表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
チート勇者ろうらく作戦  作者: 脆い一人
最終章:チート勇者ろうらく作戦
372/377

魔王大戦「エルス海」(1)

 ココチア海軍は帝国の助力で強化されている。

商船まで買収して船の数を増やし、船の性能も向上させているのはもちろん、船に積んでいる砲撃の性能も向上させている。このことは想定されていた。

だが実際の射程距離と命中精度は、レインたちのその想定をはるかに上回っていた。


「直撃する!!」


思わずレインは叫んだ_____。


 レイン達の乗るロブレム号は魔王であるオーマが作った魔導船だ。

その能力は魔王の力が反映されており、破格の性能を誇っている。

それは、あのベルヘラにある世界最高最強の魔導船である、ブルーライフィード号さえも大きく上回っているのもで、当然、防御面でも装甲に魔王オーマの魔力が宿っているため、船の領域を凌駕する性能だ。

だが、それでもレインは改良されたココチア海軍の集中砲火からは無傷で済むとは思えず、被害が出ると覚悟し、自身の海軍総司令としての見通しの甘さを呪った。

 だが_____


______“アイス・エイジ”


______パキィイイイイイイン!!


______ズガガガガガガァアアアアアア!!


 空から響き渡った女性の声と共に、ロブレム号の周囲に、ロブレム号をすっぽりと覆う巨大な氷壁が出現し、ココチア海軍の一斉砲撃からロブレム号を守り抜いた。


「フレイス!?」


 レインが空を見上げれば、思っていた通り、凍結の勇者フレイスがスカルドラゴンライダーが操るアンデッド化した飛竜に乗って、こちらに向かって来ていた。


「レイン!!私はこのまま左翼を叩く!!いくぞ!お前達!!」


「「グギャァアアアアア!!」」


そして、遊撃隊としてそれだけ言ってロブレム号の上を通過し、空飛ぶ魔物達約1000体を連れて、そのまま敵艦隊のもとへと飛び去って行ってしまった。


「あ!?ちょ!?・・・もう!独断専行ですよ!ここの指揮官は私なのに!!」


完全に指揮官としてのお株を奪われたレインは、少しだけ拗ねたように声を荒げていた。


「ですが助かりましたね。フレイスさんの魔法が無ければ、結構な被害になっていたはずです」

「まだ第一波だという事を考えれば、ダメージは最小限にしておきたいですからね。ここは即断即決で船の防御に入ってくれたフレイス様に感謝すべかと」


ワー!キャー!と喚くレインを、シマズとシーヴァイスが宥める様に声を掛け、レインの精神安定剤となる。


「ぶぅ・・・しょうがないですね」


等と言いつつも、シマズの言う様にフレイスが防御してくれていなければ被害が出るのは免れなかったため、レインも内心では、戦いの天才であるフレイスの戦闘勘に感謝と畏怖を抱いていた。


「ふぅ・・・・よし!」


 そして気を取り直して、海軍総司令としての仕事を始める_____。


「左翼はあのままフレイスと魔王空軍に任せます!シマズさん!」

「了解____」


シマズは言われてすぐに通信魔法を空軍の通信兵に向かって飛ばし、レインの指示を伝える。


「右翼はシーヴァイスにお願いします。上級魔族を3個大隊連れて迎撃してください。中央は私とロブレム号が先行して迎撃します」

「かしこまりました。では、私は出撃しますので、海中の部下に指示を出せるように、セイレーンを置いて行きます」


そう言ってシーヴァイスは隣に立たせていた人型の女性悪魔を紹介する。


 今の大陸の人類が扱う通信魔法は、その全てが風魔法をベースに造られているので、海の中には通らない。

そのため、海中の魔族に指示を伝える場合は別の手段が必要なる。

例えば、先程シーヴァイスがやったエコーロケーションのようなものだ。

セイレーンはそのための存在、いわば海中用の通信兵だ。

 人型で大きさも160㎝と人並、女性の艶めかしいスタイルをしているが肌は背中が灰色でお腹が白くイルカの様だ。肌質もイルカの様にツルツルとテカっており、触るとゴムの様な質感を感じる。海洋生物らしく泳ぐのに向いている水の抵抗を減らせる肌だ。


「よろしくお願いいたします。レイン様」


セイレーンは、魔族とは思えない透き通った声で、これまた魔族とは思えぬ恭しい態度でレインに挨拶した。


「はい。よろしくお願いします。ではセイレーン。最上級魔族達に指示を出してください。中央の私達と、右翼のシーヴァイス、左翼のフレイスの防衛線の後ろに展開して、更に防衛線を敷いて私達が取りこぼした敵船を迎撃するよう伝えてください。もちろん魔王様の意向に沿って、人的被害は最小限に」

「かしこまりました。・・・___________♪」


指示を受けたセイレーンは、シーヴァイスと同様に超音波を発して海中の魔族達にエコーロケーションでレインからの指示を伝える。


「よし・・・では私たちは敵艦隊中央を迎撃します!!ロブレム号!全速前進!!」

「全速前進!!」


レインは更に、ロブレム号の操舵手に指示を出し、ココチア海軍を迎撃するべく、ロブレム号を走らせるのだった_____。




 人類連合艦隊左翼がいる戦域_______。


 「船の動きを止めるのが一番確実だが・・・・」


スカルドラゴンライダーに船との距離を詰めてもらいながら、フレイスは作戦を考える。

敵軍の進撃を敵味方の被害を最小限にして食い止める_____極めて困難な作業ではあるが、フレイスなら期待が持てるはず・・・なのだが


(帝国軍がいてはな・・・)


 もっとも簡単な手段は、フレイスが広範囲に渡って海を凍らせて、人類連合の左翼艦隊の船を座礁させてしまうことだが、それはフレイスの考えている通り帝国軍がいては難しい。

帝国第一貴族・・・例えば、ホンダ・ニツネ・ジョウショウのように、炎属性をSTAGE7まで扱え、自身だけでなく叢原火といった召喚した幻獣でも高火力な炎魔法を扱える者がいれば、海を凍らせても突破されてしまうだろう。

それに帝国兵は並みの兵士でもSTAGE3(連結)を扱え、連携して集団魔法を繰り出せる。

第一貴族の傘下の精鋭なら集団速攻魔法も出来るので、フレイスの氷結魔法にも即座に対応できるだろう。


(私が足止めをやるのは上手くないな・・・時を止めたとしても、これだけ広範囲に広がられては、全艦隊を無力化するのはできないし、すぐにガス欠だ・・・・・ならば!)


必然的に部下に足止めしてもらい、自身が船に乗り込んで、人的被害を出さないように無力化して行く作戦に決まる。


「ボマー・ヘルコンドル部隊!魔法術式展開!岩を落として敵の進行を妨害せよ!!」


「「グギャァアアアアア!!」」


「ヘルコンドル部隊!フェイクフェニックス部隊の両隊は風で船を煽れ!!」


「「クワァアアアアア!!」」


「アルケノン・ミノタウロスとグレーターデーモンは船へ攻撃だ!人に当てるなよ!」


「「ギョイ」」


「「御意!!」」


 フレイスの指示が飛ぶと、魔王空軍が部隊ごとに散開した。

そして命令通りに、空の魔物でありながら土属性魔法が扱えるボマー・ヘルコンドルたちが巨大な岩を船の周囲に落として威嚇する。

更に、ヘルコンドルとフェイクフェニックスが風魔法で突風を呼び寄せて船を煽る。

そうすることで人類連合の艦隊が船は、煽られる強風と進路を塞ぐ巨岩とで、直ぐにまともに進めなくなってしまう。

 そして当然、乗っていた島への上陸部隊である帝国兵達が、この事態の対応に追われることになる。


「ハリケーン・ウォール!」


「「おお!!」」


「ファイヤーボール!撃てぇ!!」


「「おう!!」」


 これに対応すること自体は、帝国軍にとって余裕な作業である。

乗っている各小隊ごとの集団魔法で簡単に魔獣達の放った旋風を弾き、落石を打ち砕いてみせる。

そして更に手の空いている部隊が、ヘルコンドルなどの魔獣を直接討ち取ろうと、魔法術式を展開するといった鮮やかな対応を見せている。

咄嗟の対応と連携____指示を出す指揮官も指示を実行する兵士も、この作業をよどみなく行えていた。

これが敵に回して改めて知ることになる帝国軍の強さだった。

 だがそんな帝国軍でも、魔王軍相手に魔獣の迎撃までしようとするのは、欲張り過ぎであった_____。


「「フレイム・レーザー!」」


_______ドドドドドドウッ!!______ズドドドドーーーー!!


甲板にいる兵士の殆どが手が塞がったタイミングで、グレーターデーモン、アルケノン・ミノタウロスたち上級魔族による上級魔法が人類連合艦隊の船に炸裂するのだった______。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ