少年テイマー、追放される
「ティム、お前はここから追放だ!」
「そ、そんな、何でよ!?僕は皆の役に立っているはずだよ!」
いつも立ち寄る料理店、僕は目の前の男性と言い争いをしていた。僕達は世界を救う、勇者パーティ、そのメンバー。そして目の前にいるのは、そのパーティーのリーダー。勇者シャーユ、その人だった。
「黙れ!貴様は不適格だ!勇者パーティでありながら、魔物がいないと戦えないじゃないか!」
「そ、そうだよ!僕はテイマーなんだ!魔物の皆がいるから戦えるんだ!」
僕は必死だった。自分が、そしてテイムした仲間がこのパーティーで頑張ってきたかを伝えたんだ。
「僕達は先頭に立って、敵がいないか確認してるよ!敵が来たらすぐに伝えて、できるだけ負担が減るようにやっつけてる!倒した後の戦利品だって、ちゃんと集めて渡してるじゃないか!シャーユもこの子に助けられた事が何度もあったはずだ!」
「わん!わん!」
僕が大声を張り上げると、足元で一匹の魔物がシャーユに吠える。この子は僕の仲間、ブレードウルフのレル。僕達はいつも一緒に戦ってきたんだ!
「当たり前の事を!そんな事は誰だって出来る。一人じゃ何も出来ないお前なんて必要無いんだよ!」
「それは分かってるよ……だから、どうしようも無い時は皆に相談してるよ!だけど全然話を聞いてくれないじゃないか!それに僕はテイムした魔物とも力を合わせて……」
「ねー。もうその辺でいいんじゃない?」
「だな。これ以上言っても無駄だ。さっさと追い出そう。」
そう言ってシャーユの後ろから出て来たのは、同じ勇者パーティの仲間。魔法使いのマーチと、武闘家のケビンだった。……どうしてよ!?レルの頑張りは二人も見てたじゃないか!
「まあな、だいたい俺は最初から気に入らなかったんだ。誇り高い勇者パーティに、滅ぼすべき魔物を使うテイマーがいるんだからな!」
「わうん!?」
「オラ!もっと泣けよクソ犬が!」
言い争いの途中、突然シャーユがレルを蹴り上げた。それを見て、僕はレルの前に立って、シャーユを睨みつける。
「どうして!?なんでレルを蹴るんだ!」
「役立たずの犬だからだよ!お前達はいらないんだよ!さっさと消えろ!」
「うっ……!」
僕の視界が一瞬歪む。何が起きたのか考えていると、シャーユの足元が目の前に見えた。すると頭に強い衝撃が来る。……頭を踏まれてる!?そんな……。
「私も私も!勇者パーティに魔物なんていらないのよ!それを使うゴミテイマーもね!」
「俺もやろう。魔物は汚い物だからな。徹底的に教えてやらないと!」
そして、僕は三人から暴力を受けた。殴る、蹴る。壁にも叩きつけられた。レルにもその暴力が向かったけど、覆いかぶさって必死に防御した。僕は酷い目にあっても良いけど、レルは大切な友達なんだ!
それからどれだけ時間が経ったのだろう。いや、ほんの数分かな……。僕は地面に転がされていた。
「うっ、うう……。」
「ケッ。泣き出しやがったぜ、コイツ!」
「男なのに情けない。いや、見た目は男と言うより……。」
「もういいわよ。こんな奴ほっといて、行きましょ行きましょ。」
三人はそう言って料理店から出て行く。でも出口に立った時、シャーユは口を開いた。
「お前のパーティー登録は抹消してある。王も了解済みだ!金輪際俺達に関わるなよ!ハハハ!」
「そうよ!二度と近づくんじゃないわよ!」
「じゃあな。ゴミテイマー君。」
三人が料理店から出ていった後、僕達もふらふらとした足どりで料理店を出る。足元にはレルが寄り添い、そっと支えてくれた。
「見てよあのカッコ。噂のゴミテイマーよ。」
「さっさと消えればいいのに。魔物と友達なんて、気味が悪い。」
僕が勇者パーティを追放されたのは、街の人はもう知ってるみたい。……もうここには、居られないのかな……?
「わ、わん!わん!」
「なんだこの魔物!汚いな!衛兵を呼べ!」
「殺せ殺せ!魔物は敵だ!」
「わ、わん!?」
石やゴミを投げつけられ、ぶつけられたレルは足を切ってしまった。何でよ!?僕達、皆の役に立てるよう、頑張ってきたのに!
「わ、わうーん!?」
「あっ、レル!?」
レルが鳴き声を上げながら、街の外へ走って行く。僕も慌てて追いかけた。その後ろからレルを馬鹿にする声が聞こえたけど、そんなのどうでもいい!レルは大切な友達なんだ!
◇◇◇
「ごめんね、レル……。僕のせいで、パーティー、追放されちゃったよ……。」
「わー?わん!」
ここは街を離れた森の中。レルの足に包帯を巻きながら、ここで一夜を過ごすことにした。森には魔物がたくさんいるけど、今の僕には魔物よりも人間の方がずっと怖い……!体を震わせていると、レルがそっと僕の横に来た。
「わーん?」
「レル……ごめんね……。」
レルの体、ふわふわで暖かいな。……そんな事を思ってたら、いつの間にか僕達は寝てしまっていた。




