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チート勇者ろうらく作戦  作者: 脆い一人
幕間:魔王となったオーマ・ロブレム
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事情説明・状況説明(3)

 「______速すぎる!!??」


 魔王となったオーマが、こうも簡単に勇者ルーリーの火炎魔法に圧倒されてしまった理由とは、単純にルーリーの方が魔法を繰り出すのが速かったからだった。

先に攻撃されて、先に攻撃を当てられ続けたから、手も足も出なかったのだ______。


 オーマを擁護するわけでは無いが、オーマの魔法術式の展開速度は尋常ではない。

魔王となった今のオーマの術式速度は、クラース達第一貴族はもちろん、勇者候補たちよりも速い。

 例えばもし、魔王オーマが勇者候補たちのトップの二人のサレンとフレイスなんかと戦ったとしても、サレンが静寂の力を使うよりも速く、フレイスが時を止めるよりも速く、オーマは先制攻撃を仕掛けることが出来、容易に迎撃できてしまうだろう。

それが魔王となったオーマの魔法技術のレベルだ。

 だがルーリーは、そのオーマよりもっと速かった。

何故ならば、勇者ルーリーの魔法には、“速い”という概念すらない存在しなかったからだ。


「ま、魔法術式すら無かったぞ!?どういうことだ!?」


そう、ルーリーの魔法攻撃の速さが異常なのは、魔法術式が展開されることなく魔法が発動していたからだった。

 これこそが真の勇者ルーリーの力だった。

これまでのファーディー大陸には無かった次元の能力なので、いつもの様にドネレイム帝国の基準で表現するのは難しい・・・。

だがあえて表現するならば、STAGE9だろう。何かの特別な属性では無いのでRANKではなくSTAGEだ。

勇者ルーリーの能力とは、STAGE8(融合)の更に上、STAGE9(原理)とでも呼ぶべき力なのだ。

ルーリーはこのSTAGE9とも呼べる魔法技術を使った炎属性魔法でオーマを圧倒したのだ。

 どういう事かというと、ルーリーは炎を融合するSTAGE8の様に、炎そのものに“成る”のではなく、炎を生み出す根本、原理そのものになっているということだ。


 だからつまり、それってどういうこと____?


 ちゃんと説明するには、そもそも“魔法術式”とは何か?を説明しなければならない。

 “魔法術式”とは、簡単に言ってしまえば“仕掛け”、その属性の力を生み出す、“仕掛け”なのだ。

 例えば、現実の世界で人が火を起こすとき、人はどうするか?色々な方法があるだろう。

ライターで火をつける。

ガスコンロで火をつける。

マッチで火をつける。

様々あるが要は、“火を起こる原理を基に作られた仕掛けを作動させて、火を起こしている”ということで、魔法術式とは、このこれにあたるのだ。

他の者達は、フレイスのRANK4にしろ、レインのSTAGE8にしろ、時を止めるための仕掛け、雷と融合するための仕掛けを先ず魔法術式で作らないといけない。

 だが、ルーリーは違う。

ルーリーは、この仕掛けを必要とせず火を起こせる。

またはルーリー自身がその仕掛けそのものとなっているとも表現でき、ルーリー自身が炎を発動する魔法術式そのものになっているような状態なのだ。

炎を起こす魔法の仕組みそのものになっていて、仕掛けである魔法術式が必要なくなっているのだ。

以上のような解説になろうだろうか?

 今のファーディー大陸の知識では、このルーリーの能力を完全に紐解くことは出来ないだろう。

なので、この時もこの後も、オーマ達の中でルーリーの能力は、“何でかは知らないが、魔法術式を必要とせず魔法を発動できる力”という認識になるのだった。

そして、ルーリーの能力をそう認識したときのオーマのリアクションは、驚愕という言葉でも生ぬるいほどの恐れと驚きだった。


(さ、最強の力だ・・・・)


心の中でオーマはハッキリとそう認識していた_____。




 最強・・・最高・・・いわゆる“チート能力”と呼べるものの中で、“最強の力”とはなんでしょうか?

読者の皆様はどうお考えですか?

少しメタな文章になってしまい恐縮ですが、もし読者の皆様が“自分の想像できるあらゆる力を実現できる”としたら、どんな力が最強と思うでしょう?

どんな攻撃に晒されても死ぬ事の無い、不死身の力?

何者にも捉えられない最速の攻撃を繰り出す、閃光の力?

どんな力でも封じ込めてしまう、静寂の力?

何でも破壊できる、烈震の力?

多くの人を欺き操ることが出来る、幻惑の力?

この世の時間の流れを止める、凍結の力?

それとも、あらゆる物質や生物を創り、死者さえ蘇らせられる、創成の力を最強とするでしょうか?

 実は作者は、今上げたどの力も、最強・無敵と呼べるものになれると考えています。

 ですが、それら全て、必要な時に必要な場面で発揮されなければ、最強とはならないとも考えています。

そう、こと“戦い”というジャンルに限定すれば、どの力も相手に発揮できなければ意味が無いでしょう。

個人的に最強の力とは、どんな力でもいいが、必ず“殺られる前に殺れる力”でなければならず、これが体現できなければ、どんな力も最強にはなれず、これが体現できるのなら、どんな力でも最強になり得ると思うのです。

 つまり、“戦い”においては、“殺られる前に殺れる”能力こそ最強なのだというのが作者の意見です。

 そういった意味で、他の者達が力を発揮するために、魔法術式という仕掛けを作る一種の“タメ”が必要になるのに対して、そのタメを必要とせず相手を殺傷できる魔法を発動できるルーリーのこのSTAGE9(原理)は、オーマが言う様に、このファーディー大陸という世界の戦闘においてという限定ではあるが、誰に対しても“殺られる前に殺れる”を体現できるため、最強と呼べる力ではないでしょうか?

というのが、作者の考えでございます。本編へ戻ります。




 ただ仮に、ルーリーの力が最強ではなかったとしても、現状オーマにルーリーと戦う術は無く、魔王になったことで得たその自慢の肉体の耐久力も底を尽きかける・・・。

そばに居たリデルも援護に入りたかったが、ルーリー相手では割って入るスキがなかった。

 そして、いよいよトドメというところで、人が集まって来たのだ。

第一貴族や勇者候補が本気で暴れてもビクともしない王城の中庭の魔導施設だったが、魔王と勇者が暴れては耐えられるはずもなく崩壊してしまい、ただ事ではないと感じた第一貴族や衛兵が姿を現したのだ。

 現れた者達の中には勇者候補たちもおり、場は一気に混乱した_____。

その時、周囲の者達を巻き込んではいけないと思って、戦う事を躊躇したルーリーのスキを突いて、オーマは勇者候補たちと共に中庭を脱出した。

 それからは、魔王の姿に混乱する皆を宥めつつ、当初の作戦通りにサンダーラッツとラヴィーネ・リッターオルデンを連れて帝都を離れ、西に向かう。そしてベルヘラでプロトスに会って事情を説明して、ワンウォール諸島までやって来たというワケだった_____。




 「なるほど・・・だが、まさかドネレイム帝国の皇帝が真の勇者だったとはなぁ・・・」

「何と言いますか、よりにもよってというヤツですね・・・」

「いや、個人的にそれはいい」


 そう、オーマはルーリーが勇者だったことに驚きこそしたが、特に不都合だとか、そういうネガティブな感情は抱いていいない。

オーマの今後の展開に関しても、ルーリーが勇者であることは、大きなメリットがある。

 それより、あの日の事でオーマが一している後悔は、フェンダーとリッツァーノの二人を救えなかった事と、クラースにフェンダー殺しの濡れ衣を着せられてルーリーに誤解された事だ。

 あの混乱の最中とはいえ、オーマが魔王となった腕試しとしてクラースとカスミを相手にしていたときは余裕があったのだ。

その時にフェンダーを生き返らせて、リッツァーノの石化を解除して救出しておくべきだったのだ。

その事を、オーマは帝国を脱出した後から今日まで、ずっと後悔していた。

特に、今後の事を考えれば、フェンダーが居るのと居ないのとでは、大陸平和の実現の難易度は桁が変わる程大きいのだ______。

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