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配信テイマー、我が道を行く!〜戻って来いと言われても知りません!僕は大切な仲間と一緒に冒険してるんだから!  作者: ゆん。
第六章

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閑話 勇者の大誤算

今回から少し閑話が続きます。よろしくお願いします。

 ここはグランド王国。王国擁する勇者パーティーのリーダー、シャーユは、いつもの料理店で一人で座っていた。


「ど……どうしてこんな事になったんだ……。何で、どうして……。」


 一人でぶつぶつと呟いていると、そこに一人の女性が現れる。それは緑髪の女性……騎士団長ジャンヌである。



「勇者様!しっかりして下さい!貴方は世界最強の勇者であり、魔王を討ち滅ぼすお方なのです!私がお傍に居ます、だから安心して下さい!」


「ジャンヌ……。」



 二人が何故この様な状態になっているのか。それは少し前、魔王の王国襲撃事件に遡る。














 ◇◇◇



「おお!シャーユよ!よくぞ来てくれた!さあ、我らを守ってくれ!」


「ああ!勇者の俺に任せてくれ!」


「私もお供致します!」


 グランド王国にそびえ立つ王の城。王と貴族達は逃げるでもなく、戦うでもなく…………自分達の王国で魔王が暴れているのをじっと見物していた。




「シャーユよ、あそこで戦いをしているのが魔王なのだろうが……戦っているのは相手は何者だ?」


「おそらく冒険者達だろう。だが、おそらくすぐにやられるだろうな。ここに魔王が来た時は任せてくれ、必ず仕留めてみせよう!」


「頼りにしているぞ!シャーユよ!」



 王と貴族達は、シャーユとジャンヌを前にして見物を続けている。彼らは勇者が魔王を打ち倒し、その勇者を抱える王国の力を世に示す……訪れるその場面の為、敢えてここに居るのだった。










 しかし、いつまで待っても魔王はここに来ない。街が蹂躙される様子も見られず、王達は苛立ち始めた。


「うむ……シャーユよ。魔王はすぐここに来るのではないのか?」


「お、おかしいな。そろそろ倒されると思ってたが……。」


「お、王様!緊急事態です!」


 シャーユが首をかしげて居ると、外から騎士が血相を変えて城に入って来た。









「お、王国の街が魔王と思われる女二人に襲撃を受けております!すぐに対応しなければ!」


「何、気にする事はない!ここに居るシャーユとジャンヌが、魔王を滅ぼしてくれるからな!ここは安全だ!」


「い、いえ!下にある街が危ないと言っているのです!勇者様達も早くお願いします!」


「うるさい奴だな。俺は王の護衛で忙しいんだ、適当にやってくれ。」


「し、しかし!このままでは突破されてしまいます!我らでは手に負えず……あの二人に任せるしか無いのです……。」






 この言葉を聞き、シャーユは嫌な予感が全身に駆け巡った。



「お、お前!今すぐ街に向かえ!」


「し、しかし」


「命令だ!すぐに行け!お前が魔王を足止めするんだ!」


「まあ待てシャーユ。その二人はお前の為に捨て駒になってくれているのだ。お前の英雄譚に載せてやろうではないか。その二人とは誰なのだ?」


「ハッ!それは……これを見て下さい!」



「……ほう?」


 王はポカンと口を開け、シャーユの全身に悪寒が走った。

















「な……何だ?何が映っているのだ?」


「はい!これをご覧下さい!」


 騎士は魔導パソコンで映像を映す。そこでは何者かが動画を配信しており、映った先では……








「な……何だこれは!?」


 王達が見たのは、テイマーの子どもがメイド服を着た女と戦っている場面だった。ブレードウルフと共に戦い、互角の戦いを行っている様だった。







「こ、こっちは何だ!?」


 そしてカメラが空中に移動し、もう一方の戦いを映し出す。そこには鎌を持った女が、魔法を操る子どもと激闘を繰り広げていた。



「あの魔物は……ギルティスだと!?何故あんな魔物が街に!?いや、何故人間と一緒に戦っているのだ!?」


「いや、そんな事よりあのガキだ!戦っているのは魔王なのだろう!?ここで食い止めているというのか!?」



 貴族達は驚愕の表情をして画面に釘付けになっている。それを見たシャーユは……冷や汗をポタポタと流していた。









 そして場面は流れ……全力でぶつかったそれぞれの一撃により、辺りが煙に包まれる。それと同時にカメラがおかしくなったのか、プツンと映像が途切れてしまった。



「ああ……ああ……。」


 その場に座り込むシャーユ。その顔は真っ青になっていた。





 一方の王達は、驚いた表情で固まっていた。王国を蹂躙し、破壊の限りを尽くした魔王、それを勇者が討伐する……その目論見が崩れたからである。


「お、王様!あれを!」


「ん?」


 ふと空を見ると、二人の女……おそらく魔王が空を飛び上がり……一瞬で消え去った。



「ま、魔王を追い払ったと言うのか?それでは、勇者は……。」







 がっかりした様子の王。しかし……次の瞬間。王は立ち上がり、騎士達に命令を出す。




「お前達!あそこで戦っていた者達について調べるのだ!そして奴らを我らの物にする!行け!」


「「「は、はい!」」」


 慌てた様子で走り出す騎士達。勇者の力は示せなかった。その代わり……魔王と戦えるレベルの冒険者が街に居る事実を手に入れた王は、ニヤリと笑っていた。



「あの者たちは何者なのか。後で報告を聞くとしよう。……どうしたのだシャーユ。顔色が悪いようだが?」


「いや……何でもない。」




 シャーユは真っ白になった顔で王に答えていた。

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