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チート勇者ろうらく作戦  作者: 脆い一人
最終章:チート勇者ろうらく作戦
370/376

決戦前(2)

 ゴレスト神国、オンデールがあるオンデンラルの森______。


 「よー、ナナリー?」

「はい?ミクネですか?何か問題でも?」

「いや、オーマから帝都前まで潜入したと報告を受けてな、ついでにみんなにも報告をしてもらおうかと思って_____だから照れ隠しじゃねーーー!!」

「は、はい?」

「______分かったな!・・ああ、すまんすまん。それで今度は遠くから行くことにしようと思ってな」

「はぁ・・・・?」


“今度”の意味するところが分からず困惑するナナリーだったが、ミクネのテンションと口調で緊急事態ではないと理解したので深くは追及せず、とりあえず近況報告を上げる。


「こちらも特に問題ありませんよ。三日前にも報告しましたが、私の持つイロードの“お得意様”の伝手を使って秘かに国境を超えた後は、オンデンラルの森に入り、サレンの案内で無事オンデールに辿り着きました。今は、オンデンラルの森に陣を張って、戦闘の準備中です。追加の報告となると、一度サレンが斥候に出て敵軍の様子を見て来てくれましたが、敵戦力はミクネが索敵してくれた時とほぼ変わらず、問題なく対処できそうってことくらいです」

「だろうな」

「はい?」

「いや、だって、そこに居るのは西方連合の兵で構成されている部隊で、帝国軍はいないからな。ゴレストとオンデールだけだとオンデンラルの森で迎え撃っても兵数差で心配があるが、サレンと最上級魔族もいる魔王軍の軍勢が加われば楽勝だろう。他の戦場に比べると、そこが一番余裕なはずだ。知ってた」

「はぁ・・・」


そう思っていたのなら何故もう一度報告させたのだろう?と思うナナリーだったが、それを言うと面倒なことになりそうなだと空気を読んだ。ので______


「えーと・・・そうですか、さすがミクネですね」


______何がどう流石なのかは分からなかったが、とりあえず褒めておいた。


「バ、バカ!!褒めたって何にも出ないぞ!」


______しっかりツンデレが出てますよ?と思うナナリーだったが、これも言ったら面倒だろうな・・・と思って止めておいた。


「と、とにかく!報告が聞きたかったんだ!ありがとな!切るぞ!」

「あ、あの・・・」

「_______」

「あ・・・」


そう言って、ミクネは通信を切ってしまった。

結局、なんのための通信だったのか、ナナリーには最後まで分からなかった・・・。


「ふぅ・・・」

「どうしたんだい?ナナリー?」

「今のミクネからですか?」

「ああ・・アデリナ、サレン。はい、ミクネからの通信でした」

「そうですか、それでミクネは何と?」

「どっかで戦闘が始まったかい?」

「いえ、何もありません・・・」

「はい?」

「あん?じゃー、ミクネはどうして連絡して来たんだい?」

「それは・・・」


「「それは?」」


「・・・・・・・」


「「・・・・・・」」


「・・・・・暇だったのではないでしょうか」


「「はあ?」」


そう結論つけるナナリーだった______。





 「・・・ミクネ様、連絡を取り合うのなら、ちゃんとなさって頂けませんか?魔王様のお創りになった魔道具で遊ばないで頂きたいのですが・・・」

「うっせーな!分かっているよ!」

「・・・・・・・」


絶対分かっていないだろうなと思いつつ、ミクネがもう気まずくならないようにスルーして、代わりにお茶のお替りを用意する気遣いが出来るボロスだった・・・・。





 サウトリック地方、スラルバン王国、シルクロード______。


 「おーい、クシナぁ?」

「はい?ミクネですか?どうしました?」

「ああ、オーマから準備が整ったって知らせが来たから、他の部隊の近況も把握しておきたくて、報告をもらおうと思ってな」

「そうですか、ご苦労様ですね。こちらも順調ですよ。特に問題ありません。ベルジィの力があれば、たとえ砂漠でも潜伏するのに苦労はありませんから。人類連合の物資の搬送方法も大体把握しています」

「どんな感じだ?」

「普通に帝国兵の格好をした輸送部隊と、行商に変装した輸送部隊とに分かれていますね」

「帝国兵の格好をした奴らは囮か?」

「そうですね。囮であり本命ですね」

「あん?」

「帝国は、帝国兵の格好をした部隊にも、行商人に変装させた部隊にも十分な量の物資を積んで運ばせています。恐らく帝国兵の部隊が襲われても、行商人の部隊が襲われても、物資が届くようにしてあるのだと思います」

「要は、物量作戦か?どっちかが港に無事につけば物資が十分に補給されるようになっているんだな?」

「そうです。まあ、“魔王との人類の存亡をかけた戦い”という名目なら、大陸中から物資も人も集められるでしょうから、囮を増やしたり偽装を工夫したりするより、囮役もすべて本命にして物資を運ばせた方が確実ですよね」

「そうか・・・じゃあ、作戦は?」

「はい。被害を抑えつつ、偽装した輸送部隊を含めて、全て抑えなければならないので、やはりベルジィの“幻惑の力”の出番かと。幸い、物資を運んでいる部隊の兵士のレベルは高くありませんから、まとめて幻惑にかけれらます。今はそのために敵を誘導する準備中です」

「そうか、相手側の潜入部隊は?オーマが言うには、自分の考えを読まれているから、クラースは私たちがシルクロードで輸送部隊を襲撃すると思っているのだろう?」

「そうですね。今のところ姿は確認できていませんが、ただフランが言うには、“間違いなく居る”そうです。なので、そちらも視野に入れて準備中です」

「そうか、そこまで分かっているのなら安心だな。任せたぞ」

「はい。ミクネもご苦労様です」

「ああ、じゃあな_____」


____と、一通り近況を聞いて、ミクネはクシナとの通信を終えた。


 「・・・・・・」

「おう、ボロス。クシナ達の部隊も問題は無いってさ」

「・・・・・・」

「?・・・どうした?」

「いえ、今度は真面目に報告を受けていらっしゃったので・・・意外でした」

「なんだぁ?不真面目にやると思っていたのか?」

「いえ、不真面目にするとは思っておりませんでしたが、暇つぶしに世間話くらいはするだろうと・・・」

「ふん・・・クシナとそんな事できるか」

「はぁ・・・」

「あいつ、仕事に関しては本当に真面目だから、仕事中にふざけていると怒るという理不尽な性格をしているんだぞ」

「_________」


________“それって普通じゃね?”と、ツッコミは心の中だけにしておく気遣いのできるボロスだった。


「クシナは怒ると本気で怖いからな」

「そうですか。では、エルス海は報告を受けずともミクネ様なら把握できるはずですし、残りはリデル様ですね?」

「いや、アイツはいい」

「はい?何故です?」

「だってアイツ、面倒くさいんだもん」

「め、面倒くさい・・・?」


 オーマが魔王になったことで、新たな主人に仕えるようになったボロスだったが、リデルに対する恩と尊敬を捨てたわけでもなく、また、リデルがどれだけ優秀な人物かを理解してもいるので、ボロスからするとミクネの今の発言は理解に苦しむものだった。

少なくともボロスはリデルと一緒に仕事をしていて、面倒くさいと思ったことなど一度もない。恩や尊敬、主人であったというバイアスを抜きにしてもだ。


「リデル様の何が面倒くさいのですか?恐れながら、私は以前にリデル様に仕えておりましたが、リデル様を面倒くさいと思ったことは_____」

「だってアイツ、何かにつけてオーマのことで泣きながらグチって来るじゃん」

「_____なるほど」


直ぐに理解できてしまったボロスだった______。

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