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チート勇者ろうらく作戦  作者: 脆い一人
最終章:チート勇者ろうらく作戦
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魔王大戦(35)「フレイス対オルド」

 人類の存亡をかけた魔王とその配下との戦い______。

本来ならば、魔族と戦える力を持つ者は死に物狂いで戦うべき戦いだ。

オルドも一人の騎士として・・いや、一人の人間としてこの戦いに懸命に貢献すべきだろう。

 だがオルドは、魔王となったのがオーマだと知ったときから、内心で魔王に対する闘争心は揺らいでいた。

今、オルドは第一貴族の命令でこの戦場に立ち、その役目を果たしているだけだ____いつもと変わらない。


 オルドは第一貴族の本質を知っている。

だからこそ、オーマが救国の英雄となったあの時には同情したし、助けることも出来た。

オルドはあまりに長い間、第一貴族の傀儡として、第一貴族の傀儡となっていることすら知らない若い兵士たちを死に追いやって来た・・・。


 (この魔王大戦・・・魔王が倒れることで勝者となるのは一体誰だ______?)


 オルドはフレイスとの戦闘中だというに、再び自分に問うてしまった。

 魔王が倒れたとき、勝者となる者・・・それは人類だろうか?

_____違う。分かりきっている。それはドネレイム帝国の第一貴族だ。クラースだ。

もしこの魔王大戦に人類連合が勝利すれば、少なくとも次の魔王大戦が起きるまでの間は、ドネレイム帝国の第一貴族による大陸支配が続くことになるだろう。


(あるいは・・・一部の者は納得するのかもしれない・・・)


 それは決して、恐ろしいものだと言い切れるものではない。

 何故なら、第一貴族は真のエリートだ。国の支配も、国の統治も、国の運営も上手い。

クラース達は国を豊かに、そして秩序だって統治する術と力を持っているし、自分達が作る国は完璧に統治するだろう。

その恩恵は、当然に第一貴族が優先して受けるが、その統治下の者達が受けられないものでもない。

実際に、ドネレイム帝国は大陸のどの国よりも豊かで、治安もいい。満足している民は多い。

オルドも昔は別の国で貴族として民と領地を統治していたが、ドネレイム帝国の都市ほど豊かで秩序のある街作りは出来ていなかった。

仮に、帝国の民が第一貴族の本質を知ることになったとしても、 “彼らが私欲で支配しようが、平和で豊かな国にしてくれるなら別に気にしない”という声も上がることだろう。

第一貴族に利用されて死した者たちに対しても、“平和を維持するためにある程度の犠牲は必要”と割り切れる者もいるだろう。

 だがそれは、その人物に“そういう順番”が回って来ていないから言えることだ。

自分が切り捨てられる側に立った時、同じ事を言える者がどれほどいるのだろうか?

そして、自分が第一貴族の命令で切り捨てる側に立って、何の罪もない若者を切り捨てられる者がどれほどいるだろうか?

 目の前で、そして自身の手で、第一貴族のために自国の民を切り捨てて来たオルドは、どうしてもそれを享受する気にはなれなかった・・・。


 そう、オルドは魔王の正体がオーマだと知ったとき、心の底で、人類連合の・・・ドネレイム帝国の敗北を期待してしまったのだ______。


 これが、オルド達サラマンドルナイツが敗北することになる、もう一つの大きな要因だった。

フレイスが強過ぎるとか、本当はそんなこと関係無かったのだ。

サラマンドルナイツの指揮官であるオルドに、そもそも勝つ気が薄いのだから、世界の雌雄を決する戦いなんかに勝てるわけがないのだ。


 長年溜まりに溜まった第一貴族への不満から、オルドは自分でも意識できない次元で帝国の崩壊を望んでいた。



______だが、それは今か?魔王大戦だぞ?


(だが、今の帝国を打倒できる戦力は、もう魔王軍しか残っていないだろう?)


______だが人類の存亡を掛けた戦いなんだぞ?敗北して人類が滅亡したら身も蓋もないだろう?


(それはそうだが・・・今の魔王はオーマなのだろう?ならば・・・)


______ならば、どうなんだろうな?聞いてみたらどうだ?



 オルドはフレイスの猛攻に神経をすり減らしながら、声を振り絞った_____。


 「フ・・フレイスよ」


______ガキィン!!


「ん?」

「お主は何故オーマに・・・魔王軍側に付いた?」


______ガキィン!!ギィイイン!!_____ガンッ!!


「決まっているだろう!愛だっ!!」

「あ、愛・・・?」


______キィン!!


「そうだ!愛するオーマの為だ!!」

「_______」


魔王となったオーマがどうなのか知りたくて聞いたつもりだったのだが、ちょっと聞く相手を間違えたかな?と思うオルドだった。

だが他に聞ける相手も聞く機会もなく、言葉を止めることも出来ないので、オルドは話を続けた。


 「魔王となったオーマを愛せるというのか!?」


______バギィンッ!!


「無論!!超絶、絶対的、圧倒的に愛して行けるぞ!!」

「_______」


ちょっとではなく、結構聞く相手を間違えたかな?と思うオルドだった。


「だが、人間ではなくなったのだぞ?魔族だぞ?」

「構わん!むしろ今は私より強いから人間であった頃より惚れこんでいるぞ!!」

「_______」


結構ではなく完全に聞く相手を間違えたな、と思うオルドだった・・・・。


「・・・まったく、昔からとんでもない娘だと思っていたが・・・人間をやめ、魔王となった男に惚れ込んで付いて行くなどと・・・」

「あの男は私の運命の男だからな!」

「・・・魔王となる運命だった男を運命の男として見れるというのか!?」

「くだらん!もちろんだ!魔王となろうが、人間をやめようが、オーマはオーマだろう!?」

「______」

「オーマがオーマである限り、どんな種族でどんな姿になろうと私の愛は揺らがんのだぁあ!!」


______ズガギィイイイン!!


「・・・・今もオーマはオーマだというのか?」


先程のまでの苛立ち・困惑混じりのトーンとは違う、何かを見極めようとする意志を宿した低いトーンでオルドは問うた。


「ぅん?・・・フッ♪」


 フレイスはそのオルドの様子の変化に気が付くも、それでもそれを気にすることなく、先程と同じ様に自信満々に答えた。


「ああ!オーマは今もオーマだ!!貴殿のことも気にかけていたぞ!」

「______なっ!?ど、どういう・・・それは?」

「魔王として魔王軍の全軍に命令が下りているのだ。“オルド・カイン・ホーネットは殺してはならない”、とな!!」

「______」


______オルドの表情が変わった


「苦労したぞ!さすがの私でも貴殿とその精強な部下達を相手に、“手加減”して戦わなければならなかったからな!時間が掛かった!」

「なっ_____!?」


_______ガキンッ!!


「______ぬぅう!?」


今までとは明らかに違うフレイスの重く強い一撃。“手加減”が嘘ではないと理解させられた。


「だが、それももう終わりだ!決めさせてもらうぞ!!オルド殿!!」


______ズガガガガガガギギンッ!!


「_____ぐぬぅうううう!?」


 フレイスは宣言通りの“決める”ための攻撃に出る。

先程以上のスピード、先程以上のパワー、先程以上のテクニック_____スタミナ切れしているオルドでは抑え込めない。


「・・・・・」


 当然、ベリザーナがフォローに入って来る。

これで二対一。

だが______


「_____あまい!!もうお前の攻撃も見切っているぞ!!」


_______ガガガガガガガギンッ!!


「・・・・!?」


______二対一になってもフレイスの勢いは止まらず、状況は変わらない。

フレイスが押しに押しまくっている。

 ベリザーナが手の内を見せ過ぎたことで、フレイスはもうベリザーナの攻撃パターンを全て覚えてしまった。

フレイスはもう目を瞑っていてもベリザーナの攻撃を防げるだろう。


_______ガガガガガガガギンッ!!


「ぬぅううう!?」

「・・・・・・・ッ!?」


オルドはスタミナ切れ、ベリザーナは攻撃を完全に見切られ、二人はフレイスにゴリゴリと押し込まれて行く。

そして_____


「______決める!!」


______魔法術式を展開。

術式は二つ。どちらも紺碧色をした魔法術式・・・時空属性の魔法術式だった______。

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