帰還の日、次に向かって
「すう……すう……。」
「うにゃぁぁぁぁ……。」
「ぐー、ぐー。」
「わん!わん!」
「かめー!かめー!」
「ひゃっ!?何、何!?」
「レル!起こしてくれたんだね!」
パーティーが終わってからさらに数日後。朝になって、レルとタルトの声が部屋に響き渡る。驚いたミーさんがガバっと起き上がり、僕も体を起こした。
「わん!わん!」
「ありがとう、じゃあ早速ご飯にしよう!ロットンさんを呼んでくるね!」
「わん!」
僕は部屋を出てロットンさんに挨拶に行く。隣の部屋をノックすると、すぐにロットンさんが出て来てくれたよ!
「おはよう諸君!昨日は良く眠れたかな?」
「はい!バッチリです!」
「ならラルフの奴はどうだ?アイツは朝なかなか起きれないんだよ。」
「はい。ラルフさんはまだお休み中です。」
「ま、今日は早いからな。仕方ないか。」
僕達は今日、いつもよりも早く起きたんだ。その理由は街の入り口にある門にあった。僕達は早めに食事を済ませて、門に向かう事になってるんだ。
「かめー!かめー!」
「痛い!タルト叩かないでくれよー!俺はまだ寝たいんだよー!」
「かめー!」
ラルフさんも早起き出来た、そのタイミングでロットンさんが料理を持ってきた!
「全員起きたな!じゃあさっさと食っちまおうか!頂きます!」
「「頂きます!」」
「い、頂きます。」
今日のご飯はサンドイッチ!僕達は近くにある物をとって口に入れる。さあ、早く食べて準備をしちゃおう!
「……来たか。」
「ああ!ちゃんと来たぜ!」
門の前にはフェイクさんと街の職員さんが待機していた。職員さんが門を操作している間、フェイクさんとロットンさんが話を始めた。
「ロットン、今回は本当に感謝しているよ。貴方達が居なければ、この街がどうなっていたか……。」
「そんな気にすんなって!俺達は元々別の依頼で来ていて、たまたま巻き込まれただけだから!きっと俺達が居なくても、お前なら上手く解決できたと思うぜ?」
「それならいいのだが……。」
フェイクさんは帽子を取り、顔をこっちに向ける。やっぱりかっこいいなぁ。
「こっちも感謝してるぜ!今回の報酬、相当色をつけてもらったからな。」
「まだ足りないくらいだ。何か必要ならすぐに用意するから、気軽に連絡をしてくれて構わないさ。」
この二人、役場の調査をしてから急に距離が縮んだんだ。男の友情だね!
「そうだ!ラルフ、ミー、ティム。君達は配信者だろう?機材や装備を整える資金はちゃんとあるのか?」
「ミーは平気だよ!配信で収入があるし、冒険者としてクエストもこなしてるからね!」
「僕は……ちょっと足りないですね。でも、今回の報酬で余裕が出来ました!」
「俺もちょっと足りないかな?」
「そうか……。」
フェイクさんは頷きながら何かを考えている。そして数分後。手をポンと叩いて僕達の所へ!
「ならば、いい報酬があるぞ!聞いてもらえるだろうか?」
「いい報酬?」
「そうだ。もし良ければ……。」
「この私が、君達のスポンサーになる、というのはどうだろう?」
「「「え?」」」
少しの沈黙。それを破ったのはラルフさんだった。
「ま、マジか!俺まだ未熟だからそんなの受けられないよ!」
「気にするな。これは感謝の気持ちだ。それに今、君達三人はちょっとした有名人になっているはず。トロール退治も、フォージャーの事も配信しただろう?
だから君達に我らの名産品を宣伝してもらった方が、こちらにも利益が出るのさ。」
「そうなの?ミーは別にいいよ!質の良い装備とか、家具とかも使えるって事だよね?」
「ああ。ちゃんと報酬も出すが、どうだろうか?」
「「やります!」」
僕とラルフさんは同時に返事をしていた。やっぱり良い装備は欲しいし、普段の生活にも使える物なら無理なく配信できる!今度やってみようかな?
「では決まりだな。後はラルフ用に大砲を手配すれば完了だ。これで報酬関連の話は終わったか。」
「だな。では……そろそろだな。」
僕達は開いた門を抜けて、一歩前に。カーノンの街を離れる時が来たんだ……。
ロットンさんが真面目な顔をしてる。最後はきれいにまとめるつもりだね。
「では……今回の依頼が終わったので、私達は帰ります。お世話になりました!」
「「「お世話になりました!!!」」」
僕達も同時にお辞儀をする。するとフェイクさんは街の職員さん達と横一列に並んで、敬礼をしてくれた!
「今回の活躍に感謝を込めて!今後の貴方達の活躍を祈って!皆の者、敬礼!」
「「「「ハッ!」」」」
「じゃあな!また来るぜ!」
「待ってるぞ、ロットン!」
二人は声を掛け合い、それを聞いた僕達は外に歩き出した。
「いやー!今回は色々あったけど、何とかなったな!」
「本当だよな。最初は俺の昇格試験の筈だったのに、どんどん話が大きくなるんだから。」
「でも、これならラルフは昇格確定でしょ!」
「ま、そうだと良いがな。結果は後で出るから、楽しみにしとけよ!」
ウギャァァァ。
「……わん!わん!」
「あっ、見て下さい!あれ!」
レルが聞こえた声に反応した!そっちを皆で見てみると、草むらの中に隠れていた物がこちらに向かって来る。……ロストガルーダの親子だ!
「ウギャァァァ。ウギャァァァ!」
「うぴゃぁぁぁ!うぴゃぁぁぁ!」
「ぴぃぃぃぃぃ!ぴぃぃぃぃぃ!」
「……ティム君、何て言ってるのか分かるか?」
「ええっと、卵を助けてくれてありがとうって言ってますよ!」
「本当にごめんなさい……。」
ミーさんは顔を伏せるけど、ロットンさんがポンと肩を叩いた。
「まあまあ、無事に解決できたんだから良かったじゃねえか!次は気をつけろよ!」
「わん!」
「じゃあ、俺達は行くからな!お前達も気をつけろよ!」
「ウギャァァァ!」
ロストガルーダは森に帰っていった。これで一件落着、だね!
「さあ、俺達も帰るぞ!ひとっ走り行こうじゃねぇか!」
「あ、馬鹿急にスピード上げるなよ!」
「かめ!」
「追いかけっこ?いいよ、ミーも負けないよ!」
「僕達も負けないぞ!レル!」
「わん!」
さあ、競争だ!皆に負けないよう、僕は力を込めて走り出した!




