少女テイマー、目的地到着。
「二人とも!準備は出来たみたいだね!」
「ええ!すぐに解決してみせるっすよ!」
「では行くか。カイン、期待して待っていろ!それと……例の事は任せたぞ!」
「例の事?……ああ、あれか!分かった、こっちでやっておくよ!」
例の事?何なんですかね?後で聞いてみるっす。
あーしとギルは街の門を抜け、目的地に!ここから歩いて……半日くらいで着くっすかね?今はとりあえず進むっす!困った時はそこで考えればいい!
「今回のクエスト、どう見るっすか?」
「詠唱を使うのなら、おそらく魔法使いだろう。我が攻撃を担当しよう。サリアは援護を頼む。」
「了解っす。」
「それでは……。」
ギルは後ろを振り向くと、やっぱり男の子と鳥の魔物はついて来てるっすね。
「それで貴様達は誰だ?まだ名を聞いていないのだが?」
「もう!言おうとしたらどっか行っちゃうし、家に籠もって出てこないし!折角言おうとしても居ないんじゃ無理だよ!」
「ならば今言え。同行してるのだから伝えられるだろう。」
「うん。では、改めて……。」
男の子は大きく息を吸って、あーし達に挨拶をしてくれた。
「僕はアオハ!所持スキルは魔法使いだよ!こう見えても、腕には自信があるんだ。よろしくね!」
「うけー。」
「こっちは相棒のシロメ!全身ふかふかのコットンバードなんだ!枕にして寝ると気持ちいいよ!」
「うけー。」
紹介を聞くと、すぐにギルは鳥の方を見る。
「コットンバード……羽毛で戦闘を行う魔物か。のんびりとした奴だな。それと貴様、その見た目は。」
「アハハ。やっぱり気になるかな?そう……僕はエルフなんだよ。」
エルフ……魔法が得意な種族。魔物の一種と考えられているけど、人間の姿をしていて見分けは殆どつかない。強いて言えば耳の長さが違う位っす。……そんな二人が、何であーし達の所に?
ま、そのうち分かるっすよね。悪い人には見えないし、クエストを手伝ってくれるならありがたいっす。
「ね!君達も自己紹介してよ!僕達もしたんだからさ!」
「アンタ達、あーしを見てすぐに来たっすよね?あーし達の事を知ってるみたいだし、不要だと思うんですがね。」
「いやいや!しばらく一緒になるんだから、ここは一言お願いします!」
男の子……アオハはこっちを見てニコッと笑う。
「いいだろう。我はギル、種族はギルティスだ。配信者をやっている。今回もクエストの中でハイシンをする予定だ。」
「あーしはサリア。テイマーっす。そこのギルとパートナーで配信してるっす。よろしく。」
「うん!よろしくね!」
「うけー!」
二人とものんびりしてるっすねー。でも、一緒に来るからには、しっかり働いてもらうっすよ!
◇◇◇
それからしばらく後。目的地の街に辿り着く……って、ここ……人の気配が全く無い。
「お昼なのに、誰も外出してないっすね。」
「おそらく異変のせいだろう、すぐに解決してやらねばなるまい。依頼者の家はどこだ?」
「あっちですね。早く行くっす!……あれ?」
あーし達が街に一歩踏み込むと、体が少し重くなった?何だか急に動きづらくなったっす。
「う、うけー……。」
「シロメ!?大丈夫かい!」
「うけー。」
「よしよし、僕が運んであげるよ!」
アオハはシロメを抱っこして進む。……結構大きいっすよ。前見えてるんですかね?
「サリア、お前は大丈夫か?」
「平気っす。さ、あそこが依頼者のお家っすよ。」
街の他の建物よりも立派なお屋敷。ここに今回の依頼者が居るっすね。突撃っすよ!
「ごめんくださーい。クエストを受けて来た者っす。ここを開けてくれませんかー?」
扉に声をかけると、中から慌ただしく動く音が聞こえてきた。そして扉が開く!中からは男の人が出てきたっすね。
「こんにちはっす!あーしが」
「うわあぁぁぁぁあぁあ!??」
「ひゃっ!?な、何よいきなり!?」
びっくりした!?何で包丁を持って出て来るのよ!?しかもこっち見てるし!
「うわぁあぁぁぁぁ!」
「ちょっと、落ち着いてよ!私は依頼を受けてここに」
「サリア、アオハ、下がっていろ!」
ギルが私達の前にスッと立つ。そこに包丁を持った男がこちらに向かって……。
「フン!」
「ギャッ!」
ギルが軽く背中を小突くと、男の人はぱたんと倒れた。顔を見ると、目元にはクマが出来てる……全く寝れていないのかしら……?
「ギル!この人は!」
「中に入るぞ!話を聞くにもまず応急処置だ!」
家の中に入ると……あちこち荒れている。やっぱりこの街は、何かの影響を受けてるわ。
「あそこが台所か。サリア、水を用意しろ!」
「ええ!」
まずはベッドに直行。手早く水を出すと、ギルはタオルにそれを浸して男の人の頭に乗せる。そして荷物の中から食材を取り出した。
「サリア、精のつくものを食わせてやれ!簡単な物でいい!」
「任せなさい!」
ギルは男の人に手を置き、魔力でさっきの攻撃の傷を治してる。その間に私は料理を作るわ、って言っても煮る位だけどね。今度ティムに教えてもらおうかしら?
「出来たわ!とりあえずスープよ!」
「上出来だ!さあ、これを飲め!」
「う、うーん……。」
ギルが男の人を叩き起こし、スープを口に入れる。それから数分後。男の人はだいぶ落ち着いたみたい。ベッドの上で体を起こしていた。
「起きたな。体の方はどうだ?手加減はしたが、痛くはないか?」
「あ、ありがとうございます……。体は特に問題ありません。何か、申し訳ない事をしてしまって……。」
「ふーっ…………いえ!問題無いっすよ!あーし達がクエストを受けた者っす!よろしければ、事情を伺ってもいいですか?」
「はい……。」
男の人はスープを飲みながら、少しずつ話し始めた。一体どんな異変が起きてるのか……。




