思わぬ来客、新しい冒険の予感
「行くよレル!こっちこっち!」
「わん!わん!」
村に帰ってきてから、数日が経った。僕達は今、畑のお世話をしながら特訓をしてる所だよ!
「ティム兄貴、そのシャベルはマイラ姉貴のですよ!重くないですか?よければ俺が持ちますぜ!」
「モブスケさん!これは特訓も兼ねてるので、もうちょっと持たせて下さい!」
「へい!了解です!」
「ティム兄貴!こっちはこのモブロウ様に任せろ!思う存分特訓してくれよな!」
一緒に畑を耕しているのは、細めの男の人……モブスケさんと、大きい男の人……モブロウさん!普段は二人で畑をお世話してくれてるんだ。リースさんが以前村に誘った人達で、二人とも気の良い人達なんだ!
カーノンの街に行く前に挨拶しただけだから、早く仲良くなれるといいなー。
「なあ兄貴。俺達あの場に居なかったけど、あの女の人はもう元気になったのか?」
「はい。今はお家でゆっくりと休んでます。きっと今後の事を考えてるんですよ!」
「それは良かった!なら俺達も頑張ろう!モブスケ、じゃんじゃん進めろ!」
「へい!」
◇◇◇
「ティムは何だか楽しそうだねー。」
「だな。ミーはこれからどうする?」
「うん!ミーはリースにあいさつ出来たから、一段落したら帰って配信を再開するよ!皆喜んでくれるし、成果を出せばお金も稼げるからね!」
「俺も特訓だ!タルトと一緒にどんどん強くなるぞー!」
「かめー!」
◇◇◇
「失礼します!」
「おっティム君!頑張ってるな!」
「ティムさん!お疲れ様です!」
僕が休憩の為にリースさんの家に行くと、ロットンさんがリースさんと料理を作っていた。いいにおい……お腹すいてきちゃった。
「しっかしリースちゃん、ここも随分賑やかになってきたな!」
「はい!皆優しくて、毎日が楽しいです!」
「そりゃ良かった!何かあったらラルフに言えよ?こき使って構わないからな!」
「それは……その時に考えましょう!」
そしてロットンさんはこっちを向いた。頭にちょこんと乗せた帽子が、格好良さを出してる気がする!
「んじゃ飯にするか!皆を呼んできてくれ!」
「はい!」
今日のご飯は何かなー?早く皆を呼んで、内容を確かめなきゃ!
「皆さん!ご飯ができましたよー!」
「来たな!行こうタルト!」
「かめー!」
「ミーもミーも!全部食べちゃうぞー!」
「兄貴!俺達も行きますぜ!」
「おう!俺が一番だ!」
皆で食べるご飯はおいしいから、早く……………………。
「え……?」
皆を家の側で待ってると、入り口に誰か立ってる。あれは……。
「い、居ましたー!ようやく見つけましたよ!元勇者パーティー、テイマーのティムさん!」
…………何で?何であの街の受付さんが?
「街で会った時、どうして逃げちゃったんですか!ちょっとお話したい事があったんですよ?」
…………な、なに!?
「あ、ああ……!」
「よっ、皆飯に来たか?って、あれは!?」
ロットンさんと目が合う受付さん。するとロットンさんの顔が一気に険しくなった。ロットンさんはすぐにジャンプして、僕の横に跳んできてくれた。
「アンタは……。」
「あ、貴方は誰ですか!?ティムさんは私達の街の冒険者なんですよ!勝手な事をされては困ります!」
「そうですか。それで、彼に何の用があるのですかな?」
「それは……。」
受付さんはしばらく固まった後、急に地面に座り、土下座の姿勢をこちらに向けた。
「お、お願いします!ティムさんに受けて欲しい依頼があるのです!引き受けてもらえませんか!」
「……えっ?」
「お願いです!ティムさんにどうしても、どうしても頼みたいんです!」
……何で。前行った時は駄目って言ってたのに!
「で、でも!前に言ってたじゃないですか!クズスキルのテイマーに出すクエストは無いって!」
「あっ、あの時は、その……。」
……ちょっと待とう。もしかして、テイマーの強さが分かったから、依頼に来てくれたのかも。……落ち着こう、落ち着こう。大丈夫、僕なら大丈夫だ!
「ふー。ふー。ご、ごめんなさい。でも、どうして僕に?他の冒険者さん達は居ないんですか?」
「はい、誰も引き受けてくれないんです。難易度が高すぎるって……。」
「どんな内容ですか?一度話を聞いてみないと。」
「は、はい!分かりました!それでは一度マスターの所に」
「はいストップ!」
突然ロットンさんが受付さんを止めた。やっぱり怪しい物を感じてるみたい……。
「私もついて行きましょう。どんな話か聞いておかねば。」
「な、何で貴方が?そもそも誰ですか?」
「こう見えても役場の職員でしてね。不当な内容じゃないか見ておきたいのですよ。」
「は、はあ。分かりました。では貴方も一緒に来て下さい。」
ロットンさんは後ろを振り返り、大声で皆に話しかけた。
「お前ら!俺達ちょっと外に出てくるから、飯は先に食っていて構わないぞ!リースちゃんの言う事ちゃんと聞けよ!」
「では行きますか!ティム君、早く済ませよう!」
「はい!よろしくお願いします!」
「で、ではこちらへ!」
僕達はもう一度街へ向かう。どんな依頼なんだろう?でも、これもテイマーが認められてきてるって事なら……頑張るぞ!




