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チート勇者ろうらく作戦  作者: 脆い一人
最終章:チート勇者ろうらく作戦
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決戦準備

 チート勇者ろうらく作戦会議で作戦が決定すると、オーマはミクネに人類連合の動きを見張ってもらいつつ、直ぐに作戦の準備に入った。

 そして、その動きに合わせるかのように、人類連合の動きも活発になる。

これは、魔王軍側に、魔王城にある魔王の力で作った観測用の魔導設備でその観測範囲を大陸全土にまで広げたヤトリ・ミクネが居て、人類連合側には魔導機関ウーグスの魔法設備と千里眼を使える最上級魔族ヴァサーゴを使役できるカスミが居るが故、両軍ともに相手の大体の動きを直ぐに把握することが可能だということが理由の一つで、もう一つの理由に、人類連合の総指揮官であるクラースが、魔王軍の総指揮官であるオーマの思考パターンを完全に読んでいるということと、オーマがその自分の考えがクラースに読まれている事を自覚しているというのがある。

そんな理由で両軍の動きが連動しているこの現象は、両軍の事情と軍略に明るい者なら、“一度両軍で打ち合せをして決戦の舞台を整えている”と感じるほどに、お互いに示し合わせた動きだった。

それはつまり、オーマがクラースの誘いに乗って、軍という群だけでなく、個の力を采配しているということでもある_____。




 オーマの采配は先ず、本拠地であるワンウォール諸島の魔王城には、魔王城の設備を使って広域観測と広域通信をする広域観測班班長ヤトリ・ミクネを置き、そのサポートと魔王城の防衛として、防衛隊長ボロスとボロス配下の魔王城防衛部隊と魔王親衛隊(兵士のみ)が配置されている。

そして、主戦場となるエルス海南部と、ワンウォール諸島の島々には、人類連合がココチア連邦とドネレイム帝国の主力をボンジア公国とココチア連邦の港町に集結させている動きに合わせて、エルス海には魔王海軍を配置。指揮官には主要メンバーから海軍総司令レイン・ライフィード、海軍副司令シーヴァイス、作戦本部副司令アーグレイ・フォリス・フォルビッチ、作戦本部班長シマズが配置されており、人類連合が島に上陸して来た場合の迎撃役として、魔王陸軍を配置。指揮官には主要メンバーから、憲兵隊長ジェネリー・イヴ・ミシテイス、陸軍総司令ロジ・レンデル、憲兵副隊長サスゴット・ヴィーデル、作戦本部班長ユイラ・ラシルが配置されている。

 更に、魔王陸海軍のサポート役として、魔王親衛隊長フレイス・フリューゲル・ゴリアンテが魔王空軍の精鋭部隊の指揮権をリデルから引き継いで、配置されている。

そしてそのリデル・シュグネイアは、オーマ達帝都潜入部隊をサポートするため、魔王空軍総司令として魔王空軍を連れて帝都を強襲する手はずになっている。

 この魔王大戦は、オーマ達が潜入する帝都が主戦場で、エルス海とワンウォール諸島が一番大規模な戦場となるが、他にも戦場がある。

それは西方のゴレストとオンデールだ。

 人類連合への参加要請____つまり、ドネレイム帝国からの“人類一丸となって魔王を倒そう!!”という呼びかけに対して、ワンウォール諸島の住人を人質に取られている(ことになっている)のを理由に断ったセンテージと違い、ゴレストとオンデールは自分達の都合で参加を拒否したことで、帝国らから反感を買い、報復を・・・いや、見せしめを受けることになってしまう。

ゴレストとオンデールは帝国から宣戦布告を受けたのだ。


 人類の存亡をかけた戦いとはいえ、戦う相手は魔王と魔族。魔王オーマとその傘下の実態を知らぬ者達からすれば、その存在は恐怖の対象でしかのないのだ。戦闘狂のラヴィーネ・リッターオルデンや、実戦経験豊富なドネレイム帝国軍と他国の兵士ではワケが違うのだ。

その他の軍の兵士達は、上級魔族を前にして敵前逃亡してしまっても全くおかしくない。

そんな並の兵士では逃げ出したくなるような魔族と戦わなければならないのが“魔王大戦”で、人類がその結束を図るには、それなりの事をしなくてはならない。

人類存亡をかけた魔王大戦を前に、何の理由もなく不参加を決め込んだ国を放っておいていては、人類連合の指揮に影響が出てしまうのだ。

そのためクラースは、人類連合の結束を強めるための見せしめという意味合いと、魔王軍の戦力を割るという意味合いで、ゴレストとオンデールに軍を差し向けたというわけだ。

 そして、その動きを魔王軍は当然察知する。

オーマ達が勇者ろうらく作戦の作戦準備を進める中で、ゴレストの隣国、ポーラ王国に西方各国の軍隊が完全武装で集結しているとミクネから報告が上がった。

 これにオーマは、表立ってゴレストとオンデールを手を組んだとは公表していないため、偶然という形を装って、魔王陸軍から部隊を派遣して援護することを決めた。

指揮官には主要メンバーから、魔王軍神官長サレン・キャビル・レジョン、陸軍副司令アデリナ・ヴォルフ、作戦本部班長ナナリー・ユジュが配置される。

 そしてもう一つ、ミクネやカスミの“目”と“耳”の届かぬところで、秘かに戦場になろうとしている場所がある。

それがスラルバン王国にある砂漠“シルクロード”だ。

 人類連合はその戦力の多くをボンジア公国とココチア連邦にある港に集結させている。

そのため、その必要物資は南部のサウトリック地方の国々からだけでは足りず、大陸の各地方の国々からも物資を用意しなければならない。

そしてその必要物資は、一度大陸中央の帝国に集められ、南部へと運ばれている。

 オーマはこれに目を付けた。

帝国から南部への物資の輸送ルートは、以前にボンジア公国とスラルバン王国の情勢を語ったときにも言ったことだが、2つしかない。

ボンジア公国が所有しているエルス海の海運ルートと、スラルバン王国が所有するサウストラ砂漠のシルクロードの2つだ。

そして現在、魔王軍がワンウォール諸島に常駐しているため、ボンジアの海運ルートは使えない。

つまり、帝国からのボンジア公国とココチア連邦の港への物資輸送は、全てシルクロードを通るため、ここを抑えることが出来れば、エルス海に出撃する人類連合の補給を断つことが出来るということになる。

被害を最小限に抑えたいオーマにとって、敵の補給線を断つことは非常に魅力的なため、是非ともシルクロードを抑えたいところ。

そのためオーマは、隠密や強襲を得意とする兵や魔物からなる強襲部隊を編成し、指揮官には主要メンバーから、魔王軍諜報部特別顧問ベルジィ・ジュジュ、魔王軍諜報部班長フラン・ロープ、作戦本部司令部長クシナ・センリ、魔王軍人事部長、イワナミ・ムガを編成して、シルクロードに送り込んだのだった。

 だが、人類連合側のクラースも、このシルクロードが魔王大戦においてアキレス腱になっていることは把握しているため、クラースもまた、シルクロードの防衛部隊を帝国軍から編成して配置しており、ここでもオーマとクラースは互いに示し合わせたかのような用兵になっていた。

 余談だが、そうして両陣営が示し合わせたかのように軍の準備と運用をしている最中、オーマは指示を出しつつ、せっせと戦場となるワンウォール諸島に住む住民のために、その力で避難所のシェルターと数か月の間は住民が飢えずに済む食料を創生していた・・・・・。

 そして、それが終わると、オーマは今作戦の要である潜入部隊(ヴァリネス、ウェイフィー、コレル、ミューラー)を連れて、フェンダーを生き返らせるため、勇者ルーリーやクラースが待ち受けているだろうドネレイム帝国の首都、ドネステレイアへと出撃した______。



 魔王軍と人類連合の両軍が準備と配置を終えた、FD921年9月。

夏が終わり、収穫の秋が始まろうかという時期に、歴史上幾度となく行われて来た魔王大戦が再び始まろうとしていた______。

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