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チート勇者ろうらく作戦  作者: 脆い一人
第二章:閃光の勇者ろうらく作戦
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暗躍する者達の攻防

 深夜のベルヘラの港は、星々と月明かりが海面にも映し出され、幻想的な明るさがある。


 オーマ達の船から少し離れた所____。

そこに在る船の荷物の物影に、更にその物影を黒く塗りつぶす影が二つあった。

人が二人しゃがんでいるようなシルエット、その影の正体は二人の人間だった。

 だが、その二人の顔は人の顔ではなく、カラスを模した仮面を付けている。

ドネレイム帝国最精鋭の隠密部隊バグスの筆頭、カラス兄弟の似非鴉エセガラス死屍鴉シシガラスだった。

 変装と工作が得意な兄の似非鴉が、隠密と暗殺が得意な弟の死屍鴉から、オーマとヴァリネスの尾行を試みた結果報告を聞いていた____


「フム・・・やはり、あの団長と副長が居ると尾行は難しいのか・・・」

「ああ、遠目から見る分には問題ないが、会話が盗聴できる距離まで近づくと警戒される。そっちは?隊長達は尾行できそうか?」

「遊撃隊長と工兵隊長の二人には注意が必要だ。あの二人も、隠密に関しては中々のようだ。他のバグスじゃ無理だろう。だが、俺達なら奴らの尾行は可能だろう。とはいえ、作戦は団長と副長の二人が主導だ。他の連中からでは必要な情報が得られそうにない。どうするか・・・」

「恐らく、あの船で話し合っているのは、オーマがレインにプロトス邸に呼ばれ、プロトスと会うことになった件について話し合っているだろう」

「なんだ?死屍鴉、情報を得ていたのか?もったいぶって遠回しな会話をするのは貴様の悪い癖だぞ」

「そう言うなよ、似非鴉。あまり人と会話する機会が無いんだ。二人でいる、こんな時くらい会話を増やそうぜ」

「任務中だぞ。会話なら任務外ですればいい」

「俺達が任務に就いていない時なんてないだろ?」

「フン、まあいい。それで?どうやってオーマとプロトスが会うという情報を得た?」

「簡単だ。レインの方を尾行したんだ。それで、プロトス邸での二人の会話を盗聴したんだ。プロトスの屋敷は警備が厳重だったが、問題なく侵入できる」

「なるほど・・・プロトスとレインの二人なら、尾行も盗聴も可能か・・・よし。尾行のターゲットを変更しよう。オーマ達を尾行できずとも、オーマと接触したレインやプロトスを追っていれば、奴らの思惑が分かるかもしれん」

「了解だ。では早速_____!?」

「____ッ!?」


 カラス兄弟がこれからの方針を決め、この場から立ち去ろうとした瞬間、二人はただならぬ気配を感じ取る。

その感覚は正常で、その気配は勘違いではなく、どんどん濃くなり、獰猛な殺気を二人に放ち始める。

周囲の空気を凍らせて相手を閉じ込めるような圧迫感のある殺気、まるで氷の牢獄に入れられたような感覚に、二人はすぐさま身構える。


「誰だ!?」

「気をつけろ、似非鴉!この殺気は人のモノではない!!」


「「グルルルル・・・」」


死屍鴉が似非鴉にそう警告するや否や、二人の耳に人外の唸り声が聞こえてくる。

 先に相手を補足したのは似非鴉だった。


「ケルベロス!?しかも二体だ!!」

「魔獣だと!?しかもこんな上位種がこんな所に!?在り得ない!何者かの召喚か!?」

「この距離、逃げられん!襲ってくるぞ!!」

「クソッ!」


人気の無い夜の港で、二人の強者と二匹の魔獣が激突する____。


 その様子を少し離れた所で、楽しそうに見物している人影が在った。

そのシルエットは人の影ではあるが、人では無い。

頭部に角が生え、蝙蝠の翼のような影が人影から左右に伸びていた。


「そうよね~。プロトスや今のレインには気付かれないでしょうね、貴方達なら。でもそれって困るのよぉ、オーマの反乱計画バレちゃうだろうしー」


二人と二匹の激しい戦いぶりに、呑気な口調で、魔獣の召喚主であるリデルが呟く。


「・・・にしてもカラス兄弟も意外にやるわね。隠密専門と思って侮っていたわ。直接戦闘で私のペットとやり合えるなんて・・・私が直接出向いて殺した方がいいかしら?・・・・・うん、やめときましょう。カスミが覗いてないとも限らないしね。それに上級の隠密部隊なら、いざという時に主人にメッセージを残す術を持っていたりするし、まだ私の正体がバレるリスクは背負えないわ。まあ、カラス兄弟が生き残っても、これで迂闊にオーマ達を追跡できなくなるでしょう」


そう言って、リデルは不敵な笑みを浮かべて、夜の闇へと消えて行った____。

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