魔王大戦(31)「ミクネとジョウショウ」
「これで最後だ!!やれぇ!叢原火!」
「ゲェッ♪ゲェッ♪ゲェッ♪ゲェッ♪」
______バギャァアアアアアアアアン!!
「よし!城門が開いた!!突入するぞ!!」
「「うぉおおおおおおお!!」」
サブリウォール島の山道でロジ達が奮戦する場にジェネリーが到着した頃、モイアの力で十分な余力を持って魔王城攻城戦に入れたジョウショウ達ヒノカグヅチ。
山道を駆け上がりながら事前に準備していたヒノカグヅチ兵達の上級集団火炎魔法と、ジョウショウ自身の最上級魔法、そしてジョウショウが召喚した叢原火の最上級魔法による連続攻撃で、オーマの造った魔王城の城門は数分もしないうちに破壊される。
そして、ジョウショウはヒノカグヅチを連れて一気に城内へと突入した______。
「各部隊!!打ち合わせ通りに散開!!城を攻略しろ!!どんな敵がいるのか分からん!隊長達は絶対に小隊以下の人数にならないよう指揮を執れ!!」
「「了解!!」」
ジョウショウは事前の攻略プラン通りにヒノカグヅチに指示を出し、各部隊を散開させる。
ヒノカグヅチ砲撃隊は、ロジやボロスたちといった山道にいる防衛部隊が戻ってくる事を想定して、重装歩兵隊を護衛につけながら城の見張り台や胸壁を攻略。
そして外から戻って来る魔王軍を迎え撃つための迎撃態勢を整える。
ヒノカグヅチ工兵隊も、戻って来る敵部隊を迎え撃つために、開いた城門で待機して罠を設置し、迎撃態勢を整える。
城内の施設の制圧には、残りのヒノカグヅチ突撃隊、遊撃隊、そしてジョウショウ直属の親衛隊で攻略する。
ジョウショウ達の目標は一つ。敵部隊の連携を担う、この魔王城にある通信網の破壊だ。
つまり、魔王城にある魔導通信施設と恐らくそこに居るであろうヤトリ・ミクネがターゲットだ。
通信魔法は、セイレーンなどが使う海中用以外、風属性魔法をベースにしている。
そのため、風通しの良い場所に設置する必要があるため、屋上や上層階の吹き抜けの部屋に設置するのがセオリーだ。
ヒノカグヅチ最強部隊であるジョウショウと親衛隊は当然そこを目指し、他の施設は突撃隊と遊撃隊に任せる。
「ジョウショウ閣下!三階へと続く階段を発見しました!」
「よし!上がるぞ!!この一階と二階は突撃隊に任せる!!遊撃隊は地下へ行け!!この魔王城は魔王の能力によって即席で造られた城だ!そこまで凝った罠や防衛施設もなければ、道も複雑ではないはずだ!!一気に行くぞ!!」
「「了解!!」」
ジョウショウは地下の制圧を遊撃隊、一階と二階の制圧を突撃隊に任せ、自身は親衛隊を連れて三階へと上がって行く____。
オーマの造った魔王城の防備は、ジョウショウの推測通り“ざる”だった。
創造属性魔法で城を造る場合、城の造りは術者のイメージを投影するため、そこまで城の構造に詳しくないオーマでは、外観はともかく、内側の細かい仕掛けや入り組んだ構造までイメージして城を創造することが出来なかったのだ。
また迎撃システムも、オーマが魔王となってから魔王大戦が始まるまでの短い期間では、思うような準備ができなかった。
オーマの魔王大戦への準備時間は、部隊編成(魔族召喚)やヴァリネス達部下への復活魔道具の作成、ワンウォール諸島住民たちへの避難支援に使ってしまっている。
魔導通信機以外、オーマお手製の魔道具はこの城には存在しない。
罠を作るのが得意なウェイフィー以下サンダーラッツ工兵隊が、城内にある程度の数の罠を張ってはいるものの、ウェイフィーたちが用意できる数と質の罠では、ジョウショウたちヒノカグヅチを仕留めることは出来ないだろう。
事実、ヒノカグヅチはどの部隊も、ほとんど罠によるダメージを負うことなく城を攻略している。
唯一怖いのは城内に居る上級または最上級魔族の存在だけだが、ジョウショウはそれすらも意に介さず城内を突き進んで行き、目標に辿り着くのには、そう時間は掛からなかった______。
魔王城八階、屋上のすぐ下の部屋______。
「ちぇ・・・もう来たのかよ。思ったより早かったな」
部屋に現れたジョウショウと何人かのヒノカグヅチ騎士たちを前に、ミクネは一人でいつも帝国の人間に見せていた尊大な態度で迎える。
ジョウショウはその生意気な小娘の態度を受け流し、周囲をその細い目で鋭く見渡した後、ニヤリと笑ってミクネと向き合った。
「ククッ♪・・・ずいぶん大人しいな、ミクネ?」
そんな風に、ジョウショウの第一声は喉を鳴らす笑い声と共に出た挑発的な言葉だった。
「あん?何を言って_____」
「____昔の貴様なら、この部屋に我らが入った瞬間に“来るんじゃない!!”と言って魔法の一つもぶっ放していただろう?」
「・・・・・・・」
「・・・それとも、この部屋に隠している魔族達をけしかけるタイミングを計っているのかな?」
「チッ・・・」
ジョウショウに自分の手の内を見透かされ、ミクネは大きく舌打ちをした後、先程までの尊大な態度の演技を止め、頭をワシワシとかきながら開き直るかのような態度になった。
「本____っ当に嫌な奴だよな、お前。長い付き合いだが、いつも私のことを見透かしていて、私を操ろうとしてさ」
「それが私の役目だったからな。私が東方軍の軍団長に選ばれた理由の一つが、お前の扱いに長けるから___というものだった。まあ、他の第一貴族連中がお前の子守を嫌がっていたという意味でもあるがな」
「何が私の扱いに長けるだっ!!私をハツヒナと一緒にあれだけ不快にさせておいてっ!!」
「阿呆が。お前を扱うというのは“操る”ということであって、貴様の“ご機嫌を取る”ことではない」
「ふんっ!そうは言うがハツヒナがお前以上のクソじゃなかったら、真っ先にお前をぶちのめしていたぞ!」
「そうか。なら、マサノリ様に感謝だな」
「ああ゛?」
「マサノリ様の進言だったのだよ。貴様の“子守”が面倒になるようなら、ハツヒナをけしかけろ___とな」
「ぁんの野郎・・・・」
どうやらハツヒナとミクネのあの一件も、マサノリとジョウショウが狙ってやった謀ということだった。
それを知り、ミクネの中でオーマ達と過ごす中で薄れていた帝国に対する怒りが蘇ってくる・・・。
「本当に・・・やっぱり貴様らは最悪だ。私にオーマ・・いや、自分達第一貴族以外の全ての人を物のように扱って・・・ジョウショウ、ここでこれまでの借りを返させてもらうぞ」
そう言ったミクネから放たれる殺気と怒気・・・見た目こそ少女だが、その魔力と経験値は本物だ。
ジョウショウの後ろにいたヒノカグヅチの騎士たちに、若干ではあるが緊張と恐怖が走る____。
だが、ジョウショウは意に介していない____どころか、ミクネの放つ殺気に負けず劣らずの獰猛な殺気を放って言い返す。
「これまでの借りぃ?・・・こちらの台詞だ、小娘。今まで散々我らを引っ掻き回してくれたのだ、その借りこそきっちり返してもらうぞ?その身体でな_____」
「_____はぁ?」
自分から獰猛な殺気を放ち、戦いのテンションを上げていき、ジョウショウからの殺気を受けると更に戦いのテンションが上がっていたミクネだったが、ジョウショウの最後の一言の意味が分からず、固まってしまい、テンションもオフになってしまった・・・。
「な、なんだ?その、“身体で”ってのは?一体どういうことだ?ジョウショウ、お前は一体何を企んでいる?」
「別に何も企んでなどいない。ただ、三大貴族・・・いや、二大貴族のお二方とも話し合い、もう魔王大戦後の貴様の処遇は決まっている。・・・ミクネ、貴様は私の嫁になるのだ」
「・・・・・は?」
今度はミクネの思考がオフになった。
「私の子を孕んでもらうぞ、ミクネ」
「・・・・・・・はぁあーーーーーーーーー!!?」
再びミクネの思考がオンになると、敵味方入り乱れる魔王城の一室で、ミクネの魂が絶叫した_______。




