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チート勇者ろうらく作戦  作者: 脆い一人
最終章:チート勇者ろうらく作戦
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決戦前(1)

 「_____ミクネ」

「おう!オーマか?何だ?愛の告白か?今は時間が有るから大丈夫だぞ。来い!」

「何言ってんだよ。何でそんなことを通信魔法で言わなきゃいけないんだ」

「ああ、それもそうだな。こういう事はちゃんとしなくちゃな。ちゃんと会って、二人きりでムード作って____だよな♪」

「あ、いや・・・別にそういうことを言いたかったわけじゃ_____」

「____何だぁあ!?私に愛の告白をしないのか!?こんなに可愛くて有能な上に、オーマが人間辞めても、他に女を作っても、受け入れて付いて行くと言っている、ちょ~~~献身的な私を振るって言うのかぁああ!!!?」

「す、すまん・・・そんなつもりは無い・・・」


“そういうことを言いたかったわけじゃない”というのは、“作戦中の今はそういう事をしている場合じゃない”ということで、ミクネを窘めようとしたオーマだったが、ミクネの勢いに押されて逆に謝ってしまった・・・後、内心で、確かに人間辞めて魔王になってしまい、他に女性がいても素人童貞の風俗野郎について来てくれるのは、“献身”という言葉では生ぬるいほど献身的だと思ってしまったというのもある。


「すまん、ミクネ。ミクネの言う通りではあるのだが、今は作戦の状況を把握したいんだ。頼む」

「しょーが無いな・・・終わったら、ちゃんと私に愛の告白しろよ?」

「・・・・・・」

「告白しろよ!!?」

「はい!!」

「よし♪」


作戦の事でミクネに連絡を入れたオーマだったが、話があらぬ方へと流れて行ってしまった。

 だが、どうにかミクネの機嫌を取って、とにもかくにもオーマは作戦の経過報告を受けるのだった。


「作戦は順調だよ。どこも問題ない。あえて問題にするならば、ボロスの出すお茶菓子と食事の質が落ちていることだ」

「それは、これから大規模な戦闘があるから仕方が無いだろう。ワンウォール諸島の住民の方々の予備も必要だし、それは問題に出来ない」

「ちぇ・・・」


今度のミクネの言い分には、ぴしゃりと言ってミクネを窘める。

ミクネも今度はわがままであると自覚していたのか、すんなり引き下がった。


「なら、やっぱり特別報告することは無いぞ?大体、こっちがクラースの誘いに乗った形なんだから、向こうも余計な事はしないだろう?」

「まあ、確かにな・・・」


オーマが帝都のドミネクレイム城に潜入してくれないと、勇者ルーリーをぶつけることが出来ないので、オーマが帝都に潜入できなくなる様な余計な事は向こうもやる気はないだろう。

そういった意味では、両軍が衝突するまでは、お互いに作戦を進めるのは容易なことだと言える。

 現にオーマは潜入メンバー(ヴァリネス、ウェイフィー、ミューラー、コレル)と共にワンウォール諸島の魔王城から出撃した後、帝国が今、ココチア連邦とボンジア公国へと物資を運ぶために、物や人の出入りが激しくなっている状況に混じってドネレイム帝国の領内に入ることに成功し、今は首都ドネステレイアの手前まで来て野営している。

少しナーバスになっているだけだったのか、ミクネの話を聞いてオーマは納得する。


「分かった。じゃあ、戦闘が始まったら、一報くれ」

「はいよ。またな」


そうしてミクネはオーマとの通信を終えた_____。


 「ふぅ・・・まったく、オーマも心配性だなぁ」

「お優しいのですね、ミクネ様は」


ミクネがオーマとの通信を終えたタイミングを見計らって、執事のボロスがお茶を出しつつ話し掛けて来た。


「お、気が利くな♪でもなんだ?お優しいってのは?どういう意味だよ、ボロス?」

「魔王様がナーバスになっておられたので、“愛の告白”などとおどけて見せたのでしょう?」


自分の主人に対して、ミクネなりの気遣いをしてくれたとこが嬉しかったのか、ボロスの口調は穏やかだった。


「ふふん♪まあな。大将であり夫であるオーマを支えるのは当然だ。だから愛の告白をして欲しいってのは98%くらいしか本心じゃない」

「あ・・・そうですか」


殆ど本心で言っていたのだと分かって、ミクネの評価を改めるボロスだった・・・。


 「そ、それで・・ミクネ様?魔王様はなんと?」

「ああ、向こうも順調だってよ。無事に潜入できたそうだ」

「そうですか・・・」


その話を聞いて、ボロスの厳つい顔があからさまに安堵の表情へと変わった。

どうやらボロスも魔王に対しては、かなり心配性らしい・・・。


「お前も大概心配性だな」

「我が主人なれば、当然かと」

「お、おう・・」

「魔王様は他にはなんと?」

「ああ・・戦闘が始まったら、また一報くれって」

「そうですか。それでしたら念のため、他の方々とも連絡を取っておかれてはいかがでしょうか?」

「ボロス、結構ナーバスになってんのか?」

「・・・かもしれません。この戦いで我ら魔族の命運も決まりますから。それに_____」

「?」

「私は前回の魔王大戦を知っておりますので・・・」

「ああ、そうか、そうだったな。ならナーバスにもなるな。すまん」

「いえ、この大一番でもいつも通りでいらっしゃるミクネ様を頼りにも感じておりますので」

「な、何だよ!!・・・べ、別にボロスに褒められたって嬉しくなんかなんかななななないんでねーからな!」

「ツンデレていただかなくても大丈夫なのですが・・・」

「私はツンデレじゃない!!・・・まったく、しょうがない。ボロスが言うから、他の連中とも連絡とってやる」

「照れ隠しですね?」

「うっせーーー!!違う!!」

(分かり易い御方だ・・・)


と、気まずい気分になったから、話題を変えるノリで他の者達と連絡を取ろうとするのをボロスに見透かされながら、ミクネは他の者達とも連絡を取るのだった______。






 ワンウォール諸島、魔王陸軍駐屯地_____。


 「ユイラー?」

「はい!?ミクネですか!?どうしました?定期連絡はまだですよね?」

「いや、オーマから連絡が来たからさ。ついでに報告をもらおうかと思ってさ」

「そ、そうですか、こちらは問題ありませんよ。兵の士気も魔族の士気も下がっていませんし、避難しているワンウォール諸島の住民の皆様からも問題は出ていません」

「知ってる」

「は?」

「私をナメるなよ?ユイラ?私の力とオーマの用意してくれた魔王城の魔導設備があれば、ワンウォール諸島の島々の様子なら、兵士の愚痴や魔獣の腹の音まで把握できるぞ!えへん!」

「はぁ・・・では、なぜ私に通信を?」

「・・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・暇だったからだ」

「は?」

「じゃあな______」

「あ・・・」


そう言って、ミクネはさっさと通信を終えてしまった_____。


「・・・・な、なんだったのでしょう?」

「どうしました?ユイラさん」


通信があった事とユイラの表情が気になったのか、一緒に指令室にいたロジ、ジェネリー、サスゴットから注目が集まる。


「あ、はい、ロジ司令・・・その、ミクネさんからなのですが・・・・」

「そうでしたか。それで?ミクネさんはなんと?」

「いえ、団長から連絡が来たそうなので、ついでにこちらの状況も把握しておきたいと・・・」

「はい。それで?」

「お答えしたら、“知ってる”と・・・」


「「?」」


「実は暇だったそうです」


「「・・・・・・」」


「何をやっているのだ、あいつは・・・」

「暇つぶしで軍の通信を使うとは・・隊長、取り締まりますか?」

「そうだな」


作戦中だというのに、“暇つぶし”で軍務連絡を取るという不真面目な態度のミクネに、憲兵隊長と副隊長の怒りに火が点く。


「ちょ!?ちょっと、お二人共落ち着いてください!」

「あ、あわわわわ・・・」


本気か冗談か分からないレベルで怒りを燃やすジェネリーとサスゴットに慌てて火消しに入るロジだった・・・。




 「ミクネ様・・・今の通信は何だったのですか?」

「うるさいな!ボロスが“頼りに感じる”なんて変なこと言うから悪いんだぞ!」

「・・・・では、“頼りない”と言った方がよろしかったでしょうか?」

「よろしいわけあるかっっっ!!」


などといったやり取りをする、意外といいコンビのミクネとボロスだった______。

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