」
「お、お願いします!」
僕は短剣を持って馬車を見張る。それからラーチャオさんの方を確認だ。
「それ!こっちこっち!遅いなぁ。」
「ガウゥゥ!」
「ガウ!ガウ!」
ラーチャオさんはアクセサリーをジャラジャラと鳴らしながら……全部のブレードウルフを引き付けてる!
「ガウゥ!」
「ほい!」
手に小型の盾を持って、振られるブレードを受け流す。そして顔を殴りつけ、更に後ろに走る!
「そんなもんかい?ほれ、ここ、ここ!」
……体を振って挑発するラーチャオさん、それに向かうブレードウルフの頭に、飛んで来た矢が突き刺さった!
「ガウ!?」
「ウガァァァ!」
「ガウゥゥ!」
「いいぞ……そのままで頼む!」
「オッケー!任せろし!」
盾で殴りながらぐるぐると回るラーチャオさん、ついて行くブレードウルフに確実に矢を射るカズハさん。二人とも凄い!
「ガウゥゥ!」
何匹かのブレードウルフがカズハさんの所へ走る!攻撃してるのに完全に気づいたんだ!
「へへっ、俺の力をどんと見せてやんよ!ウォークライ!」
「ガウゥゥ!?」
「グゥ……ガァァァ!」
あっ、何匹か止まった。そして僕もラーチャオさんに思わず目を向けてしまった、この技は、相手を誘導する技だ!
「そこっ!」
「キャン!?」
ラーチャオさんの方を向いたウルフに、カズハさんが矢を撃ち込む。ブレードウルフ達は混乱してるね。どっちに行こうか迷ってるんだ。
「ガウ……キャァァァァン!?」
「ガウ!ガウゥゥ!?」
つ、遂に逃げ出した!一斉にこの場を離れて行くブレードウルフ達。これで一安心かな?
「ティムっち!大丈夫かい!?」
「は、はい!ラーチャオさんのおかげで助かりました!」
「他の冒険者は?怪我してねぇ?」
「そ、それが……。」
説明が難しい……。そこで言葉に詰まっていると、カズハさんが馬車に乗ってこちらに来た。
「ティムは無事か!?それとその子は……さっきの子だな!他の人達はどうした?」
「俺の心配もしてくんない?」
「そ、それが……。」
僕は馬車の中に居る女の子に顔を向け、首を横に振った。
「皆逃げてしまったんです。説得はしたんですけど、あの子を置いて行ってしまって……。」
「マジ!?」
「何だと!?」
ラーチャオさんとカズハさんは二人で顔を見合わせ、思わず大声を漏らしていた。




