狩人、馬車を追いかける!
「はいっ、はいっ!」
「ヒヒーン。」
馬に鞭を入れて、来た道を走る僕達。アースラに向かう為にはここを抜けて、分かれ道を左に進まないと駄目なんだよね。
「行きは気にならなかったが結構揺れるな。そっちは大丈夫か?」
「はい!異常ありません。」
「それは良かった。ラーチャオはどうしてる?」
「ぐっすり寝てますよ。」
「……そのままにしておこう。起きたらうるさいからな。」
僕も馬車の中で、少しだけ寝ようかな。壁に寄りかかり、目を閉じ……
「サキさん?どうしたんですか?腕輪をずっと触っているみたいですけど。」
「あっ!その、私なら大丈夫だ、そう念じてるんです。何だか緊張してしまって……。」
「そうだったんですか。その気持ち、分かります!一緒に頑張りましょう!」
「はい!ありがとうございます!」
そして腕輪を触っているサキさんを見ながら、僕は目を閉じた。
◇◇◇
「サキ、と言ったかな。今起きているか?」
「はい。起きていますが……。」
「さっきの奴ら、君はどう見た?」
「え、えっ?」
「いや、どうにも気になってね。ラーチャオはドンパチやっていると言っていた。しかし私達が行った時はトラブルこそあったが、敵の姿は見えなかっただろう。」
「は、はぁ。」
「まあ、もう会うことも無いだろう。向こうがそう言っていたんだ。お付きの冒険者も居たし、大丈夫なはず……。」
「え、えっと。」
「…………考え過ぎかな?何だか、猛烈に嫌な予感がするんだよ。」
「嫌な予感?」
「ああ、だから……。戻っていいか?いや逆か、右の道をこのまま進みたいんだ。」
「えっ!?それはティム様に聞いてみないと……。」
「……悪い。行かせてくれ!私の狩人としての直感が囁いているんだ。奴らには……危険が迫っている!」
「え、え?でも」
「一目確認するだけでいいんだ!必ず後で埋め合わせをする!」
「ま、待ってくださいー!?」
「びー?」
◇◇◇
んー。すごい揺れてる。結構険しい道なのかな。
「お、起きました!カズハさん、今はどんな調子ですか?」
「ティム!悪い、今はさっきの馬車を追っているんだ。」
「そうなんですね……えっ!?」
「あの馬車……危険だ!私の直感がそう言っている!」
ちょ、直感?どういう事!?
「すまないが、ラーチャオを起こしてくれ。奴の力を借りたい!」
「は、はい!ラーチャオさん、起きて下さい!」
僕はラーチャオさんの体を揺らし、彼を起こす。目をこすりながら、ラーチャオさんは起き上がった。
「何?俺気持ちよく寝てたんだけど?」
「ラーチャオ、この先に何か気配を感じるか?」
ラーチャオさんは開けたばかりの目を閉じ、何やら探っている。この人、索敵が得意なんだね……。
「気配?んあ。何だか馬車が走っていて、その後ろを何かが追ってるみたいよ?後ろの方は……魔物っぽい?」
「やはりか!急ごう!」
「な、何事だし!?」
「ラーチャオさん、構えて下さい。カズハさんが何かを感じたらしいんです。」
「お?俺の出番?任せといてー!俺、チョー凄いから!」
それから馬車を揺らしながら、道を進む僕達。……カズハさんの顔が変わった。何か見つけたんだ!
「あそこだ。一度ここに止まるぞ!」
「あっ。距離結構遠くない?大丈夫?」
「私の弓が届く距離だ!問題無い!」
「俺達は?」
「走ってくれ!」
「ええ……。」
「カズハさん、あれは!」
「……マズイな。」
見えたのはさっきの馬車!カズハさんはこれを追ってたんだ。でも、周りには……ブレードウルフがいっぱい集まってる!
「ひとまず助けなければ!私は矢を使って攻撃する、お前達は近くへ行ってくれ!」
「りょ、りょーかい!」
「はい!行くよびー君!」
「びー!びー!」
僕達は外に飛び出し、馬車の方へ駆け出す。待ってて下さい、今助けに行きますから!




