表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
チート勇者ろうらく作戦  作者: 脆い一人
第七章:勇者と魔王の誕生
356/378

オーマ抹殺計画の要だったのは・・・

 「ゆ、勇者候補たちが真相を掴んで私を殺しに来ると言うのか!?バカめ!!そうならない様にヴァリネスを殺したのだろうが!!分からんのか!?」

「・・・・あ?」

「オーマ・ロブレムの抹殺計画・・・つまり勇者候補を帝国に依存させる計画、その最大の要はヴァリネス・イザイアの方だ!」

「え・・・?」


クラースから返って来た言葉に、オーマの中で、“我に返り、再び混乱する”という奇妙な事態が起こる。

オーマには、“クラースが勇者候補達に殺されないようにする=ヴァリネスを殺す”の方程式が作れない・・・。


「ククク♪その表情は分かっていないな?いいだろう♪これが本当の冥土の土産だ。貴様のろうらく作戦ではなく、私のろうらく作戦を完遂するための要が、何故ヴァリネスなのかを教えてやる」

「あ・・・な、何を・・?」


またもオーマの頭の中が?マークで埋まっていく・・・。

 オーマのろうらく作戦(反乱計画)ではなく、クラースのろうらく作戦という事は、勇者候補たちをオーマに惚れさせて依存させたところでオーマを殺し、オーマを英雄として祭り上げる事で依存の対象をオーマから帝国に変えるというもののはずだ・・・。


「クラース、いつまで時間を掛けるの?」

「もう少し待て。できれば見ておきたいものがあるのだ」

「もう勝負はついているでしょう?いつまでも虐めるのは可哀想よ?残酷ね」

「しつこいぞカスミ。なんだ?何か急ぐ理由でもあるのか?」

「別に急ぐ理由は無いわ。けど、私は早くその素材が欲しいのよ」

「まったく・・・ゴレストで一度は協力しただろうに、そいつを“素材”とはな。貴様だけには残酷などと言われたくないな。とにかくもう少し待て、こいつに勇者候補たちを我らの手駒とするのにヴァリネスが必要だったことを教えてやれば、恐らく私が見たかったものが見れる」

「もう・・・」

「・・・俺を抹殺するだけでは、なかったのか?」

「貴様が従順であったなら、それでも問題はなかった。だが、貴様は反乱を企てただろう?」

「・・・・・」

「そして、当然その事を勇者候補も知っているはずだ・・・・というより、反乱計画を話して仲間に加えているのだろう?そんな状態では、どんな筋書きを用意して貴様を殺しても、勇者候補たちは貴様の死に疑問を抱いて、私を疑うだろう。それでは帝国に依存する事など絶対にない」

「・・・・・」

「だから、予備のプランに変更して、勇者候補たちが依存する対象を別のものに変えたのだ」

「・・・別のもの?」

「貴様の死を疑うという“疑惑の念”だよ」

「“疑惑の念”・・・」

「そして、勇者候補たちの疑惑を使って帝国に依存させるにあたり、その要因になったのがヴァリネス・イザイアというわけだ」

「ああ?」

「貴様たちが作戦を進めるのを見ていた分かった事だが、貴様のろうらく作戦はヴァリネスが主導になって進めていただろう?」

「・・・・・」


決してヴァリネスに指揮を任せていたわけではないが、オーマが異性経験に乏しく、奥手であったためにサンダーラッツで一番社交性があるヴァリネスが仕切ることが多かったのは確かだ。


「貴様が色恋に疎いのは分かっていた。だから貴様にこの作戦を任せれば、必ず貴様と勇者候補たちとの橋渡し役・・・つまり、恋愛感情とはいかずとも、貴様と同等に勇者候補たちから信頼を得る人物が現れると思っていた」

「・・・・・」


確かに、ろうらく作戦を進める上で、ヴァリネスはオーマと勇者候補たちをくっつけるために、勇者候補たち全員から高い信頼を得ることになった・・・だが、それが何だというのだろう?


「フフフ・・・オーマよ、もし貴様が死んで勇者候補たちが私を怪しんだとして、それを貴様と同じくらい信頼されているヴァリネスに否定されたら、勇者候補たちはどうなると思う?」

「_____ッ!」


ここに来てようやく、オーマにもハッとするものが出て来た。


「そうだ。ヴァリネスに貴様が私たちに殺された可能性を否定されたら、ヴァリネスを信頼している勇者候補たちは証拠が無い限りそれを否定できないだろう。だが勇者候補たちの性格では、私たちへの疑念が晴れることもないだろう」

「・・・・・」

「結果として勇者候補たちは、限りなく私たちを怪しみながらもヴァリネスに否定され続け、疑惑の念を持ち続けることになる。そして、その疑惑の念がある限り、真相を確かめたい勇者候補たちが帝国から離れることもないだろう。私たちを怪しみ、場合によってはヴァリネスを怪しみながらも、似非鴉が化けたヴァリネスの指示しに従い、我らのコマとなって動き続けてくれるだろう」

「確証を得られない彼女達の“疑惑の念”が、彼女たちを帝国に縛り付けることになる・・・?」

「そういう事だ♪これがもう一つの・・お前が我らに反旗を翻したときの予備プランだ」

「________」


クラースの話を聞いてオーマは言葉を失っていた。

いや、言葉だけではなく、表情も感情も失っていた・・・完全に上を行かれていた。そう思ってしまったのだ。

そう自覚したオーマには、クラースに対する怒りも憎しみも無い・・・それを通り越してしまったのだ。

 クラースに対する怒り、憎しみ・・・自分に対する浅はかさ、後悔・・・仲間たちに対する申し訳なさ、後ろめたさ・・・それら全てをオーマは手放したのだ・・・。


そう、オーマは遂に“絶望”してしまった_____。


最早、生きる気力がない。生きる意志もなくなっていた・・・・・・。


「あははははは♪ついに見れたなぁ!?貴様の絶望の表情!愚かにもこの私に挑んだのだ。是非見ておきたいと思っていたぞ!あはははは♪」


クラースはそんなオーマの姿を見て満足そうに笑っていた。




(もう・・・どうでもいい・・・・)




だが、今のオーマには、それすらどうでもよかった。




「ありがとうオーマよ。これまでの作戦の結果にも、今のその表情にも、私は全てに満足している・・・・終わらせてやろう」




言ってクラースは新たな魔法術式を展開する。




だがオーマは反応しない。したとしても動けないが・・・。




(もう、さっさと終わらせてくれ・・・)




オーマはクラースの処刑準備をただボーッと眺めるだけだった。




クラースの処刑準備が進む____クラースが術式を完成させる。




(・・・・・・)




オーマはその魔法術式をただボーッと眺めている。




クラースがオーマに向かって手をかざす_____全ての準備が整ってしまった。




だがそれでも、オーマはクラースのそれをただ眺めているだけだ。




「______死ね」




そしてクラースの手から必殺の重力球が放たれた_____




(終わった・・・何だったんだろう俺の人生・・・)


そんな事を最後に思う・・・だが絶望しているオーマは、それ以上は自分の人生を振り返らない。

だから考える事はと言えば、死んだ後の事_____


(死んだらどうなるんだろう?生まれ変わるのかなぁ?・・・・・・もし_____)


_____もし生まれ変わるとしたら、次はどんな人生がいい?


(そりゃあ“力”のある人生だよ・・・こんな惨めな死に方をするのは、もうごめんだ・・・・)


_____“力”とは?


(そうだなぁ・・・生かすも殺すも俺の自由にできる力が良いなぁ・・・)


_____そんな力があったらいいなぁ・・・・・






_______バギャァアアアアアアアアアン!!




“何か”が砕け散る音を聞いたのを最後に、オーマの意識は闇に落ちて行った______。








 「・・・何だと?」


 クラースが魔法を放った後の中庭には、綺麗で幻想的な景色が出来上がっていた。


「どういう・・・?」


 だが、その景色に感動している者は居ない。

意識の無いオーマやフェンダー、ルーリーは勿論、クラースとカスミもだ。

カスミとクラースの二人は、感動するどころか怪訝な表情を浮かべていた。


「誰?・・いえ、知っているわ」

「ああ、私も初対面だが、誰だか分かった」


 一瞬、不可思議な気持ちになって困惑していたが、そこは第一貴族のクラースとカスミだ。二人は直ぐに答えに行き当たる。

いや、目の前の光景を見れば、この二人でなくても察する者はいるだろう。


 その光景とは、クラースの重力球からオーマを護った事で砕け散った氷の破片に彩られた一人の女性。頭部には角、背中には蝙蝠羽を持った妖艶な悪魔の立ち姿だった_____。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ