表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
チート勇者ろうらく作戦  作者: 脆い一人
第三章:静寂の勇者ろうらく作戦
80/376

ヴァリネスのモテ講座(後半)

 「とにかく!モテたいなら、その実力や権力で相手の認められるところを褒めたり、自分に足らない部分を相手に頼ったりした方がモテるわね」

「そ・・・そういうもんか?」

「男もそうでしょう?実力のある人物に褒められたり、必要とされたりすると嬉しいでしょ?そういうのって、男女関係なく嬉しいものよ」

「なるほどなぁ・・・実力者や権力者がモテるのって、そういう部分も有るからなのか・・・・」


 ヴァリネスの授業内容に納得はするものの、オーマは不安を抱いていた。

サレンに対しては、軍事関連の話題は出しづらいのに、軍人一筋で生きてきたオーマが、サレンの何を認めて褒めたら好感を持ってもらえるのだろうか?

必要としたり、頼ったりというのも、ぶっちゃけサレンを必要としている一番の理由は、サレンの戦闘力なのだ。

今のヴァリネスの話をどう自分とサレンに当てはめれば良いかが、オーマには分からないでいた。


「でも、その話、俺がサレンに対してどう応用すれば良いんだ?」

「団長は、教養だってそれなりに有るでしょう?一応、軍学校の筆記試験の成績だって主席だったし、外の世界を見て回った経験だってあるでしょう?サレンは内向的な性格だけど、外の世界には興味があるのよ。団長のその知識と経験でサレンを励ましてあげたら、きっと自信が付いて好感を持ってくれるわ。女は自分に自信を持たせてくれる男は好きよ」

「でも、昨日は失敗したぞ?」

「内容の選び方を、でしょ?外の世界の話をすること自体は良い事よ。外の世界の何について話すかが大事よ。私と話している時は、その話題で盛り上がっていたでしょ?外の話題を振って、あの子の考え方や価値観を知って、それを認めたり、アドバイスしたりして、あの子に自信を持たせるのよ」

「り、了解であります」


オーマはせっせとヴァリネスの授業内容をメモしている。


「そんで、後、“俺が彼女を育ててやろう”ってスタンスはダメよ」

「うそぉ!?ダメなのか!?・・・だって、ジェネリーとレインの時はそれで上手く行ったのに・・・」


ジェネリーとレインの時には、まさにそのスタンスで接していた為、オーマは驚かずにはいられなかった。


「それは二人が望んでいたからよ。二人とも伸び悩んでいた時期で、自分を育ててくれる人を探していたから、そのスタンスが合っただけ。運が良かっただけよ。基本的には、望んでいないアドバイスなんて余計なお世話よ。特に年上から言われると、説教臭くなって、より鬱陶しいわ」

「ちょ、ちょっと待ってくれ。サレンに自信を持たせるためにアドバイスした方が良いのに、アドバイスが余計なお世話って、どういうことだ?」

「“望んでいないアドバイス”って言ったでしょ?説教臭くならないようにアドバイスする方法は有るわ。大事なのは共感。年上ならこれに加えて、相手のペースやルールを尊重する包容力よ」

「・・・ど、どういうことでしょう?」


経験の乏しいオーマには、ヴァリネスの言っている事のニュアンスが分からなかった。


「軍の上官みたいに、上から指図するなってことよ」

「“ああしろ!こうしろ!”って感じじゃなく、“こうした方が良い”・・・みたいな?」

「年上の男が、若い女の子にするなら、もっと目線を合わせて、寄り添った方が良いかもね。“もしこうしたら上手く行くんじゃないか?”とか、“もし自分だったら、こうしてみるよ”とか」

「・・・・文法が仮定法になっただけじゃないか?」


オーマには、自分の言い方と、ヴァリネスの言い方の違いが良く分からない。

文法が変わっただけで、大きな違いがあるようには思えなかった。


「それが大事なのよ。どの国の言語だって、相手を気遣ったり、敬ったりする場合は仮定法を使うでしょ?“もし~して頂けたら幸いです”とか、“もし可能でしたら、~した方がよろしいかと思います”とか。直接的な言い方を避けるのは、どの国のどの種族でも同じよ。言い切ったり断言したりすると、自信があるように見える反面、冷たく威圧的に感じたりもするのよ。特に年が離れていると余計にね」

「な、なるほど・・・言われてみると、そんな気がする・・・」


ヴァリネスに言われて、オーマは納得する。

それとは別で、心の中で、“意外と言葉遣いに気を使っていたんだな、コイツ”と、ヴァリネスの意外な気遣いに感心して驚いていた。


「本当は両方使い分けて、自信と優しさの両方を見せられたら良いんだけど、今の団長に、サレンとのコミュニケーションでそこまでは求めないわ。先ずはファーストステップとして、仮定法を使った優しい言葉を女の子に使えるようになりなさい」

「わ・・わかった」


オーマはしっかりと、メモに書き下ろした。


「よーし。じゃー、ここまでの内容を、復唱してみなさい」

「分かった。えーと・・・興味ない話題でも、興味があるように見せて話題を広げる。年上で経験が豊富な点は、説教や自慢ではなく、褒めたり自信を持たせたりするために使う。相手の意見や価値観に共感する。相手のやり方を尊重する包容力を持つ。・・・えーと、それから、自分の意見やアドバイスは直接的に言わず、遠回しに優しく言う・・・こんなところか?」

「あ、言い忘れた。後、あまり物事や女性の言動に執着しない事」

「・・・どういうことでしょう?」


ヴァリネスから、再び経験の乏しいオーマには理解できないアドバイスが飛んできた。


「女の子に変な誤解されたり、ちょっと不機嫌な態度を取られたりしても気にするなってこと。その場で誤解を解こうとか、機嫌を直そうとか思って、しつこく付き纏うと余計に嫌われるわ」

「そういうもんか?」

「恋人とか気になる相手になら、構ってほしいと思う女も居るでしょうけど、まだ親しくない場合にはしつこくしない方が良いわよ。絶対拒絶されるから。覚えておきなさい」

「り・・・了解であります・・・」


オーマはまたメモを取ると、ブツブツと復唱して頭に叩き込んだ。


「よし。じゃー、もう一回シミュレーションしてみましょう。今度はクシナとやってみなさい。固い話題にならないようにね」

「了解だ!」

「クシナも、サレンを想定しているのだから、固い話に話題が逸れないように」

「は、はい!了解です!」


 ヴァリネスの指示で、オーマとクシナはテーブルを挟んで椅子に座る。

 そして再び、女の子との会話のシミュレーションが開始された。

オーマは自分が会話をリードするべく、慣れないながらも必死に頭を働かせて、話題を振った。


「クシナ。ゴレストに来てみてどうだ?居心地は?」

「夏になって、熱くなってきましたが、ここは帝国より涼しくて良いですね。過ごしやすいです。団長はどうですか?」

「そうだな・・・オンデンラルの森は深く、木も大きいから警戒するときは木の上も____」

「ッ!」


ヴァリネスの視線がオーマに刺さり、オーマは慌てて話題を切り替える。


「____あ、いや、森が深くて空気が美味いな。確かに、涼しくて過ごしやすい。けど正直言って、ベルヘラの方が居心地よかったかな」

「確かに、ベルヘラも良いですよね。ベルヘラは、今の時期だったら海水浴のシーズンですね」

「海水浴かぁ・・良いな。泳いでみたい。海では泳いだ事無いんだよ、俺」

「私も無いです」

「そうか。なら一緒に泳ぎに行かないか?」

「ええ!?泳ぎに、ですか?・・・で、でも私、水着を着て人前に肌を晒すのはちょっと・・・」

「___む!」


 クシナのその一言を聞いて、オーマの瞳がキュピーンと光かった。

今こそ、ヴァリネスの教えを実践するタイミングだと判断したのだ。


(経験豊富!___褒める!___必要とされる!___上から目線はダメ!___自信を付けさせる!____包容力!____行くぞ!)


頭の中で、ヴァリネスに教わったことをグルグルと復唱して、オーマは言葉を選ぶ。

そしてオーマは、ヴァリネスに教えられた通り、満を持して“若い女の子にモテる年上男性”を実践した___。


「いや、大丈夫だよクシナ。俺は経験豊富で色んな女を見てきたが、クシナはお尻が大きいから自信を持って良い。もし良かったら、Tバックを選ぶと良い。きっと良く似合と思うよ?」

「は?・・・・・」


「「・・・・・・・・・」」


___________時が止まった。


「・・・・・・・・あれ?」

「あれ?・・じゃねーーーーーー!!!!」


ヴァリネスの今日一のアッパーカットが、オーマの顎に直撃した。


「この超大馬鹿者ぉ!!誰がセクハラしろって言ったぁ!?ああぁん!?」

「ぞ、ぞんだづぼびじゃばびばぜんでじだ・・・・」

「団長ぉ・・・・」

「な・・・なんか最初より酷くなりましたね」

「ドン引き・・・」


さすがに、ヴァリネスとウェイフィーだけじゃなく、クシナとロジも、オーマの今の発言は弁護のしようがなかった・・・。


「このバカ!!バカぁ!!なんでモテるための教えを実践して、キモくなれんのよぉ!?ワザとやってんのぉ!?」

「ご・・・ごべんだざい・・・」


なおもボコボコに蹴り飛ばされながら、ヴァリネスの説教が続いた___。



 その後も、ヴァリネスのアッパーカットを喰らいながらの地獄の特訓(ほぼオーマの自業自得)が続くのだった____。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ