少年テイマー、家を借りる
それから更に数日後。ラルフさんは足の怪我を治すため、しばらく村に滞在していた。でも、怪我をしながら魔物を探せていたんだから、戦士って凄いんだな……。僕ももっと体を鍛えないと。
「……うん。行けるな。これなら問題無しだ。」
「かめー。」
「タルトも心配してくれるのか?優しいなー!」
「かめ!」
ラルフさんはサンドタートルに、タルトと言う名前をつけた。タルトは足をペタペタと触り、心配しているようだった。
「おはようございます!ラルフさん!」
「おはよう、ティム君!君のおかげでほら、足の怪我も良くなったよ!」
「ありがとうございます。それでは……。」
「ああ、そろそろ俺は帰ろうと思う。」
ラルフさんは自分の街に帰るため、準備を進めていた。彼の寝ていたベッドの側には、武具や食料の入ったカバンが置かれていた。
「何だか寂しくなりますね……。」
「そう言うなよ。リースちゃんから定期的に依頼を受けてるから、また来れるさ!」
「僕もそろそろ旅の準備をしないと。いつまでも迷惑をかけるわけにはいかないですし。」
「あー。その事なんだけどな。」
ラルフさんは僕の手を取って、一階のキッチンへと向かう。
「リースちゃん、君に言いたい事があるらしい。一度聞いてみたらどうだ?」
「言いたい事ですか?なんだろう?」
「お二人共、席に着きましたね。まずはこちら、リンゴのジュースになります。」
「「頂きます!」」
僕達はリースさんからジュースを貰い、それをぐっと飲み干す。すると彼女も椅子に座り、真剣な表情で話し始めた。
「ティムさん、貴方にお願いがあります。」
「は、はい!何ですか?」
「ティムさんは、お家を探してませんか!?」
「はい、探してるところです。それで数日後にも街に行ってみようかと思ってます。」
「でしたら……ここに住みませんか?空き家があるので、こちらで良ければ是非!」
「本当ですか!?それなら住みたいです!……でも、どうしてですか?」
僕は気になって質問すると、リースさんはジュースを注ぎ、自分もグイッと飲みながら話を続ける。
「ティムさんに助けてもらったのに、私はまだお礼を出来てません。ちょっとお料理を作った位ではまだまだです!だから、家を探してるのでしたら、こちらでお世話させて下さい!」
ペコリと頭を下げるリースさん。これは願ってもない条件!僕の方こそお願いしなきゃ!
「こちらこそ、お願いします!ここでしばらくお世話になってもいいでしょうか?」
「はい!それでは後で案内するので、一緒に来てくださいね!」
彼女はそう言って、僕の手を握る。こんなに親切にしてくれるなんて、嬉しいな……。リースさんに迷惑かけないように、自分のお金は自分で稼げるようにしなきゃ!
「話は終わったかな?それじゃ、俺はそろそろ行くよ。二人共、世話になったな!」
「また来て下さいね、ラルフさん!」
「もちろんさ!それとティム君。」
「はい!」
「テイマーの事、色々教えてくれてありがとうな!俺の配信でテイマーについて触れるようにしてみるよ!頑張るから、君も頑張ってな!」
「よ、よろしくお願いします!」
そして話を終えたラルフさんは、自分の住む街へと帰って行く。その背中にはタルトがしがみついていた。
それから僕達は、リースさんの案内を受け、一つの空き家に来た。そう……ここが僕達の新しいお家なんだ!
「ティムさん、ここが貴方の住む家です!」
「ここが、僕達の家……!」
「わ……わん……!」
木で出来たお家は少し古くなってるけど、後で掃除すれば大丈夫だよね。僕はレルと一緒にぴょんぴょんと飛び跳ねていた。
「やったやったー!僕達のお家だー!」
「わふー!わふー!」
「喜んでもらえてよかったです。それでは、何かありましたら相談してくださいね!」
「ありがとうございます!」
リースさんと僕は改めて頭をペコリと下げ、それぞれの家に戻った。……よーし、まずは掃除だ!それからサリアに手紙も書かないと!僕も早く、配信をやってみたいな。そんな気分で箒を持ち、まずは部屋のホコリを掃除しに向かっていった。
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