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チート勇者ろうらく作戦  作者: 脆い一人
最終章:チート勇者ろうらく作戦
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魔王大戦「エルス海」(2)

 魔王軍の上級魔族たちによる高火力な上級魔法が、人類連合艦隊の船に被弾する。

甲板には当てていない。船にダメージを与えて、船を制御不能にして、人的被害を出さないように船を無力化させに行く作戦だ。


「敵の魔法が船体に被弾!!浸水しています!!」

「すぐに応急処置に入れ!!」


「「了解!」」


だが、帝国の力で改良されたココチア海軍の魔導船も大したもので、上級魔法の斉射で船体に受けたダメージは、多少船に穴が空いて浸水を許すも、人の手で塞ぐことが可能なレベルでしかなく、制御不能にまでは追い込めなかった。

 その様子を見た上級魔族達は、冷静に作戦の修正に入る。


「ダメージガアサイ。イチドデハムリダ」

「その様だな」

「ツイゲキダ」

「ならば、フレイス様の指示に従い散開するぞ。固まればまとめて討たれる」


「「オウ」」


 上級魔族以上の魔族達は、個の力は強いが連携があまり得意ではないので、自身が扱える属性の信仰魔法はSTAGE3を超える練度まで練り上げられているが、集団魔法は扱えない。

そのため固まって動く有効性はあまりなく、一度の集中攻撃で船を制御不能に追い込めないなら、散開して攻撃した方が各個撃破されるリスクが減るため、グレーターデーモン達は散開して船を削って行く作戦へと変更する。

そして、この動きは地味ではあるが、人類連合側をイラつかせることになる。


 人類連合側にとって、上級魔族を迎撃する手段は、そう多くない。

1つは強化された船での砲撃で打ち落とす戦法。もう一つは帝国軍兵士たちによる集団魔法で殲滅する方法。そして、第一貴族レベルの上級魔族を上回る個の力を持つ者による攻撃の3パターンくらいだ。

 だが、空を自由に動く相手に船の砲撃で打ち落とすという戦法は、まず選択肢に上がらない。

ココチア海軍・・というより、この世界の船の砲台には対空迎撃用の砲台は存在しない。全て対船用の砲台だ。

とれる射角が空を飛ぶ相手を想定していないため、この世界の戦船で空を飛ぶ標的を打ち落とすのは現実的ではないのだ。

 帝国兵による集団魔法で狙うのも、一定の人員を回さなければならないので、船の進行を岩と風で阻害されており、船体にダメージも負ってしまっている、この人手が欲しい状況では厳しい・・・。

上級魔族たちが固まってくれていれば、人手が足りなくなっている状況でも人員を回して、集団魔法で迎撃するのも悪い選択ではないだろうが、散開され、上級魔族を一体ずつしか攻撃できない状況にされては、集団魔法で迎撃するために人員を割くのは効率が悪すぎるのだ。

戦いは始まったばかり。しかも帝国軍兵達は、ワンウォール諸島に上陸して、島を制圧しなければならないというのもある。

 では、第一貴族・第二貴族の指揮官クラスの上級魔族に勝る個の力での迎撃が最有力になるわけだが、それをするのはリスクがある。

魔王軍には上級魔族の更に上を行く個の力を持つ存在、勇者候補や最上級魔族といった者達いて、それらに対応しなくてはならないからだ。

 そうして、人類連合艦隊は後手に回ることになってしまい、魔王空軍にいいように足止めされる結果となってしまうのだった_____。




 「アインフリーレン(冷凍保存)」


_______ピキィイイイイイイイン!!


「「__________」」


「すまんな。戦いが終わったら解いてやるから、しばらく大人しくしていてくれ」


 スカルドラゴンライダーから敵船に乗り移ったフレイスは、着地するや否や最上級魔法を発動し、人類連合の兵士達・・・いや、船ごと・・・いや、三船一組の艦隊ごと凍らせて無力化した。


「この艦隊には第一貴族はいなかったか?」


 何人にも防げない一撃を放ったという自負はあるフレイスだったが、それでもこの艦隊のどれかの船に第一貴族が乗っていれば、防御される可能性はあると思っていた。

 それがないことで、この艦隊には第一貴族が居なかったと判断して、フレイスは舌を打つ。

それは、第一貴族を討ち取らなければ、この戦いに勝利は無いという戦略的な理由もあるが、それ以上にフレイスが第一貴族と戦いたいという欲望から来るものだった。

第一貴族は相手側の最強の駒であり、且つオーマから“第一貴族だけは生かして帰すな!!”と、討伐命令が出ている。


「オーマがそう言うから、第一貴族がいてくれれば遠慮なく殺し合えるんだがな・・・仕方がない。次に期待だ」


そう言ってフレイスは、再びスカルドラゴンライダーに連れられて、嬉々として次の左翼艦隊の迎撃に移るのだった_____。






 左翼で人類連合艦隊と魔王空軍の遊撃部隊が衝突し、フレイスが一艦隊を無力化する少し前_____。


 「船長!右翼の艦隊が、空からの魔王軍の部隊に強襲を受けたとのこと!」

「そうか、始まったか・・・全左翼艦隊に通達!一艦隊ごとに防御陣形で厳戒態勢!敵の強襲に備えろ!」

「ハッ!」

「我が艦も前に出るぞ!」

「了解!全速前進!!」

「全速前進!!」


 魔族との戦いは、いつ何処で、どんな魔物に襲われるか分からない。

そのため魔族と戦う場合は、帝国東方軍のように相手の数や能力のみならず、生態まで把握していない限りは、どんな攻撃にも対応できるように、陣形を組むのがセオリーだ。

 ココチア海軍の指揮官が、そのセオリーに従って各艦隊に防御態勢を命じて、且つ自身の艦隊にも同様に防御陣形を取らせる。


「何処からでも来い!下劣な魔王の下僕どもめ!!」

「_____良くないな」


「「!?」」


 戦いが始まったことで、陣形を整え、気合を入れ直した指揮官の声に、誰もいない、何も見えない風景から、突如として、反応する者がいる・・・・。


「な、なんだ!?」

「魔物だな!?」

「どこから!?」


 兵士達の下腹に響く声・・・・人外のものだというのが分かる。

敵は近い。だが、見えない・・・。

そうして狼狽える船の上の人間達を、さらに恐怖させるかのように、声の主は怒気を強めて声を出す。


「我らが魔王様の下僕であるのは事実ゆえ、気にもせんが、よりにもよって魔王様を“下劣”とはな・・・」

「下!?」

「下だ!!海の中だ!!」

「いや、だが何も見えないぞ!?影すら無い!!」

「どういうことだ!?」


声は響いているというのに、周りにも海の中にも影すら見えて来ず、ココチア海軍と帝国軍の兵士達はパニックを起こし始める。


「おい!落ち着け!!戦う前から動揺していては______!?」


_____ズドドドドーーーー!!


動揺し始めた兵士達を宥めようと、指揮官が声を張り上げた時、その怒号すらかき消す波の飛沫音が轟いた。


「!??」

「なんだぁ!?」

「あ、あれは・・・」


 そうして海から姿を現したのは、30メートルを超える巨大なウミヘビの様な魔獣。

船から海の中を見た時に影が見えなかったのは、影が無かったのではなく、影が大きすぎて影だと分からなかったからだ。


「な、なんだ、これ・・・・」

「でけぇ・・・」

「うそだろ・・・・・」


 ファーディー大陸には、30メートルを超えるというこれほどのサイズの生物は、海にも陸にも存在しない。

当然、シーヴァイスを知らない者達には、始めている光景。初めて出会うサイズの生物だった。

そのためか、シーヴァイスは殺気を放ったり威嚇したりするまでもなく、そのサイズ感のみで人類連合の兵士達を圧倒できてしまう。

更に、魔力を宿した青白い鱗と青黒い鱗のゼブラ柄が、魔法を扱える人類連合の兵士達に、その巨体がハッタリではないことを理解さえ、並の人間では到底太刀打ちできない存在であることも理解させていた。

 そして人類連合の兵士達は、そのあまりの存在感に、混乱や恐怖すら出来ずにただ茫然とその姿を眺めることしかできなくなってしまった・・・・。


「・・・・・リヴァイアサン?」

「________」


______ザッッッッパーーーーーーン!!!


「「うぁあああああああああ!!?」」


 1人の兵士が伝説の海獣の名を口にしたのを最後に、帝国から援助を受けて強化された自慢の船は、いとも簡単にその海獣によってひっくり返されてしまった。

そうして、兵士達全員、エルス海の海へと放り出されてしまうのだった______。

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