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チート勇者ろうらく作戦  作者: 脆い一人
第七章:勇者と魔王の誕生
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オーマ抹殺計画(2)

 「ご主人様?お茶のおかわりはいかがでしょうか?」

「ありがとう、レイン。でも、もう止めておこう。少し飲み過ぎた」

「ベルジィが作った茶葉で淹れたお茶は美味しいですからね」

「フフッ♪ありがとう、サレン」

「・・・ジェネリー、お前、お茶何杯飲んだ?」

「ん?そうだな・・4杯は飲んだかな?」

「そんなに飲んだのですか?」

「ああ、レインの菓子との相性も良かったしな」

「フフン♪ありがとうございます、ご主人様」

「だが、それがどうした?ミクネ?」

「いや・・・オーマの奴、時間掛かり過ぎじゃないか?」


「「・・・・・」」


 オーマの居る貴族区画と同じ区画内。第一貴族の住居エリアから少し離れた第二貴族の住居エリアにあるミシテイス家の屋敷____。

ここに、ジェネリー、レイン、サレン、ミクネ、ベルジィ、フレイスの勇者候補たち全員が今回の作戦のために待機している。

 和やかに寛いでいるが、6人とも準備は万端で、ヴァリネスから連絡があれば直ぐにでもオーマの下へと馳せ参じる事ができる。

だが、ミクネが心配する様に、ヴァリネスからは最初にオーマが第一貴族の秘密を知るためにフェンダーの要求を飲んで貴族区画に入ったと報告を受けてから、それ以降は一切連絡がない・・・。


「・・・やっぱり罠だったのでしょうか?」

「フム・・・フェンダーと剣を合わせてみた感想だと、そういう類の人間とは思えなかったがな」

「別にフェンダーの意思でしているとは限らないでしょう?フレイス?クラース達の指示で___という可能性もありますよ?」

「だがベル、それならオーマは気付くと思うぞ?」

「ミクネの言う通りです。兄様は恋愛には鈍いですが、その辺りの勘は鋭いです」

「ああ、特にフェンダー殿の様な腹芸に向かない人物が取り繕っているなら、直ぐに看破してヴァリネス副長に連絡を入れているだろう」

「では、これだけ時間が掛かっているのは、一体・・・」

「例の第一貴族の強さの秘密というのが、かなり込み入ったもので、時間が掛かっているのでは?」

「その可能性が一番かな」

「だー!くそっ!でも、さすがにこんな作戦でここまで連絡が無いと落ち着かないぞ!」

「堪え性が無いですねぇ、ミクネは」

「だってさぁ!」

「まあ、ミクネの気持ちも分かる。私も正直もどかしくなってきた」

「フレイスまで・・・」

「少し様子を見て来るか?」

「それは危険だ。第一貴族以外の者がこんな時間に第一貴族の住居エリアに行ったら怪しまれる」

「じゃあ、私が隠密魔法で____」

「魔法を使うのは論外ですよ、ミクネ」

「____ぶぅ」

「・・・レイン、やっぱりお茶を入れてくれ。落ち着かん」

「分かりました。ご主人様」


表向きは和やかながら、勇者候補たちは心の中に言い知れぬ不安感を抱きながら、オーマからの連絡を待つのだった______。






 「_____そう思って、ここで罠を張っていたという訳だ」

「・・・・・」

「・・・・・」

「フフフ・・・」

「・・・くそ」


 一方のオーマ達は、クラースから“講義”を受けていた。

どうしてクラースから講義が始まったのかといえば、オーマが“教えてくれ”と頼んだからだ。

その理由はもちろん、時間稼ぎだ。

勇者候補たちが現場に乗り込んで来るまでの時間を稼ぐために、クラースにどうして今日、自分達がここに現れると分かっていたのかと問いかけたのだ。

そしてクラースは、それを聞いて悠々と抗議を始めてくれたという訳だ。

 どうしてフェンダーを不信に思ったのか?から始まり、もしフェンダーが反乱軍に入るためにオーマから信頼を得るなら必ず誠意を見せるだろう事。フェンダーの中にある交渉カードで一番の誠意を見せられるものは、リッツァーノの秘密しかない事を聞かされる。

 そして今日の夜、二人が現れる事については、オーマとフェンダーが二人で決めた様に見えて、実はクラースがココチアに行くと言ったり、洗脳したルーリーを使ったりして、誘導していたという事まで教えられた・・・。


(くそ・・・全ては奴の掌の上だったというワケか・・・)


 話を聞いていたオーマは、腹名の中を負の感情で掻きむしる・・・。

悔しさ、苛立ち、後悔といった負の感情はもちろん、クラースに対する恐怖や嫉妬、怨みといった負の感情も、オーマの中で渦巻いていた。

 だが、フェンダーの方はそれどころではない。


(・・・すべて私の責任だ・・・・)


フェンダーはオーマの状態から更に先、恨む相手を敵から自分へと変えていた。

更に後悔は責任へと変わり、クラース達への敵意はオーマ達への謝意へと変わっていた____。


(フェンダー・・・)


 オーマは、自分を申し訳なさそうに見て来るフェンダーに、刺された様な哀れみを抱いていた。

 フェンダーを責めるつもりはオーマには無い。

結果として、フェンダーの仲間になりたいという意思は本物だったし、それを証明もした。

そして、そこまでの流れで、オーマがフェンダーの手際に疑問を感じたとこは無い・・・つまり、オーマがフェンダーだったら、オーマもまたクラースに裏をかかれていただろう。

フェンダーが無能なのではない。クラースがこの手の事に関して有能すぎるのだ。

だからフェンダーは悪くないとオーマは思っている。オーマが悪いと思っているのは_____


(こいつに決まってる・・・!!)


 オーマは自分に持てるありったけの殺意をクラースに叩きつける・・・。

だが、勿論と言うべきか、クラースにとっては、オーマの殺気など微風と変わらないものだった。


(そうやって涼しい顔してろ!!フレイス達が来たら遠慮は無用だ!ここでクラースもカスミも殺す!!)


 ルーリーとリッツァーノを連れ出すのも勿論だが、なによりオーマは心の中で、ここでクラースを殺す決意を固める。

クラース個人の戦闘力は勇者候補一人分といった印象だが、戦力がどうのこうのというより、クラースをここで殺しておかないと何をされるのが分からない。この先どうなるか不安で仕方が無い。

オーマの勘が、クラースは今ここで殺しておかなければならない人物だと警報を鳴らしていた。


(クソッ!・・・まだか!?)


自分の勘が鳴らすうるさいくらいの警報と、早くルーリーを助けたい気持ち、最早一秒でもこの世に居て欲しくないクラースとカスミを前に、オーマは勇者候補たちの到着を今か今かと待ちわびている・・・。


「くくく・・・」

(見てろよ!その余裕な面、絶対に歪めてやる!!)

「ククククク♪・・・・」

(サッサと止めを刺して置けば良かったと後悔させてやるからな!!)

「ハーーハッハッハッ!!」

「・・・・ああ?」


 オーマはクラースの笑う様を見ながら頭の中で、“いつまで___?”を浮かべていた。

クラースは、“いつまで”笑っている?

勇者候補たちは、“いつまで”待たせるんだ?一体いつ現れる?


(・・・・・)


そして、 “いつまで”という言葉で、この二つの疑問がむずびついたとき、オーマの中で悪寒が走った____。


(ま、まさか____)

「お?表情が変わったな?オーマよ」

「ッ!?」


クラースはまるで全てお見通しかの様にオーマの表情・・・感情の変化を見逃していなかった・・・いや、失礼、“全てお見通しかの様に”ではなく、クラースは“全てお見通し”である。


「ククッ♪・・・なあ、オーマ?もし今ここで、勇者候補たちが現れたら、私はとんだお笑いものだなぁ?」

「_____ッ!?」

「そう・・まるで、小説なんかに出て来る、“さっさと主人公に止めを刺せばよかったものを、勝ち誇って調子に乗っていたから逆転されるマヌケな悪役”の様だな?」

「貴様・・・・・」

「さすがに私でも、ここに勇者候補全員・・・いや、真面目な話、一人でも現れたなら、そうなる可能性が有るな・・・“現れたら”____な?」

「ッ!?ま、まさか・・・」


クラースの態度で、オーマの悪寒がさらに強くなるのだった_____。

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