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チート勇者ろうらく作戦  作者: 脆い一人
第七章:勇者と魔王の誕生
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オーマ抹殺計画(3)

 クラースの不敵な態度で、オーマの悪寒は更に嫌な広がり方をする・・・“嫌な”というのはつまり、“確信”だ。

オーマは“いつまで”クラースが笑っていて、“いつまで”勇者候補たちが現れないのかと思ったとき、頭の中で最悪のシナリオを想い描いていた。

そう、それは、“クラースがそこにも何か手を打っていて、勇者候補たちとは連絡がつかず、ここに現れる事は無い”というもの。

そしてクラースの態度は、オーマのこの想い描いたシナリオが現実になっていると、オーマに“確信”させたのだった・・・。


(だが何で!?どうやって!?ありえないだろ!!フェンダーのことや、俺が今日ここに来る事ならまだしも、クラースが勇者候補たちの事に、手を加える事など不可能なはずだ!!)


そう思い、オーマは頭の中で何度も作戦の事を振り返る・・・だが、何度振り返っても分からない。ありえない。

特に勇者候補の事に関しては、打ち合わせもオーマとヴァリネスと勇者候補達とでしかしていない。

そしてミクネやサレンが居る以上、たとえ帝国の力を持ってしても盗聴は不可能なはずだ。


「フフフ♪」

「クラース・・・・」


 だがまたもクラースが、 “お前の考えている事など全てお見通しだ”といった様に、オーマに不敵な笑みを見せていた。


「フフ・・・フェンダー相手ならともかく、自分達の連携に私たちが介入する事など不可能だと思っているのか?」

「ッ!?」


そしてズバリ、オーマの心の内を言い当てる。クラースはオーマの考えている事などお見通しだった。


「フェンダーと同じ様に鈍いな、オーマよ。もう少し策略の知恵は有ると思っていたぞ?」

「フェ、フェンダーと・・同じ?」

「フェンダーは自分がダマハラダ砂漠に行っている間に、私たちがルーリーを操り人形にするとは思っていなかった。まあ、思っていたとしても奴の立場では防げないがな。それと全く同じだ・・・鈍いな」

「・・・・」


という事は、オーマの抹殺計画もオーマ達がスラルバン王国に行っている間に準備されていたという事・・・。


(バカな・・・)


 だがスラルバンへは、サンダーラッツ幹部、勇者候補達と主要メンバーほぼ全員で行っている。

主要メンバーで連れて行っていないのは、サンダーラッツの指揮を任せた通信兵のシマズとナナリーだけだ。

 では、この二人が何かされたのかと言えば、そんな事は無いはずだ。

二人は、フレイス達ラヴィーネ・リッターオルデンと戦う前に合流している。

もし何かされていたら、気が付くだろう。その場にはオーマだけではなく、勇者候補達も居たのだから・・・。


(じゃあ、それ以外か?フェンダーにとっての皇帝陛下の様に、俺にとって、“まさか”という意外な人物?)


 オーマがそう頭の中で考えだしたとき、クラースが待ちきれなかったのか、先に答えを口にした。


「貴様の抹殺計画にあたり、当然お前の身辺調査をして人間関係もあらったぞ」

「・・・・」

「元北方遠征軍の炎熊戦士団団長デネファー・ロイゲルとは今でも親交があったんだな?」

「ッ!?」

「ククク・・・酒場レッドベア。貴様らのたまり場なのだろう?」

「ま、まさか・・・」


“デネファーさんを手にかけたのか____!?”

そんな悪寒に襲われる・・・。だが、それでもオーマは納得できないでいた。

仮にデネファーを手にかけてカラス兄弟の似非鴉がデネファーに扮していたとしても、今回の作戦ではレッドベアも利用していないのだ。

デネファーの立場では、今回の作戦に介入できないはずなのだ・・・


(・・・・あ?)


 だが、そこまで考えたとき、オーマは再び最悪のシナリオを頭に思い浮かべてしまった。

 そしてまたもオーマに悪寒が走る____。そしてまたもクラースは“全てお見通し”と言いたそうな笑みでオーマの表情を覗いていた。


「そうだ、オーマ。デネファーの立場では貴様らの今回の作戦に辿り着けない」

「やめろ・・・・」

「もっと近しい人間じゃないとなぁ?」

「やめろ・・・やめてくれ・・・・」


クラースはまるでオーマが描いた最悪のシナリオが正解だという様な口調だった。

オーマはそれが怖かった。

それが正解であってほしくなかった・・・・。


「いるだろう?オーマ、貴様に近しい人間でデネファーに扮した似非鴉と二人きりになってしまった奴____」

「やめろと言っているだろうぉおお!!」


“そんな・・・まさか・・・”だった。

そんな事は信じられない!信じられるわけがない!!

あってはならない!あるわけがない!!

オーマの中で“その人物”だけは亡くしてはならないのだ!!


「そして、そいつはどうしたと思う?」

「ひッ!?」

「フフフ、作戦の全てを知る貴様の方が詳しかろう?」

「あ、ああ・・・あああ・・・」

「さすがに似非鴉でも勇者候補を真似るのは無理だ。ラヴィーネ・リッターオルデンの連中も、似非鴉の“観察”が済んでいない。だが、貴様の配下の隊長達は違うだろう?」

「ぁああああアアアア!!」


バカなバカなバカなバカな!!そんなはずがない!!そんなことになるはずがない!!

そんな・・こんな・・・こんな、“もう全てを失ってしまっている”なんていう状況があっていいはずがない!!


「思い返してみろ。この作戦を決行するまでに至る、これまでの事を_____」




“ふぅ・・・お前が来る事は聞いているよ。しょうがねぇなぁ。だが、後で片付けもしてもらうし、明日はヴァリネスのおごりで買い出しも手伝ってもらうぞ?”


“二人はデネファーの店の片付けをし、ヴァリネスは翌日にデネファーに連れられて、買い出しの荷物持ちと財布をするのだった______”


“オーマに代わってヴァリネスが全体の指揮を執る”


“今回の作戦内容を把握する人物はヴァリネス一人になる”


“作戦準備が進む中、途中でヴァリネスは逃走の際、帝国兵の足止めが必要になると提案。

サンダーラッツの隊長達で、少数精鋭の囮部隊を編成した”


“似非鴉に紛れ込まれたら、”


“ヴァリネスだけが隊長達本人と判別できるようにもするため、サンダーラッツの各隊長達と一対一で独自の打ち合わせを行う事も忘れずにしておいた”




 そしてオーマは、“それ”が現実となっているのだと理解してしまった_____。


「うぁああああああ!!ウソだウソだぁあああ!!ヴァリネスッ!!クシナぁ!ロジぃ!ウェイフィー!!イワッ!フラン!!」

「フフフ・・・どうせ時間は有るんだ。死体でも持ってこようか?」

「ひぎぃいいうぉおおおおオオあああああ!!」


 オーマが狂ったように叫び声を上げる____。

本当に狂ったのかもしれない。

 計り知れない悲しみがオーマに去来しているのだ。

これほどの悲しみを抱いたのは、子供の頃に両親を亡くして以来だった。

だが、あの時と一つ違うことがあって・・・


「クラーーースぅううううう!!おぉおおおおおおぉおおおおおお!!」


・・・両親を亡くしたときと違い、仲間を奪われた事でクラースに対する憎悪がオーマの心を支配していた。

身動きは全く取れないという状況で、オーマは泣き叫びながら怒り狂う・・・。

 クラースは、その檻の中でもがく獣の様なオーマの姿を前に、優越感を抱いて微笑んでいた。


「ぅうううう!!許せねぇ!!ぜったいにゆるさねぇえぞぉおお!!」


 オーマの方も怨みを唱える事を止められない。だがこれは、“あきらめ”だった。

オーマは事の真相を知ったとき、“そんな事があってたまるか!!”と否定する感情や、“絶対にこの手でクラースを殺す!!”という殺意も持っていたが、オーマはなまじ優秀なだけに頭の中では、もうこの状況はチェックメイトなのだと理解してしまっていた。


「フフ、そうか?まあ、貴様に許してもらおうとは思わんが、そんな状態でどうするんだ?話も尽きたし、そろそろ殺すぞ?」

「うるせぇええ!!たとえ!たとえ俺が死のうとも、貴様は地獄行きだ!!俺が死ねば、勇者候補のみんなが貴様を怪しむ!そしたら真相を掴むなんて時間の問題だからなぁあ!!」

「・・・ぁあ?」


 オーマの啖呵にクラースは一度目を丸くした・・・そして


「アーーハッハッハッハッハーーーー!!」


クラースは今まで以上に高く、オーマを嘲笑する表情で笑うのだった_____。


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