少女テイマー、夜に備える
「な、何ですかこれ?」
あーしが握っていたのは魔法使いの手っすよね。でも、これってどう見ても骨っす……。しかも手首だけの。
「おーい!速すぎるぞ、ワシの手を持っていったな!」
やって来た魔法使いは、洞窟の外に。そこで外の明かりが体を照らす。
そこにはローブを被ったスケルトンが居た。顔を見てみるとガイコツが映り、体は骨で構成されていた。
「アンタは魔物だったんですか!?」
「いかにも。ワシはリッチ、魔法が得意なただのスケルトンじゃよ。」
◇◇◇
あーしはリッチを連れて、街に戻って来たっす。するとリッチは周りを見渡し、ローブを深々と被る。
「この感じはまずいのう。今のうちにワシの子達を呼び戻しておくか。」
リッチが指を立てると、そこに火の玉が集まってくる。数がある程度集まると、それは指に吸収されたのか見えなくなったっす。あれが死霊っすか……。
「さ、案内してくれ!ワシだけでは手に負えんからな。」
「わ、分かったっす。」
あーしは依頼者のお家の扉に手を掛け、そっと開けた。
「み、皆ただいま戻りましたっす。」
「あっ、おかえり!どう?シロメは役に立てたかな?」
「ええ。中々やるっすね、驚いたっすよ。」
「それでサリア、どうだった?犯人は捕まえられたのか?」
「ごめんなさい、それは出来なかったっす。でも、協力者は見つかったっすよ!」
「協力者?誰だそれは。」
あーしは協力者の手を引っ張って、皆の前に連れて来るっす。
「この者達がお前の仲間か。強そうじゃな。」
「す、スケルトン!?」
「うけー。」
アオハはびっくりしてシロメを抱きしめる。一方のギルは落ち着いていた。
「ほう。貴様も魔物だな。サリア、奴が協力者か。」
「ええ。」
「うわあああ!」
依頼者さん、びっくりして家の端っこに行っちゃったっす。自分の家にスケルトンが来たら驚くっすよね、当然っす。
「ご、ごめんのう、こんな姿で!ワシは悪いリッチじゃないぞ!ただの流れ者じゃよ!」
「依頼者さん、このリッチが詠唱を始めたのは、山に居る何かを止めるためだったんですよ。」
「そ、そうなんですか!?」
「じゃが、ワシではもう止められん。街の異変は、その何かの影響が強まったせいじゃな……。」
「え、ええ……?」
「さて、どういう事か説明してくれ。」
「ええ。実は……。」
「ワシが教えてあげよう!」
それからリッチは皆に、あーしの時と同じように説明をしてくれたっす。ギルはだんだんと顔を険しくしながら話を聞いているっすね。
「……という事じゃ。」
「つまり、山にいる何かがここに悪さをしてたって事?」
「うけー。」
「まずいな。早急に手を打たねばなるまい。だが今回はそんな時間は無いな!」
「そうじゃな。ワシの予想だと、今夜にもここにやってくるじゃろう。」
「何か手は無いんですか?」
「ふむ。」
リッチは紙を取り出してから自分の杖を使い、何やら描き始めた。これは……この街の見取り図?さっき見ただけで把握したっすか!
「街の人達は教会に居るのじゃろう?そこから絶対に出てはいかんぞ。一番安全じゃ。」
「分かったっす。」
「次に外じゃな。入り口は二つ、普通の出入り口と山への道じゃ。両方を抑えるのが一番じゃろうが……今回は山から来るのが分かっておる。ここに重点を置くんじゃ。」
「了解した。敵の詳細は分かりそうか?」
リッチは首を横に振る。
「いや、ワシの分かる事は影に関する魔物と言う事だけじゃ。それ以外は……。」
「影か……我の見立てだが、シャドウプランクではないか?」
ギルの予測した魔物……シャドウプランク。暗い夜にそっと現れ、手や足を掴んだり物を動かしたり、いたずらをする魔物っす。でも、いたずらにしては度が過ぎてるような……。
「その可能性はあるのう。何にせよ対策は考えねばな。」
リッチは外に出ると杖を振る。するとさっきしまった死霊が杖から現れ、街の入り口に飛んでいった。
「何かあればワシに伝わるようになっている。これで外の様子を見ておこうかの。」
「頼もしいな。感謝する。」
「僕は山の方の門を見張ってるよ!ね、シロメ!」
「うけー。」
アオハはシロメにジャーキーをあげて、一緒に山の方へ向かって行った。あーしも早く山の方へ向かわないと!
「我もそちらに行くが、入り口の内側で待機をする。万一普段の入り口に来た時、すぐに行けるからな。」
「期待してるっすよ、ギル!」
「任せておけ!」
一応準備は出来た、後は夜まで待つだけっす。どんな相手でもあーし達がパパっとやっつけて、この街の平穏を取り戻してみせるっす!
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