閑話 少女テイマー、過去を想う
あーしの名前はサリア。テイマーをやってるっす。今は友達の返事を待っているところ。その友達は最近、自分の所属するパーティーから追い出されたみたいで、ソロの冒険者になった。だから最近、その友達の所へすっ飛んで行って、配信のお仕事を紹介したんすよね。
「サリア!お前宛に手紙が来てるぞ!送り主は……ほう、ティムじゃないか!」
「おお!遂に来たっすか!」
あーしはパートナーから手紙を貰い、中を見る。するとそこには、あーしの欲しい言葉が書いてあった。
[ティムです。お手紙書いたので、送らせて頂きました。僕は今、お家を見つけてそこに住んでいます。教えてもらった配信のお仕事、やってみたいから連絡しました。場所は……ほら、最近会った草原あるでしょ?そこからしばらく歩くと村があって、そこに居るんだ!大まかな場所は地図にしたから、直接来てくれると嬉しいなー!お返事待ってます。]
「はは……相変わらず丁寧っすね……。」
「返事はどうだった?やはりハイシン、興味があるのか?」
「ええ。やりたいって言ってるっす。早速準備するっすよ!」
そしてあーし達は二人で機材の用意を始める。ついでに部屋の整理をしながら、昔の事を考えていた。
「あれからもう二年……ホントに早いっすね……。」
◇◇◇
二年前。スキル鑑定の儀が終わって、私に現れたスキルは[テイマー]だった。それを聞いて……私は絶望していた。テイマーのスキルは世間ではゴミ扱い。何でかは分からなかったけど、おそらく敵対している魔物と一緒に戦うのがいけないんだろう。
「お前はこの家から出て行ってもらう。」
「な、何でよ父さん!スキルは駄目でも、私はきっと家の役に立てるわ!」
「黙れ!貴様が居ると、我らの評判が落ちるではないか!よりにもよってゴミスキルなどと……!」
「でも!私は」
「うるさいゴミだ!衛兵!コイツをつまみ出せ!」
「ハッ!」
私は父から家を追い出された。テイマーだからという理由で。何で、どうしてよ!?私が何かしたっていうの!?スキルは才能の一端、努力すればきっと役に立てるはずなのに!
「父さん、父さん!助けてよ!私、頑張るから!皆の役に立てるようにするから!」
泣きながら父の顔を見る。最後に映ったその顔は、まるでゴミを見るような、うんざりとした顔だった。
「これから、どうすればいいのよ……。」
私は外に放り出され、今は泣きながら草原に座っている。こんなスキル、私はいらなかった。これ以外なら、どんなスキルでも……何でもよかったのよ……。
「あ、あのー。」
「……アンタは。」
私に声をかけてきたのは、一人の女の子……いや、男か。私と同じテイマーのスキルを得た子だった。
「スキル鑑定の儀で、僕以外にもテイマーがいるって知って。それで、お話に来たんです。」
「何よ……傷の舐め合いでもしようっての?」
「いえ……そういう訳では。ただ、僕達は同じテイマーのスキル持ちです。だから、一緒にすごいテイマーを目指しませんか?」
「……ケンカを売りに来たの?」
「えっ?」
私はその子に掴みかかった。悪いとは思ったけど、今の私にはその衝動は抑えられなかった。
「アンタはいいわよね!自分がゴミでも弟君は剣聖サマ!誰からも愛されるスキルよ!いざと言う時は弟に頼ればいい!でも私は違う!私は家を追い出された!もう行く宛なんて無いのよ……。」
「ご、ごめんなさい……。」
「……こちらこそごめんなさい。悪かったわね、いきなり手を出して。」
私は彼を地面に降ろす。すると彼は、独り言のように言葉を話し始めた。
「……僕は父上に言われたんです。お前には私達に無い才能がある、それを活かせるように頑張るんだ、って。だから僕は、その力が欲しいんです。」
「……。」
「僕は近いうちに家を出るつもりです。テイマーの力を使えば、きっと誰かの役に立てる。その為に勉強したいんです。」
何だろう。この子は前を見てる。スキルがゴミとか、泣き言を言わずに、ずっと前を。この子を見てると……だんだん腹が立ってきた。私を追い出した家に、ゴミだと罵った奴らに!何より、ゴミだからと安直に泣いているだけの、自分自身に!!
「……アンタ、名前は?」
「僕ですか?ティムって言います。貴方は?」
「サリアよ。……あー!こんな所で座ってなんかいられなくなったわ!アンタのせいで!」
男の子……ティムは不思議そうな顔をしていた。
「えっ?」
「アンタはテイマーで誰かの役に立ちたいのよね?だったら私もテイマーを極めてやるわ!私をバカにした奴らに見せつけてやるのよ!」
「よかった!元気が出たんですね!」
「そうよ!早速テイマーについて、色々試してみるわ!一流の力を身に着けて、私の力を証明してやる!」
「じゃあ、僕は旅の用意があるので、ここで失礼します。サリアさん!同じテイマー同士、頑張りましょう!」
「ええ!」
泣き言なんか言ってる暇はない。テイマーとして腕を上げて、奴らをギャフンと言わせてやるわ!私はそんな気持ちで腰を上げた。……まずはその為に、新しい私になる!心機一転でテイマーとしての生活を始めるのよ!
◇◇◇
それからはあっという間っす。パートナーになる魔物、ギルと出会って、あーしは冒険者になった。今でも周りの偏見はあるけど、冒険者として何とかやれてるっす。
「どうしたサリア?手が止まってるぞ?」
「あー!そんな事言って、ギルが遅いのを誤魔化さないで欲しいっすね!」
「何だと!?なら全部我がやってやる!そうすればお前が動いてないのが証明出来るからな!」
「言ったっすね!あーしの方が早いっすよ!」
それからはギルと競うように機材を揃えていく。ティムはあーしよりも凄いテイマーっす。それを外に伝えられれば、勇者パーティーの奴らに目に物見せる事が出来る!
今、ティムはパーティーを追放されて困ってるはずっす。あの時声をかけてくれたように……今度はあーしがティムを助けるっすよ!二人で目指せ、最強テイマーっす!
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