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チート勇者ろうらく作戦  作者: 脆い一人
最終章:チート勇者ろうらく作戦
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魔王大戦(34)「フレイス対オルド」

 魔王大戦が始まり、ワンウォール諸島の島々、魔王城、エルス海、オンデンラルの森、シルクロードと、各地で魔王軍と人類連合とが衝突を始めてしばらく・・・ついに魔王軍からは勇者候補が、人類連合からは第一貴族といった個の力で戦況を覆せる強者達も、各戦場でその力を振るうようになり、戦いは益々激しさを増した。

 だがそういったもの同士が戦場に降り立ち衝突するという事は、もしその者が倒れれば、軍は精神的主柱や指揮官を無くし、兵士達は気力や統制が取れなくなり軍は崩壊、決着がつくのも早まるということでもある。

今現在が、魔王大戦の戦いの激しさのピークと言えるかもしれない。

ここからは、その強者達同士の決着が着いたところから戦いは収束していくだろう。


 そして、各地の主要メンバー同士の戦いの中で、最初に決着を迎えたのは、エルス海に浮かぶ船の上で戦うフレイスとオルド、そしてオルド配下の赤蜥蜴騎士団サラマンドルナイツの戦いだった______。






 「はぁあああああああああ!!」

「ぬぅううう!?」


______ズガギギギギギッギギギギッン!!______ジュジューーーーーー!!


 フレイスとオルドの戦いでは、フレイスによる執拗な猛攻が続いていた_______。

指先で触れただけで指が凍って割れてしまうほどの冷酷な冷気を纏う短剣と手斧を使い、ダンスを踊るような躍動感溢れるフレイスの連続攻撃。

オルドは両手に持ったマグマグレートソードの熱でその冷気から身を護りつつ、大きな刃を滑らかに動かしてフレイスの短剣と手斧の刃の連続攻撃をなんとか捌く。

 魔導士としての技量も戦士としての技量にもフレイスに劣るオルドだったが、その経験値を活かして防御に徹することで、なんとか戦えていた。

 だが、それでも追い込まれる場面は多々あった。

オルドは剣士としても魔導士としても一流だが、フレイスが相手では防御に徹していても、均衡を保つことすら長くは許してもらえていなかった。


「ベリザーナ!」

「・・・・・・」


______ズゴォオオオオオオオ!!


「_____っ!」


 それでも、オルドが召喚したベリザーナが、均衡が崩れそうな場面で必ず援護に入って来くることで、オルドは押し切られずに済んできた。

ベリザーナは召喚主のオルドと心が通じているとでもいうのか、それとも武人として技量に長けるからなのか分からないが、ここぞという場面で必ずカバーに入ってフレイスの邪魔をし、オルドをカバーできていた。


「まったく・・・」


そのベリザーナの巧みなフォローにフレイスは苛立ち、オルドとベリザーナを一掃しようと大型の魔法術式を展開する______


「「______!?」」


「______チッ」


______が、その術式は周囲のサラマンドルナイツ達が集団魔法を放とうとする動作に反応したフレイス自身の手によって、完成を迎えることなく解除される。

 フレイスがオルドとベリザーナに大技や時空魔法を出そうとすると、必ずその周囲を囲っているオルド配下のサラマンドルナイツの精鋭たちが反応するのだ。

サラマンドルナイツの約千人は、まるで一体の生物のように意思が統一されていて、フレイスが魔法術式を展開すれば、いつでも集団魔法で潰せるように備えていた。

 オルドを物理戦闘で押し切ろうとすればベリザーナに邪魔され、ベリザーナを仕留めようとすればオルドに邪魔され、二人まとめて仕留めようと大技を使おうとすればサラマンドルナイツに潰される・・・・。

 フレイスはこのオルド達の連携に悩まされていた_________わけがない。

確かに両者の戦いは、まるでオルド達がその戦術と連携で、フレイスという魔獣を檻に閉じ込めるかのような景色に見える。

 だが、フレイスという魔獣は大人しく檻に入っていてくれるような獣なわけがない______。


 「あはははははは!!」

「ぐぅ!?」

「・・・・・・・!?」


 フレイスは、自分の攻撃を防がれれば防がれるほど、その戦闘狂な人間性を隠しもせずに狂気的な表情と笑い声を出して暴れ回る。

一見するとオルド達が、抑え込んでいたように見える景色だったが、その実、今にも檻から飛び出してきそうなフレイスを抑え込むのに、オルドとベリザーナ、サラマンドルナイツ一同は必死だったのだ。


 そんな必死な作業がいつまでも続くわけもない_______。


 タフネス_____。これが両者の勝敗を分けた二つある大きな要因の一つだった。

フレイスはたったの一人で、オルド、ベリザーナ、サラマンドルナイツ全員の体力と魔力を凌駕してしまい、オルド達はフレイスより先にガス欠になりつつあった。

フレイスという自分達からかけ離れた戦闘力を持つ人物と戦いを均衡させるというのは、この一対千の体力・魔力勝負ですら一人で覆されるほど消耗が激しかったのだ。

 それが、凍結の勇者フレイス・フリューゲル・ゴリアンテだ。

魔王オーマと勇者ルーリーを除けば・・・いや、ひょっとしたら純粋な闘争力なら、この二人すら凌駕するかもしれないほどの強者の戦闘力だった______。


 (分かってはいたが・・・)


 そして、じりじりと体力差が開き、均衡が崩れつつあることを自覚できないほどオルドは愚鈍ではなかった。


(最早これまでか・・・?いや、こやつ相手なら、よくやった方なのではないか?・・・フフッ、一対千という戦いで時間稼ぎをしただけで、“よくやった”と自分と部下を称賛するとはな・・・)


 フレイスと刃を合わせながら、“敗北”の二文字を背に感じ始めているオルドは、心の中でそんな風に自嘲していた。

 大陸最強の軍事大国、その軍団の中でも精鋭である自分達が約千人がかりで一人の人間を相手に、“時間を稼げて満足”というのだから、卑屈にもなろうというものだ。


(だが仕方があるまい?こやつの能力はもう人間のそれではない。召喚魔法で呼んだ大精霊ですら、まるでものともしておらん)


 “仕方がない_____”、オルドが言うように、これも事実だ。

フレイスは人間の強さとしてはあまりにも逸脱しており、勇者候補の中ですら頭一つ抜き出た強さを持っている。

 確かにフレイスは、相手の過去を覗くことや、この世界の時間の流れを止めるといったチート能力を備えていはいる。

だが、それ以外の能力、智謀、経験、戦術、体術、剣術、魔導、気力、体力、膂力、耐久力といった戦いに関係するどの能力もフレイスは桁外れに備えており、それらの能力だけでも、大陸最強のドネレイム帝国軍の騎士達を圧倒できる。

実際、フレイスがまだ時空魔法を使えなかった頃のバークランド大戦で戦ったときですら、一人で倒した帝国軍の数は目の前の敵の数のそれより多い。

オルドの心の中の嘆きは決して弱気なものとは言えない、仕方がないことだと言える。


(・・・そう、仕方がないことなのだ)


フレイスとの刃合わせで息を切らせながら、オルドは何度か自分にそう言い聞かせる_____


______本当にそうか?


「_____!?」


 不意にオルド自身で問うた言葉が、オルドの胸をチクリと刺した。


(ぬぅ・・・)


 そして、その胸の痛みは核心を突いていた。

自分で自分に言い聞かせた「仕方がない」に対して、引け目、誤魔化し、罪悪感といった類の感情が無ければ先の自問に自分で胸を痛めることは無いはずである。

 オルドは間違いなく、このまま戦いが続けばフレイスの敗北することを心の底で期待してしまっているのだ。

“相手が強過ぎるのだから負けるのは仕方がない”なのではなく、 “戦いたくない相手だから「相手が強過ぎるのだから負けるのは仕方がない」と言い訳したかった”、ということだ。


(何故だ?いや・・・・)


 オルドはその理由を一度は知らぬふりをしようとしたが改める・・・。

その理由は、そもそもこの魔王大戦に対する不満・・・いや、さらに遡って積もりに積もった帝国に対する不満がオルドの中にあるからだった______。

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