二人の勘違い、本当の黒幕は……
「早く出て来るんだ!これ以上無駄な抵抗はやめろ!」
「さて、どうするかな!」
ロットンは腕を地面に叩きつけるとそこからヒビが入り、フェイクの足元に迫る。
「こ、これは!?」
そして彼の真下でヒビが大きく広がり、片足が地面に嵌ってしまった。
「よし行くぞ!」
ロットンは土の壁を持ち上げ、フェイクのいる場所に走り込む。フェイクはガトリング砲を撃つが、足をとられて狙いが定まらない。
「オラァァァ!」
「ぐっ!?」
土の壁を思いっ切りぶつけるロットン。フェイクは吹き飛ばされるが、空中で回転して地面へ着地する。
「ならばこれならどうだ!」
フェイクが壁を叩くと、ゴロンと武器が落ちて来る。今度は太い砲身を持ったバズーカである。
「そこら中に武器を仕込んでんのか!」
「万が一への備えだ!お前の様な奴の為にな!」
ロットンに向けて引き金を引くフェイク、その砲身からは巨大な弾丸が飛び出し、ロットンに直撃する。
「これでどうだ……?」
「残念だったな!」
「な、何!?」
爆風の中、フェイク目がけて突進するロットン。フェイクはバズーカを放り投げ、腰の剣を抜く。
「はぁぁぁぁ!」
「負けるかよ!オラァァァ!」
土を腕に纏わせ、剣とぶつかり合うロットン。対するフェイクもロットンの打撃に対応し、お互いで激しく攻撃していた。
「くっ!」
「チッ!」
何度か攻撃した後、二人は一度飛び退き呼吸を整える。お互いにダメージが溜まっている様だった。
「ハァ、ハァ……そろそろ諦めたらどうだ?アンタが黒幕って事は分かってるんだ。証拠を出した方がいいぞ?」
「そ、それはこちらのセリフだ。街の為にも、お前をここで逃がす訳にはいかない!」
「……何言ってるんだ?まあいい、とにかくお前がロストガルーダの卵を欲しがってるのも分かってるんだ。誰が依頼したのかはっきりさせてもらわねぇとな。」
「何だと!?人さらい達を引き連れて来たのはお前ではないか!」
「……は?」
ロットンは首を傾げる。どうやら話が噛み合ってない様だ。
「今回の依頼を利用したのだろう?人さらい達にロストガルーダの卵を狙わせ、自分は子ども達を連れた無害な職員を装う。初めから怪しいと踏んでいたんだ。」
「な、何の事だ?」
「とぼけるな!お前達が来てから、大量の人さらいが街に溢れた!私が他の職員に指示を出せなければ、街が潰れていたかもしれない。」
「ま、待て待て!それはお前だろう!?」
ロットンは慌ててフェイクの言葉を止める。
「報告を受けた時に確信したんだ。このトロールの事件、これはロストガルーダが関わっている。そしてお前の連れて来た人さらい達もな。」
「だから!どういう事だよ!」
「最近この街の近くで人さらい達が活動しているのが分かったんだ。ロストガルーダの卵は高く売れる、おそらくそれを手に入れる為に動いていたのだろう。」
「…………?」
「いくら尋問しても、黒幕の名前は出て来なかった。当たり前だ、すぐ側に居たのだからな。口にすればたちまち消されるだろう。」
「いや、話を……。」
フェイクは再び銃を向けて、ロットンの方へ向き直る。
「だが、証拠が足りなかった。だから敢えてお前を煽り、どう動くかを見定める事にしたんだ。……そして予想通りお前はここに来た。探りを入れる私を消す為にな。」
「発想が飛躍し過ぎだろ!?……いや、俺も人の事は言えねぇか……。」
「何より……。」
フェイクから飛び出したのは……ロットンの考えを壊すような言葉だった。
「お前の方からフォージャーに頼んだらしいじゃないか。案内役として来て欲しいと。さっきも言ったが門を手薄にしたいのなら、門番を使えば良いのだからな。」
「…………は?」
「外から人さらい達が来るのを見越していたのだろう?おまけに街の中にも隠れていた様だ。代わりの人員は置いていたが、フォージャーは優秀だ。奴が居なければ侵入も容易になるだろう。」
「…………ちょっと待て。俺がフォージャーさんに頼んだって?フォージャーさんはリーダーに頼まれたって言ってたぞ?」
「…………何?」
「そういや、ミー達の居た病院の奴らは、フォージャーさんが一人残らず仕留めたんだよな……。フェイク、アンタはどうして奴らを皆殺しにしたんだ?」
「……フォージャーの提案だ。ここで一網打尽にするべきだと。逃げた奴が居ると、増援を呼ばれて街の人達が危ない。その提案に私が同意したんだ。」
「……フォージャーさんって、牢のカギは開けられるか?」
「……不可能ではない。フォージャーは尋問も行うから、その権限は持っている。」
二人は一瞬固まり、それからしばらく黙り込む。そして同時に一言発した。
「「まさか…………。」」
その時、自分達の居る廊下とは別の場所で轟音が響く。それを聞いた二人は同時に走り出す。
「まさか……こんな事に気づかねぇとは!」
「急ぐぞ!何か……危険が迫っている!」
走り出す二人。その先には……。
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