洞窟にて、謎の魔法使い現る!
あーし達は男の人から事情を聞く事に。男の人は口を開け、異変について語り始めた……。
「今から数日前の事です。街の奥に小さな洞窟があるのですが、そこから何やら呪文を唱える声が聞こえてきました。初めは何とも無かったのですが、その日の夜から、恐ろしい出来事が始まったのです。」
「具体的にはどうだ?詳しく聞かせてくれ。」
「はい。夜になると、一斉に家に何かが起こり始めるのです。食器が落ちたり、棚の本が崩れたり。どこの家でも同じように。」
「ほう。続けてくれ。」
男の人は震えながら話を続ける。
「一日目はそれで終わりましたが、次からどんどん酷くなってくるのです。うちの街には武器屋があるのですが、そこの武器が独りでに動き出し、店主に斬りつけたのです。」
「勝手に動いたっすか?」
「はい。他にも家に引っかき傷がついたり、扉が吹き飛んだり。夜になる度酷くなって来て……もう怖くなってしまって、でもどうにもならないのです。だから、慌てて依頼を出したのです。」
「こ、怖いっすね……。」
「特に最近あったのは、魔物が街を襲った時の事です。街に踏み込んだ途端、バラバラに弾けてしまったのです……。もう怖くて夜も眠れず、皆は街の教会に隠れて震えております。私だけは依頼を出したので、誰かが来てくれるのを家で待っていたのです。」
「入った時の重い感じはそれだったか……。」
話を聞いていると、隣のアオハはブルブル震えていた。
「ね、ねえそれってさ。」
「どうしたっすか?」
「そのね……その話が本当なら……僕達もう捕捉されてるよね?だって、入ったらバラバラになっちゃうんでしょ?普通に入っちゃったし、み、見張ってるんじゃない?」
「…………っ!」
あーしは鎌を持ち周りを警戒する。今は、特に気配は無いわね。
「おそらく来るのは夜だろう。誰かは知らんがな。」
「なら今のうちに叩くっす!すみません、洞窟ってどこですか?」
「はい。街を抜けてすぐ裏の山に、小さい洞窟があります。」
「よし、あーしが行くっす!アオハも来るっすよ!」
「え!?い、いいよ。僕ここで待ってるからさ!」
そうっすか。では、あーしはアオハの手を引っ張って無理やり連れて行く事にしたっす。
「手伝って下さいっす!油断出来ない相手っすからね!」
「ぼ、僕怖いの駄目なんだよー!シロメ代わりに行ってきて!ね、おやつにジャーキーあげるから!」
「うけー!」
あーしの後ろにちょこんとシロメがついて来る。……しょうがないか。意地悪しちゃったっすね。
「分かったっす。シロメ、よろしくっす!アオハ、ギル、ここは任せるっすよ!」
「う、うん。僕に任せてよ!」
「大丈夫か?来る時にも言ったが、おそらく魔法使いだろう。我が行ったほうが良いと思うが?」
「平気っすよ。夜じゃないならあーしで充分っす!それに万一の時、ここを守れる人は必要っすよ?」
するとギルは目を閉じ、軽くうなずいた。
「ならば行って来い!場所はすぐそこだろう、呼べば数秒で駆けつけてやる!」
「頼もしいっすね!じゃ、行ってきます!」
◇◇◇
あーしは早速、依頼者の言っていた洞窟に向かって歩く。街のすぐ側に山があって、そこに洞窟が……あった。本当にすぐ着いたっす。
「シロメ。アンタはどんな事が出来るっすか?」
「うけー。」
「ふむふむ。」
「うけー。」
「それは頼もしいっす。では、行くっすよ!」
「うけー!」
あーし達は洞窟に足を踏み込む。少し湿ってる……どこから攻撃が来るか分からない。慎重に、慎重に……。
「だ、誰じゃ!?」
気づかれた!?足音は出してないはず、やはり捕捉されてたっすか!
「バレてるなら隠れる意味は無いっす!」
あーしは走って洞窟の奥に!するとそこに立っていたのは、一人の魔法使いだった。
「アンタが悪い奴っすね。そこで何をしてるっすか!」
「邪魔をするなぁ!今結界を貼っている最中なのじゃ!」
やはり、見張ってるのはコイツっすか!鎌を持って、あーしは魔法使いに斬りかかる!
「邪魔をするなと、言ってるだろうがぁぁぁ!」
魔法の盾で鎌が弾かれる。そしてその盾から、冷気が飛んできた!
「しまった!」
足が凍りついて動かないっす!鎌で氷を砕いてる間に、魔法使いは素早く詠唱を始めた。
「燃えろぉ!ボルケーノ!」
放たれたのは炎の渦!まるで吸い込まれるようにこちらに近づいて来る!
「早く斬らないと![魔技]ソウル……」
「うけー!」
「えっ!」
シロメ!?前に出たら危ないっす!
「うけー!」
シロメが羽を広げて炎を受け止める。……炎が小さくなった!?
「何と!ワシの炎が……。」
「うけー!」
少しすると炎は無くなってしまった。ちゃんと消し止め、得意気にアピールするシロメ。なるほど、いい強さっすね!
よし、氷も砕けた!あーしは再び鎌を魔法使いに向けて相対する。
「さて、仕切り直しっす!どうして街の人達に迷惑を掛けるっすか?」
「そ、そんなのワシが知るか!ワシはこの山から来る影を追い払おうとしてただけじゃ!」
「はい?影?」
…………何か話がズレてきたっす。この魔法使い、犯人じゃない?
「……どういう事っすか?」
「ワシは流れの者でな。旅をしてたらここからドス黒い魔力を感じたのじゃ。これはいかんと思ってな、いい洞窟があったから、ここで結界を張ろうと思ったのじゃ。」
「……もしかしてそれって。何か危ない魔法っすか?」
魔法使いは頭を縦に振った。
「ふむ。まあ死霊の力を借りてるから、どうしてもいたずら好きの子は出るのう。……もしかしてお前が言ってるのはその事か?」
「そう!それっす!街の人達大変な事になってるっすよ!今すぐ止めて欲しいっす!」
「何!?そこまで影響が出ていたのか……。それはワシでは無い!ワシの死霊達はいい子じゃぞ!もうワシでも止められないという事か!」
……や、ヤバい事になってきたっす!急いでギルに相談しないと!
「い、急いで作戦会議っす!アンタは悪い人じゃ無いんですよね!なら、お力をお借りしたいっす!」
「わ、分かった!その、被害を受けてる街に案内してくれ!」
あーしは魔法使いの腕を掴んで外に出る。急がないと大変っすよ!?
「魔法使いさん、アンタは……あれ?」
そして外に出たあーしの手には、手の形をした骨が握られていた。
「……えっ?」
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