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チート勇者ろうらく作戦  作者: 脆い一人
幕間:魔王となったオーマ・ロブレム
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魔王オーマの城

 「だーもう!うるさいな!大体にしろ、お前には避難所に運ばれた怪我人の治療を任せていたはずだろ!?」

「そんなもの、サレンが居たからとっくに終わっていますぅ!」

「おー・・・さすがは我が魔王軍幹部の魔導大神官。頼れるなぁ」

「うぅ・・・魔王軍の神官の役目は、人間を治療する事じゃないのに・・・くすん」

「ええい!何でそう、いちいち泣くんだ!?リデル!昔のエロ可愛かったリデルは何処へ行った!?」

「だってぇ!魔王様が!魔王様が人間を滅ぼすどころか人間と仲良くしているんですもんっ!!」


 せっかく、念願の魔王を無事に誕生させることが出来たリデルだったが、その肝心の魔王には人間に対する敵意が何故か全く無く、それどころか人間との共存を唱えて、ワンウォール諸島の住人には手厚い対応をしていることに泣き崩れてしまう・・・。


「うわーーーーん!!私、こんな事するために、頑張ったわけじゃないのにーーーー!!」

「あー、うるさいうるさい。とにかく、手が空いているなら、他を手伝って来てくれ」

「うわーーーーん!!魔王様に邪険にされたーーー!!ヤーーー!!もうヤーなのーー!!」


などと泣きわめきながらも、主人のオーマに逆らうことはせず、命令通りに他の手伝いをするべくパタパタと飛んで行くのだった____。




 「まったく・・・騒がしい奴・・・ん?」


と、オーマがリデルを見送って空を見ていたところに、一匹の蝶が飛んで来た。


「今度は誰からだ?」


そう言ってオーマが蝶に向かって手をかざすと、蝶はそれを理解しているかのように、オーマの手の甲に止まった。

 この蝶はオーマの魔法によって創り出された生物だ。

通信蝶____。魔王となったオーマの生命属性によって創造された通信魔法を受信できる蝶だ。

オーマが決めた相手とだけ通信することが可能という特徴がある、ミクネ真っ青な魔導生物だ。

今のオーマはこんなことも出来る、チート勇者ならぬチート魔王だった。


「団長・・あ、いえ、魔王様?」

「クシナか?別に団長でも構わないぞ」

「そ、そうですか?ありがとうございます。その、正直、まだ団長のことを“魔王様”と呼ぶのには違和感がありまして・・・」

「俺も同じだ。お前達からの“魔王様”は正直こしょばゆい。それで?用件は何だ?」

「あ、はい。魔王城にプロトス様が参られました。予定通り、デティット様とアラド様もご一緒です」

「そうか、分かった。すぐに行く____」


そう切り上げて、オーマは通信を終える。


「申し訳ない、町長。城に客人が来たんだ。これで失礼するよ」

「いえいえ、こちらこそ、お忙しいところをありがとうごぜぇますだぁ」

「いあ、なに・・・。また何かあれば、遠慮なく城に人を寄こしてください。____では!」


オーマはそれだけ言うと、魔法で宙に舞い、そのまま飛び去って行く____


「「ありがとうーーー!」」


「「魔王様ぁーーー!!」」


オーマの飛び去る姿に、島の住人たちは笑顔で手を振って見送るのだった_____。






 ワンウォール諸島の島々で、最も大陸から離れた島の一番険しく高い山の山頂。

そこに“どうやって造ったんだ?”と言いなくなる巨大な城がある。

魔王オーマの城だ。もちろんオーマの魔法で創造した。

 大陸から離れた離島、険しい山々の山頂と、まさに小説なんかに出てくる悪魔の城といったところだ。

だが別に、オーマがそれを意識してこんな場所に造ったわけではない。

ただ、帝国軍に攻められた時の事を想定して、島の住人に迷惑が掛からぬ様に、住人たちから離れたところに造ったら、たまたま小説に出てくる様な場所と形になってしまっただけだった。


 そんな城の中に入ると、中はかなり綺麗で、床も壁も装飾されており、まとまりよく調度品が並べられている。

全体的な印象として、他の人間国家の城とそんなに変わりのない内装で、良く言えば堅実であり、悪く言えば平凡だった。

 だがこれは、敢えてそうしているのだ。

正直に言うと、オーマは別に王を気取るつもりは無く、根城は快適さと防衛力を重視して機能的な施設を考えていたのだが、周囲に反対されたのだ。

 理由は、魔王オーマが何故だか人間を一部の者達(第一貴族)しか憎んでおらず、それ以外の人間やエルフとは対立しる気が全く無いからだ。

つまり、オーマ率いる魔王軍は大陸の平和と人間達との共存を望んでいるということで、それならば各国と和平を結ぶために、会談などもする必要が出てくるかもしれないわけで、最低限、各国の要人を迎えられる内装にしなければならなかったということだ。

 そしてその内装にしても、相手に舐められない様に装飾しなければならないわけだが、今のオーマは人間ではなく魔王なので、あまり内装を豪華にしてしまうと、相手に対して威圧的になってしまう可能性も有るということで、そのバランスを考慮した結果、“どこにでもありそうな平凡な”内装になってしまったというわけだった。

 後ついでに言っておくと、城の建設はオーマが魔法でやったが、外観と内装の装飾はヴァリネスやレインなんかを中心に、いつもの主要メンバーが物品を取り揃えて装飾した。

魔王になって、体力も魔力も並外れた成長を遂げているオーマだったが、“センス”までは成長していなかったのだ・・・・・。


 城の入り口から廊下を歩き、玉座のある部屋の前の大広間に出ると、そこには一人の執事の格好をした体格のよい男がオーマを出迎えるべく控えていた。


「お帰りなさいませ、魔王様」

「ああ、ただいま。ボロス」


 出迎えた執事の名はボロス_____。

そう、帝都でリデルの側近として共にビルゲインを運営していた、あのボロスだ。

 オーマが自衛のために魔王軍を編成するにあたり、サンダーラッツ幹部、ラヴィーネ・リッターオルデン幹部、勇者候補たちだけでは幹部の頭数が足りなかったのだ。

だからといって、今の魔王となったオーマでは、初対面の人間やエルフからは人材を登用することが出来ないため、リデルに相談したところ、ボロスの名前が上がったのだ。

リデル個人も愛着のある部下だったのか、オーマが蘇生させると喜んでいた(加えてその時は、人間を滅ぼすための魔王軍編成だと思っていてノリノリだった)。

 今、ボロスには魔王城の防衛隊長兼オーマの執事を任せている。

 後ちなみにだが、魔族の幹部には、このボロスとリデル以外にもう一人居る。

元魔王軍幹部で、スカーマリスの准魔王として魔族を束ねていたシーヴァイスだ。

ボロスと同じ様に、リデルから使える有能な人材だと言われ、オーマの手によって蘇ったのだ。

シーヴァイスは今、ワンウォール諸島を拠点にしている魔王軍にとって必須である、海軍の海軍副司令官(海軍総司令官はレイン)として、普段は魔王城の在るこの離島の周辺海域の警護をしている_____。



 「ボロス、客人は?」

「ハッ、魔王様とご交流のある方々でしたので、玉座ではなく貴賓室の方にお通ししました。後、サレン様とレイン様にご同席頂くよう要請しております」

「ありがとう、ボロス。気が利くな」

「恐れ入ります」


 更に余談だが、オーマにとってボロスは、昔の店(昏酔の魔女)でのオーナーのイメージが残っていて、最初は少し取っ付き難いと感じていたが、ボロスは実はかなり気が利く人物で、(リデルが気に入っていた理由が分かる)今ではすっかりオーマにとって馴染んでいる人物だった。

 更に更なる余談だが、これはシーヴァイスにも言えることだった。

スカーマリスでサレンと死闘を繰り広げていたという話だったが、蘇らせてみると、オーマに対して非常に従順で、よく働き、周りの同僚である人間達に対しても配慮があり、空気を読むのが上手く、フランとコレルに見習わせたくなるほどだった_____。



_____ガチャ


 「三人とも、お待たせ」

「おお、来たかオーマ」

「・・・・・」

「・・・・・」


 オーマが貴賓室に入ると、出迎えたのは事情を知っていてフランクな態度のプロトスと、事情を全く知らないで完全に困惑しているデティットとアラドだった______。

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