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チート勇者ろうらく作戦  作者: 脆い一人
最終章:チート勇者ろうらく作戦
404/411

魔王大戦(33)「ミクネとジョウショウ」

 (______だが、どうなっている!?)


 ミクネの号令で強襲して来た閑々忍者たちを、その動きを見切り、一呼吸目で備え、二呼吸目で魔法を使わずに剣の技のみで防ぎ、その間に完成させていた最上級魔法による三呼吸目のカウンターで襲って来た閑々忍者八体全てを滅させたジョウショウだったが、その後で頭の中にあったのは、“何故_____?”という疑問だった。


_____ミクネからの追撃が来ない。


 ジョウショウは閑々忍者を迎撃する最中で、ミクネが間髪入れずに追撃してくる可能性を想定して、魔道具でのカウンターも用意していた。

希少な魔道具なので、使わずに済むことに越したことは無いが、これはこれで想定に無い疑問の残る内容で、ミクネの意図が気になるところだった。

 そうして疑問を抱いたジョウショウが気になって後ろを振り返ると、そこにはジョウショウでも予想していなかった光景が広がっていた______。


 「_____お前達!?」

「アハハハハッ♪」


 ジョウショウの眼前にあったのは、ミクネの足下で倒れ伏しているヒノカグヅチの騎士たちだった。

一目瞭然、それを見れば誰でも全て状況を把握できる。

どうやら、ジョウショウが閑々忍者たちを迎撃して全滅させている間に、ミクネもヒノカグヅチの騎士たちを全滅させていたようだった。


「私の自慢の兵達を全て倒したのか!?あの一瞬で!?その状態でか!?」


 これはジョウショウの中で完全に予想外の出来事だった。

ただ、ミクネが自分に閑々忍者をけしかけている間にヒノカグヅチを狙う可能性が予想できなかったわけではない。

その可能性はあると思っていた。

ジョウショウは、ミクネが自分に追撃して来るパターンと、ヒノカグヅチを狙うパターンと、二つのパターンを想定して対策していた_____つもりだった。

ジョウショウな中で想定外だったことは、その対策が通用しなかったということだ。

ジョウショウは、ミクネがあの一瞬でヒノカグヅチの騎士たちを全て倒しきれるとは思っていなかったのだ。

 ミクネは強い_____。そんな事はもちろんジョウショウは分かっている。

ミクネとジョウショウの付き合いは、お互いに不本意ではあるが二十年以上ある。

ジョウショウはミクネの強さをよく知っている。

だがミクネがあの状態_____ハンデを背負っている状態では、ヒノカグヅチを倒せはするだろうが、一瞬の内に連れて来たヒノカグヅチの精鋭を全員打倒することは現実的ではなく、自分が閑々忍者を倒した後でも十分い加勢に入れる時間があると思っていたのだ。

 そう思う一番の理由は、ミクネは魔王軍全体の通信網を維持するために、魔導通信機に魔力を使ってハンデを背負っている状態だからだ。

魔王オーマが作った魔導通信機がどれほどの性能かは知らないが、大陸全を把握し、軍全体が通信が取れるようにするなら、最低でも最上級魔法二つ三つ分の魔法術式を維持する魔力が必要となるはずなのである。

常人ではまず動かすことすら出来ない代物が、大陸間魔導通信機というもののはずなのだ。

帝国側の方は、カスミがウーグス配下の研究員(魔導士)を十数人ほど動員して維持している。

帝国側には、魔導通信機を一人で維持できる魔力量を持つ人材などいない。カスミでも一人では無理だ。

 そんな味方の軍の命綱に魔力を消費していては、たとえ烈震の勇者として勇者候補の中でもトップクラスに膨大な魔力量を持つヤトリ・ミクネであっても、それを維持しつつヒノカグヅチの騎士たちを倒すなどという事はそう簡単には出来なはず_____というのが、ジョウショウの読みだった。

だが結果は、ジョウショウの予想に反して、連れて来たヒノカグヅチの親衛隊三小隊全部隊が全滅してしまっていた_______。


 ジョウショウはマサノリの腹心として常勝を誇る第一貴族の中でも猛者中の猛者である。

そしてジョウショウが常に勝つ続けることが出来た要因は、自身の戦闘力や指揮能力、部下の育成・編成能力だけではない。

戦略と戦術_____それを支える戦場と相手を見極めるその洞察眼もまた、ジョウショウという武人を語る時の特筆すべき能力だ。

 このジョウショウの“見極め”がヒノカグヅチを常勝騎士団たらしめてきた一番の要因で、これまでのジョウショウの戦闘・戦争経験の中で、ジョウショウの戦況把握と戦力把握が外れたことは無かった。


 ジョウショウのミクネに対する戦力把握が外れたのは、ミクネの戦闘力がアマノニダイに居た時よりも飛躍して向上しているからでは?_____そんなことはジョウショウも分かっている。

それを計算した上で完全に見誤る結果になってしまったのだ。


「・・・・・・」


 ジョウショウは、自分の部下達が床に倒れ伏している中で一人得意気な顔で仁王立ちしているミクネ____という、その予想外の光景を少しの間呆然と眺めていた・・・。


「ハハッ♪さっきまでの威勢はどうした?クソ野郎」


そこにミクネが挑発な言葉を投げかける・・・戦術的な駆け引きを意識しているのかは分からない。

恐らく、シンプルにジョウショウの思惑が外れて“ざまーみろ♪”なのだろう・・・。


「むっふっふっふっふっ♪形勢逆転だな?クソ野郎」

「形勢・・・逆転?」

「本当はお前が私の護衛の魔族達を撃破したら、この連中と一緒に戦うつもりだったんだろう?お前ら帝国軍はつるまないと何もできないからな。だが、もう味方はいないぞ?可哀想に」

「・・・・・」


 要するに、帝国軍が魔王軍と戦う上での強みは、集団での魔法と連携で、それが無くなってしまっては不利になるだろう?と言っているわけだ。

ただミクネの言い方が、挑発したいのか、それともシンプルにジョウショウに対する不快感を表したかったのか分からないが、ただの悪口になっていた。

恐らく、シンプルにジョウショウのが不利になって “ざまーみろ♪”なのだろう・・・。


 「______ぷっ♪」


だが、そのミクネの言いように、ジョウショウは小さく吹き出した。


「あんっ!?なんだこの野郎!!笑ったか!?」

「ああ、まあな。・・・なるほど?私が想定するより強くなっていたというわけだな。面白い!久方ぶりに血沸き肉躍る戦いが出来そうだ」


ジョウショウは自分が不利になったことに、苛立ちも焦りもせず、准魔王のメテューノと戦った時のように、細い目を見開き、ニヤリと笑い、その闘争心を剥き出しにした狂気的な表情を見せた。

 これがジョウショウという男だ。

敵方の戦力を十分に観察して見極めて、精密な作戦を計画し、綿密に準備することで、戦う前に必勝を決めて戦場に立つ武人だが、その予想が外れて、敵が予想外の強さであっても崩れることは無い。

むしろ、自身の予想を覆す強者に対して嬉々として闘争心を抱く人物なのだ。


「さあ、ミクネ!その状態で私も倒せるか見せてもらおうか!!」

「偉そうに言ってんじゃねーーー!!お前一人を相手にするなら、これくらい丁度いいハンデだ!来いっ!!」

「はははははっ!!私を相手に“ハンデ”とはよく言った!!行くぞ!!」


そしてお互いに戦いへのボルテージが限界まで上がった二人は、その勢いのまま魔法術式を展開しながら駆け出し、衝突するのだった_____。

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