少年テイマー、ミルクの買い出しに行く
「頑張ってレル!」
「わん!わん!」
「しかし……そんな酷い扱いをする役場か。気をつけねぇとな。」
僕達は街に向かってスピードを上げる。距離はそこまで離れてないから、もうすぐ到着するはず。
「見えた!あそこです!」
「さて、いよいよだな。」
街の外に着いた僕は、頭にローブを被って入る準備をする。
「レル、お外で待ってて!」
「わん!」
「気をつけろよレル、野生の魔物と思われて攻撃されるかもしれない。待つならしっかり隠れとかないとな!」
「わん!わふー!」
「わ、分かりました!」
レルは街から少し離れた草むらにしゃがみ、僕とロットンさんで街に入る事にした。でも、ちょっと心配だな……。
「そうだ。ここで冒険者証を更新したんだろ?なら映像を提出すればランク上がるんじゃねぇか?」
「た、確かに!」
「テイマーがちゃんと戦えるって分かりゃ酷い扱いもしないだろ!早速見返すチャンスが来たな!」
「はい!ちょっと冒険者証を出しますね。」
僕は冒険者証を出して……あっ。
「ティム君落としたぞ!慌てなくても平気平気!」
「ありがとうございます。」
「どれ、ついでに今のラン………………。」
あれ、ロットンさんの動きが止まった。
「ロットンさん?」
「……ティム君、冒険者証って確認したか?」
「あっ……ストーレに行った時は必要なかったし、カーノンはロットンさんと行ったから出してないです。」
「じゃあ、まだ見てないって事か。」
「あ、あの?」
「……何でもない。更新は後にしようか、今はミルク優先だしな。ほら、さっさと済ませるぞ!」
「は、はい!」
僕達は早歩きで街に入っていった。
「らっしゃい!食料はここで買ってきな!」
「ポーションはここが安いよー!皆見ていってねー!」
「活気のある街だな。ここならミルクもあるだろ。」
「ですね、早く探しましょう!」
僕達はお店を覗きながら、目標のミルクを探す。あっちこっちにお店があるから、どこに行けばいいか分からない……。
「どうしましょう。見つかりません!」
「ここは賑やかすぎるな。ちょっと外れの方を当たってみるか。」
街の中心から離れようと後ろを振り向く。とりあえずここから外側に
「ロットンさん!あっちも」
「あっ!」
「えっ?……あ、ああ…………!」
ろ、ロットンさんの方を向いた時、女の人と目が合った。……あの人は、街役場の受付さんだ……。こっちを見て、慌てたように近づいて来た!
「あの!貴方は」
「あ、あわ」
「ティム君?あ?」
ロットンさんと女性の目が合った。
「……なるほどな。ティム君、早く外側に行こうぜ!買い物買い物ぉ!」
「あ、……はい!」
ロットンさんが手を引っ張って、僕を連れ出してくれた。
「ま、待って!行かないで!」
後ろから呼び止める声がしたけど、僕は急いで外側に向かって走り出した。
「はぁ、はぁ……。」
「落ち着いたかティム君?」
「な、何とか……。」
「アイツか……ま、早く気分を切り替えようか!ミルク探しの続きだ!」
「はい!」
ロットンさんと一緒に、ミルク探しの続きだ。急いで探そう!
「あったぞ!あそこだ!」
そして歩き回ってしばらくすると、ミルクのビンを売っているお店を見つけた!やった、やっとあったぞ!
「いらっしゃい。何か用かな?」
「あの!ミルク下さい!」
「はいよ。どれくらいかな?」
「後ろの樽一個、丸ごと下さい!」
「うん、これだね。樽……樽!?」
店主さん驚いてる!でも僕がお金を出すと、樽ごとミルクを譲ってくれたんだ。
「毎度あり!ちゃんと飲んで大きくなるんだよ!」
「はい……。」
「よし!やる事終わったな!早く帰ろうか!」
「はい!ありがとうございます!」
僕達は急いで街の入り口に走る!そしたらレルに合流して、背中に樽を乗せてもらうよ。
「ただいまレル!これお願い!」
「わん!」
「さあ行くぞ!あの女性が待ってるからな!」
僕達はひたすら走って村に帰る!ミルクは買えたんだ、後は飲んでもらわないと!
「ま、待って!待って下さい!お願いだからー!」
後ろから受付さんの声が聞こえたけど、僕はミルクを優先して村に走って行った。
「皆さん、ただいま!」
「おかえりなさいティムさん!ロットンさんも!」
「ティム君はそれを持って行ってくれ!いやー疲れた、ご褒美に酒をくれ!」
「はい!果物でできたワインです!」
「ありがとな!あー!堪らねぇぜ!」
ロットンさんは椅子で一服、僕はミルクの樽を持ってマイラさんの所へ!彼女は部屋の外で僕を待っていてくれた。
「マイラさん、買ってきました!」
「お疲れ様です。さあ、こちらに!」
マイラさんと部屋に入ると、パジャマに着替えた女性がベッドに座っていた。
な、何だかすごい……うまく説明出来ないけど、とってもきれいな人だ。髪のつや、スラッとした体、これがサキュバスなんだ……。
「あの……あなたが助けてくれたんですか?」
「は、はい!」
「ありがとうございます。」
「そ、それでこれを持ってきました!ミルクが好物って聞いたんですけど……。」
「はい!……では、いただきます。」
彼女の側にミルクの樽を降ろすと、コップに注ぎ、まずは一杯。次にもう一杯、その次も……
「これで良くなってくれればいいのですが。」
「大丈夫です!絶対!」
目の前でミルクを飲み干していく女性……後で彼女に、何があったのかを聞いてみよう!
でも、今は僕も休憩しよう。リースさんにジュースをもらう為、僕は皆の所に戻る事にした。




