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チート勇者ろうらく作戦  作者: 脆い一人
第三章:静寂の勇者ろうらく作戦
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ろうらく作戦会議:サレン編(3)

 あれから暫くしても良い案は出ず、少し空気がピリピリとし始めた。

そしてストレスが限界になったのか、ヴァリネスがずっと正座をして黙っているオーマに、半分八つ当たり気味に話を振った。


「ちょっと団長!」

「はい!?」

「団長は何かないの!?黙ってないで、何か意見出しなさい!」

「ふ、副長・・・それでは、八つ当たりではないですか・・・」

「だってぇ!元々は団長とサレンの仲を取り持つ会議なのよ!?なのに、ずっと非協力的なんだもん!」

「というか、今日、ずっと黙ってる」

「まあ、確かに。こうも根が詰まってくると、“何か言えよ”とは思うな。俺も副長に賛成」

「そうだな・・団長にも参加してもらいたい」

「そんな・・・イワナミさんまで・・落ち着きましょうよ」


会議が進まないせいか、フランだけじゃなく、普段抑え役のイワナミも副長側に付いてオーマを責める。

オーマをフォローするのはクシナとロジだけだった。


「いくら団長でも、いきなりそんなことを言われても困りますよね?団長」

「____タルトゥニドゥ」


「「は?」」


オーマが、ぼそりと言った一言に、皆の注目が集まった。


「ドネレイム帝国、アマノニダイ、ゴレスト神国、オンデールの交流の一環として、共働でタルトゥニドゥのドワーフ遺跡の発掘事業をするんだ。四か国とも、自国の利益のためにタルトゥニドゥのドワーフの遺産には興味があるだろう。タルトゥニドゥに詳しくても、探索する武力の無いゴレストとオンデール。タルトゥニドゥを探索する武力を持っていても、土地に詳しくない帝国とアマノニダイ。利害は一致する」

「で、ですが、いきなりそんな大事業を四か国で着手するなんて___」

「直ぐにはできないだろうな。だから、試験的に俺達とデティット、アラド、サレンを加えた小隊で探索すると提案するんだ。そうすれば、俺達が公でサレン達と一緒に居てもおかしくない大義名分になる」

「なるほど・・・それで団長。その案は、実現できるとお考えですか?」

「高確率で実現できる。タルトゥニドゥの宝を手に入れて、サレンの力を解明できるチャンスなんだ、カスミは食いつくだろう。カスミがその気になって、ナナリーのネタでゴレスト側の意見調整ができれば、莫大な予算を投資する発掘調査は無理でも、精鋭小隊での探索許可ぐらいは下りるだろう。俺達の計画ではそれで十分だ」

「サレンさん・・遺跡探索はどうなのでしょう?それも抵抗があるのでしょうか?」

「いや、既に一回タルトゥニドゥの探索に出て、戦闘行為も行ったとアラドから聞いた」

「はあ・・・・・」

「なるほど・・・・・」


「「・・・・・」」


一同は、オーマの出した案が良案だと思って、感心している様子だった。

だが、それ以外の腑に落ちないような感情も滲み出ていて、それがオーマには気になった。


「・・・どうした?」

「いや・・・なんか、いきなり話を振られたわりには、良い意見だなと・・・・」

「そうそう。こっちの質問にも直ぐに答えるし、話し方も流暢だったし」

「団長・・・もしかして、既に考えてた?」

「ああ、まあな。元々はカスミの能力を暴くために、サレンに魔法を使ってもらう機会を作ろうと思っていたんだ。それに今日の失態も加わって、オンデールの砦から帰る道中でこの案を考えた。タルトゥニドゥへ一緒に探索に出られれば、俺の得意な分野の話題でサレンと交流できると思ってな」

「なるほど。そうでしたか」

「すごいです!さすが団長!」


オーマの話を聞いて、クシナとロジは納得して感心した様子だった。


「・・・・・」


だが、ヴァリネスは、オーマの話を聞いて真顔になっている。


「・・・・・」


だが、フランは、オーマの話を聞いて真顔になっている。


「・・・・・」


だが、イワナミは、オーマの話を聞いて真顔になっている。


「・・・・・」


だが、ウェイフィーは、オーマの話を聞いて真顔になっている。


「・・・・・」


だが、ナナリーは、オーマの話を聞いて真顔になっている。

みんなの真顔が怖くて、オーマは怯えた様に質問した。


「・・・・・ど、どうした?みんな?」


____メンバーの怒りが弾け飛んだ。


「「「なら、最初から言えやーーーー!!」」」


「はぐうぅ!?」


ヴァリネスのアッパーカットがオーマの顎に入って、オーマは正座の態勢から一回転して床に沈んだ。


「意見があったんなら、直ぐに言いなさいよ!!」

「何で、ずっと黙ってたんだよ!!」

「言う機会はいくらでもありましたよね!?」

「時間の無駄」

「はあ・・・団長・・・さすがに・・・」

「す・・すいません・・・」


会議が進まないでいたのに、ずっと黙っていたオーマに皆の(特にヴァリネスの)非難が飛んだ。

 オーマがヴァリネスに怒られた場合、いつも事態を収拾する役目はクシナ、ロジ、イワナミの誰かだ。

そして、今回はクシナとロジだった。


「ま、まあ、団長も今日は失敗して、申し訳ない気持ちを引きずって、意見が出しづらかったのでしょう。もう許してあげましょう」

「そ、そうですよ。一応、会議も進んで、方針も決まったわけじゃないですか」

「むう・・・ロジくんがそう言うなら・・・」

「まあ、いいけど・・・」

「我々も意見が出なかったし、それで苛立っていたのを団長にぶつけるのも筋違いだな」

「許す」

「同じくです」

「あ、ありがとう」


皆に許してもらって、感謝を述べるオーマの弱気な様子を見て、クシナは溜め息混じりに励ましの言葉を並べるのだった。


「もう・・団長。一回失敗したくらいで、萎縮しないでください。皆、口ではあれこれ言っていますが、団長の作戦能力と指揮能力という、指揮官としての力は頼りにしているのですから」

「ほ、本当か?」

「それはそうね」

「まあ、確かにな・・・」

「しっかりしてください団長」

「クシナ・・・ロジ・・・皆・・・こんな・・・こんな、少女ともまともに会話できなかった、俺なんかを必要としてくれるのか?」


「「「戦に関しては」」」


「・・・・・」


戦に関しては、と限定されているにも拘らず、オーマは感動して、頬に塩辛い水を垂らした。


「うぅ・・・」

「うわ!?泣いた!?」

「きもっ!」

「決して褒めたわけではないのだが・・・」

「アンタどんだけ落ち込んでいたんだよ!?」

「も~~!本当にしょうがないわねーー!サレンの事は、ちゃんと会話ができるように私が特訓してあげるから、いい加減立ち直りなさいよ!」

「副長・・・あ、ああ・・・分かった」


オーマはグシグシと涙を拭いて、立ち上がった。


「では、団長。よろしくお願いします」

「ああ・・・よし。じゃー、方針は決まった。当面の目標は、タルトゥニドゥ探索の実現だ。探索を実現させて、サレンと行動する名分を得て、サレンとの距離を縮める。そして、あわよくばタルトゥニドゥ探索でカスミとサレンの能力を暴く」


「「了解!」」


オーマが復活して、会議終盤でようやくサンダーラッツらしい空気になった。


「割り振りは?私と団長はサレンとの交流、及び特訓でしょうけど、他のメンバーは?」

「ナナリーは、ジェネリーとレインと共にカスミに付き添って、ゴレストの高官達の調略だ」

「はい。お任せを」

「クシナは調略するナナリーの代わりに、通信兵として連絡係だ」

「分かりました」

「イワナミとフランは、デティットとアラドと行動してくれ。二人も反乱軍の勢力を拡大する上で、人手が欲しいそうだ」

「了解です」

「お?デティットの姉さんに近づくチャンス」

「コラ、フラン!」

「空気読んで」

「まあまあ、いいじゃんか」

「そうだな。どうせ、すぐフラれるから良いだろう」

「んだぉ!?表出ろ!イワナミ!」

「はいはい、そこまで。まだ、団長の話が終わってないわよ」

「ロジとウェイフィーは俺達と一緒だ」

「分かりました!」

「了解」


復活したオーマの指示によって、あっという間に割り振りも決まった。


「ふむ・・・バシッと決まったじゃない、団長」

「やっぱり、団長が仕切らないと締まらないですよ」

「最初から、それでお願いします」

「そうだな。今回は本当にすまなかった」

「おーし。じゃー、会議も終わりだな?そうだろ?団長?」

「そうだな。今回はこれで解散だ」


オーマの会議終了合図を受けて、場の雰囲気が緩るむ。


「どうする?一杯やるか?」

「でも、もう店が閉まっているわ」

「チッ・・・これだから田舎の宗教国家は・・・」

「じゃー、ここでする?これから、ここは好きに使っていいって、デティットも言ってくれたし」

「でも酒やつまみは?」

「倉庫にお酒はありましたが、食べ物はなかったですよね?」

「あ!私、アラドから皆にお土産を貰って来たのよ!」

「お♪マジで?」

「何ですか?」

「フルーツの盛り合わせ!」

「・・・・酒には合わないのでは?」

「それに、ジェネリーとレインが居ませんよ」

「むう・・・・」

「余り俺達だけで、集まっていると怪しまれる。今日のところはお開にした方が良いかもな」

「・・・・そうですね」

「じゃー、次ここに集まる時のために、つまみになる食料の買い出しもしておこう」


 こうして、今日のところは解散となり、それぞれ時間をおいてホテルに戻って行った。

そして、次の日から任務達成のために、各々行動に移るだった___。

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