旅の途中 冒険者一行、馬車を発見する
出発してからしばらく経った。今は馬車を飛ばしながら、道をひたすら疾走中!風が気持ちいいけど、落ちないようにしっかりと掴まってるよ。
「退屈だしー。ティムっちもそう思わない?」
「退屈なのがいいんですよ。何も無いのが一番です。」
「ラーチャオ、ならお前は寝ていろ。うるさいのは御免だ。」
「じゃ運転は任せるわ。俺は寝るー!」
ラーチャオさんとカズハさんが口論になっている……のかな?ラーチャオさんは気にしてないみたい。
「ところでティム。一つ質問させてくれないか?」
「はい。」
「君のパートナーはブレードウルフでは無いのか?今連れているのはポイズンビーと、助手さんだろう?」
「あっ!はい。レルはお腹を壊しちゃったみたいで今はお休み中です。今回は友達のびー君……ポイズンビーに来てもらったんです。」
「そうか。早く良くなるといいな。」
僕は後ろからカズハさんを見ると、彼女は一切よそ見をせず馬を走らせている。すごい真面目な人だ。一方……。
「ぐーぐー。ぐあー。」
ラーチャオさんはのんびりとお昼寝をしていた。
「!」
僕は急に気配を感じて、前をじっと見る。何だろう、何かがこちらに迫っている!
「……起きているか、ティム。」
「は、はい。」
……この感じ。カズハさんも気づいたのかな。
「前が気になるか?」
「はい!もしかして……誰か居る?」
「何とも言えないが、少し速度を上げよう。それっ!」
カズハさんは馬に鞭を入れて、スピードを出す。するとすぐ、僕達の前には分かれ道が現れた。
「分かれ道か。どちらに行けばいい?」
「はい。アースラに行くには左の方へ、でも気配は!」
「分かった!」
馬車は右に曲がり、うまく道に入った。速度を上げ、ひたすら進むと…………倒れた馬車がある!
「あそこだ!」
「ラーチャオさん起きて!前が大変です!」
「んにゃ?俺まだ眠いから。」
「起きろ馬鹿者!この状況、貴様でも感じるだろう!?」
「んー?……おっ、何かドンパチやってるっぽい?」
ラーチャオさん、すぐに気配を感じれたんだ。この人は一体……。
「人数はざっと八人……馬車の影に二人、周りを囲んでるのが六人くらいっしょ。」
「……お前、人数まで予測出来るのか?」
「だって俺タンクだし?……敵の数と守る数は把握しとくべきでない?」
この人!短時間でそこまで分かるの!?
「どっちを守るべき?指示出してちょーだい!」
「……まだ判断つかない!一度突っ込むぞ!」
急いで準備だ!僕はブレードを……今回はレル居ないんだった!
「びー君!背中撫でさせて!」
「びー!」
僕はびー君を撫でて力を借りる。出てきたのは……紫色の短剣!これだ!
「そろそろだ!皆構えろ!」
「うし!任せろし!」
「はい!」
「わ、分かりました!」
「びー!」
馬車をすぐ近くに止め、僕達は一斉に外に飛び出した!
倒れた馬車、その周りには大人の冒険者が!そして馬車には女の子が腰かけてる!こちらに気づいた女の子は、手を振って声をかけてきた。
「あ、あの!貴方達は旅の方ですか!」
「ああ!貴方達は?」
「わ、私達は」
「お前達、何者だ!」
しまった、周りの人に囲まれちゃったよ!?
「あ、あの!僕達ここで人の気配を感じて来たんです。何かトラブルがあったんじゃないかって!」
「嘘をついても無駄だ!このお方をどなたと思っているのだ!」
「そうだ!貴様達も刺客に違いない!」
周りの人がこっちに剣を向けてくる。戦うしかないのかな……。
「や、やめて下さい!」
「し、しかし!この者達は敵かもしれないのですぞ!」
「お、お願いします!私の言う事を、聞いて下さい!」
「………分かりました。おい、剣を降ろせ!」
冒険者さん達は一斉に剣を降ろした。話を聞いてくれる気になったんだ、よかった……。
「こんな女の子が森の中を……。貴方達はどうしてここを通っているんだ?」
「お前達には関係無い。俺達はあるお方の命令で、このお方を指定の場所まで連れて行く所だ。」
「どこに行くんだ?」
「何故貴様らに言わねばならんのだ!?さっさと帰れ!」
冒険者さんは馬車を立て直し、馬に跨った。今すぐ出発するみたいだ。
「ではさらばだ!もう会うことも無いだろう!」
「あ、あの旅のお方……。」
「行きますぞ!さあ!」
あっ。女の子が引っ張られて馬車に乗せられた。そのまま馬車を走らせて、この場を離れて行く。
「な、何だ奴らは……?」
「わ、分かりません……。」
気配を感じて来たら、怒られちゃった。機嫌が悪かったのかな。
「びー?」
「そうだね。急いでたみたいだし、僕達も先に進もうか。」
「びー!」
「そうだな。行くぞラーチャオ。」
「痛っ!引っ張んなよー。」
僕達はもう一度馬車に乗り直し、元の道を進む。早くアースラに向かわないとね。
それにしても、何であそこで馬車が倒れてたのかな……?




