少年テイマー、配信準備をする
ラルフさんが街に戻って数日。僕は借りている自分の家の掃除を終え、レルとのんびり過ごしていた。
「レルー。ちょっともふもふしていいー?」
「わん!わふー!」
僕の声を聞き、レルは足元にやって来る。レルの背中に顔をうずめて、ちょっと休憩!もふもふして気持ちいいなー!このままずっともふもふしたいよー!
「……何してんすか。ティム。」
「あっ。……あああああああああ!?」
びっくりした!家の中にサリアがいる!?もふもふしてるの見られちゃった!?
「なーに驚いた顔してるんすか。あーしに直接来てって書いたのはティムっすよ?」
「そうだぞ。犬っころをもふもふするのは構わんが、我の苦労も少しは労ってくれ。」
「う、うん。レルは休んでて、僕が行ってくるから!」
「わん!」
そうだ、僕が手紙を出したんだった。サリアと一緒にギルも来たし、全部見られてたよね……恥ずかしいな……。
「そこだ。そこが気持ちいいんだ!流石ティム、よく分かってるではないか!」
「それは良かったよ。荷物重かったでしょ?本当にありがとう!」
「礼など不要だ。お前になら手を貸してやらんでもない。何かあれば言ってくれ。」
「その時は頼りにさせてもらうね。」
今、僕はギルの肩を揉んでいる所。配信者に必要な道具を彼が背負って持ってきてくれたんだ。だからこれぐらいは僕もやらないとね。
「それでサリア。配信者ってどうやるの?」
「ほい。これを使うっすよ。」
サリアは僕の机に道具を投げ込む。目の前に現れたのは……四角い箱?真ん中にレンズが付いてる、不思議な道具だなー。
「それは魔導カメラって物っす。箱の上にボタンがあるっすよね。それを押すと、そのタイミングからレンズの向いてる方向の映像を撮れるっすよ。」
「凄い!こんな便利な道具があるなんて!……僕、ずっとパーティーの下働きとか索敵とかで疲れて寝てたから、あんまり最新の道具に触れられなかったんだよ!ありがとう、サリア!」
「……チッ。」
「サリア?」
サリアが一瞬、苦虫を噛み潰したような顔をしていた。変な事言っちゃったかな……。
「それから、左にもボタンがあるっすよね。それを押すと、リアルタイムで映像を中継出来るっすよ!」
「リアルタイム?」
「簡単に言えば、今その瞬間を直接映して見せられると言う事だ。よりその場の雰囲気が伝わる手法だな。」
「配信者になるなら基本はこっちを使うっす。簡単だから早めに覚えるといいっすよ!」
ギルが解説を入れてくれる。これは本当に凄い道具だ!早く使い方を覚えないと!
「続いてこれ。魔導パソコンって言う物っす。他の冒険者の配信を見れるから、戦い方とか流行の確認に使うといいっすよ。」
更に渡された物は、水晶の板が貼られた機械。他の配信者さんはどんな内容でやっているのかな?機会があったら使ってみよう!
「後は撮影用の三脚。使うか分からないから一応持って来たっす。」
「我はいらないと思うがな。ティム程のテイマーなら、戦いながら撮影するのも簡単だろう。」
「確かに……僕なら出来るかもしれない!」
「絶対に駄目っす。カメラが壊れたら一瞬でオシャカになるっすから。もし必要無いなら、中継はこれを使って下さいっす。」
サリアがくれた物は……金属の棒?先っぽが四つ、羽みたいになってる。
「これはプロペラっす。カメラにつけると浮遊するっすから、それで手を塞がずに撮影出来るようになるっすよ。」
サリアに注意されながらも、僕は順調に説明を聞いていく。やがて一通り説明が終わり、道具も運び終わった。
「説明も終わったし、これで大丈夫っすかね。」
「ありがとうサリア!本当に助かったよ!」
「お前は引っ越しをしたばかりだろう?機材以外に食料や家具も持って来てやったから、当面は困る事は無いはずだ。」
「じゃあ、あーし達はそろそろ戻るっす。ティムはどうするっすか?早速配信してみるっすか?」
サリアが僕の顔をじっと見て質問する。もちろん!早速やってみたいな!
「うん!早速や」
「あ、あのー。」
その時、家の扉を開けて入ってきたのはリースさんだった。手には果物の入ったカゴを持っている。
「ティムさん。こちらの方々はお客さんですか?」
「はい!僕の友達のサリアとギルです。サリアはテイマーをやってるんです。とっても強いんですよ!」
「いやー、照れるっすね!あーしはサリア。ティムがお世話になってるっす。」
「我はギルだ。……では、そろそろ行くか?」
ギルがサリアに促すと、彼女はこくんと頷いた。
「そうっすね。ティム、何かあったらすぐに呼ぶっす!すぐに駆けつけて、パパッとお悩み解決するっすよ!」
「その時はお願いするね!今日はありがとう!」
そして二人はリースさんにお辞儀して、村の外へ向かって行った。僕の部屋には、サリアが持って来てくれた道具と、ギルの用意してくれた食べ物が置いてある。
「あのお二人もティムさんと同じ、テイマーなんですね。」
「はい。僕達は最強のテイマーを目指して頑張ってる仲なんです。僕も負けないようしないと!」
そして僕達は果物を食べながら話を続ける。いよいよ配信だ!……あっ、その前に他の街で冒険者証を更新しないと。ラルフさんもサリアも冒険者なんだよね。不便が出ないように準備しておこう!
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