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チート勇者ろうらく作戦  作者: 脆い一人
第七章:勇者と魔王の誕生
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オーマ抹殺計画(1)

 あのフェンダーを刺した後だというのに、ルーリーの表情を見れば感情が無い・・・。

そんな不自然なルーリーの様子に加え、“カスミ”というキーワードが頭に入れば答えは簡単だった。

ルーリーは操られている_____。カスミの精神属性魔法で操られているのだ。

そうだ。そうでなければ、ルーリーがフェンダーを襲う事もそうだが、フェンダーがルーリーの攻撃を防げないワケが無いのだ。

 例え自分の主人からの不意打ちだとしても、フェンダーなら反応できるはずなのだ。

反応できなかったのはルーリーが操られていたために、ルーリーから敵意や殺意が全く無かったからだ。


(不覚・・・!!私がダマハラダ砂漠に行っている間にか!?まさか既に陛下さえ辱めていたとは・・・!!)


悔やんでも悔やみきれない一生の不覚・・・。

フェンダーにとって、泣き崩れ、叫び出したほどの屈辱だった。

だが____


(陛下の持っている短剣・・・確かカスミの・・・・助からないか・・・)


 ルーリーがフェンダーを襲うのに使用した短剣は、普段はカスミが護身用に持っている短剣で、“生誕日せいたいんびの短剣”という魔道具だ。

誰にでも生誕日が訪れる様に、この短剣で傷を負わされた者に必ず死が訪れるという呪剣だった。


(_____ならば!!)


フェンダーはそれが分かると、痛みと屈辱を必死に堪える。

 フェンダーは超一流の騎士だ。

たかが自分の命が失われ、状況が絶望的になったくらいで諦める人物ではない。

フェンダーはその時その場で、自分が出来る事に最善を尽くすのだ_____。


(戦闘ではやはり未熟なところが有る様だな!!カスミ!!)


 フェンダーは最後の力を振り絞って、魔法を発動する。

先のルーリーの一撃____。ルーリーからは操られていたため気配はなかったが、ルーリーがフェンダーを刺した瞬間、操っていたカスミから、僅かにではあるが殺気がこぼれていた。

それまで見逃すほどフェンダーは愚かではない_____


_____ビュン!!______ボコォ!!


「_____つッ!?」

「カスミか!?」


フェンダーの放った矢は決して強力なモノではなかったが、中庭にある調度品の一つを破壊し、隠れていたカスミを炙り出して見せた。


「オーマ!やれっ!!精神魔法のマインドコントロールは並大抵の魔法ではない!使用中のカスミの戦力は半減しているはずだ!君でも勝機はある!カスミを殺して陛下を解放し、ここから逃げろぉ!!」

「うぉおおおおおお!!」


 “言われるまでもない____!!”と、ヴァリネスへの通信を終えたオーマは、殺気を剥き出しにしてカスミに向かって駆け出した_____


「まあ、恐ろしい・・・ゴレストでは共に手を取り合ったというのに、何て殺気でしょう」

「うるせぇえええ!!このくされ外道がぁあああ!!」


 だが、オーマは怒り狂いながらも冷静だ。

カスミに的を絞らせない様に左右にステップを入れながらカスミとの距離を詰める。

そしてその中で、容赦のない魔力を込めた魔法術式を展開、確実にカスミを仕留めるために必殺の間合いとタイミングを計る______


「_____もらった!!」


フェンダーが言う様に、ルーリーを操るのが負担になっているのか、カスミは確かに動きも術式の展開も鈍く遅かった。そのためオーマは完璧なタイミングでカスミを捕捉できた。

 そして、渾身の電撃魔法を放とうとした_____瞬間、


「なんだッ!?」


突如としてオーマの向かっている方とは別方向から強力な魔力が発せられた______


_____ガクンッ!


「_____!?」


オーマはその正体を確かめるヒマも与えてもらえず身体を引っ張られ、カスミとの距離を離されてしまった。


_____ズンッ!!


「_____がはっ!?」


そしてオーマは、ほぼ反対方向の壁(リッツァーノの石像が置いてあった辺り)に叩きつけられた_____。


(がぁ・・・な、何だ・・・・!?)


突然の魔力にも、身体が引っ張られた事にも、地面ではなく壁に“叩きつけられた”事にも、オーマは全く理解が及んでいなかった。

さらに、この疑問を解消する手立ても持っていなかった。


 だがそれらの疑問は、たったの一声で氷解する_____。


「フッ・・・全て予定通りだな」


「「ッ!?」」


 オーマとフェンダーの耳に、男の声が入って来る・・・。

オーマとフェンダーの二人は、その声に頭を覚醒させたが、同時に思考を停止させた____つまり“驚愕した”というヤツだ。

 オーマとフェンダーの二人を絶望へと落とす声_____。

聞き覚えのある声で、よく知っている声だ。

だが、ここでは・・・いや、“今この場では”聞く事の無いはずの声だったのだが、その声を聞けたからこそ、今の状況の答え合わせが出来てしまい、二人を絶望させた・・・そんな声。

この声の主は、そんな人物。つまり_____


「クラース・・・貴様!?」

「フン・・・。フェンダー、予想通りに裏切ってくれたな?」

「くっ・・・!!」


フェンダーは先程、カスミに一生の不覚を取ってしまったばかりだというのに、今、それ以上の不覚を取ってしまった。



 (クラースがここに居る。つまりは全てが罠だった。全部読まれていた!だが、この力は_____!?)


 クラースが現れた事で、今の殆どの状況を理解できたオーマだったが、一つだけ分からない事が有る。

それは今の自分の置かれている状況_____壁に叩きつけられて、“そのまま”磔にされいているという、この状況だ。

クラースが強力な魔力を放っている事から、これがクラースの仕業だというのは理解できるが、この魔法が一体何なのか理解できない。

オーマはクラースが魔法を使うところを見るのも初めてだが、このクラースの魔法も見るのが初めてだった。


「フフッ、あのサンダーラッツのオーマ・ロブレムでも、先のルーリーを使った不意打がフェンダーだけではなく、貴様を仕留めるためのモノでもあった事までは読めなかったか?」

(ッ!?・・・カスミは囮か!?)


 つまり、ルーリーのフェンダーへの不意打⇒カスミの正体が暴かれる(暴かれなければ自ら正体を現し、囮となる)⇒オーマの注意がカスミに向く⇒クラースの攻撃。という流れだったのだろう。

初手は完全に向こうに一本取られた形だった。

そして____


「私の魔法がここで決まったのなら、もうチェックメイトだ。貴様一人では、私の“重力”からは逃れられん」

「____ッ!?」


 クラースからの一言で、オーマはクラースの魔法の正体に気が付いた・・・と、いうより、勝利を確信したクラースが自ら教えてくれたと言った方が正しい。

 そう、クラースの魔法の正体は、RANK3の重力属性。

単に重力だけでなく、引力や斥力といった力まで、あらゆる所から発生させられる魔法が扱える属性だ。

オーマはクラースが作った壁からの引力に引っ張られて磔にされているのだ。


「ん・・・くっ・・・ぅう!!」


オーマはありったけの魔力を込めて体を動かしてみるが、指先一つ動かせない。

 クラースが今使用しているこの魔法は、重力属性のトラップ魔法なのだが、その効果はいたってシンプルで、標的を引力で引き付けるだけだ。術者が魔力を放出している間は、トラップが維持され、引力に負けない物理的な力か、術者の魔力を上回る魔力があれば拘束を解くことができるという、いたってシンプルな仕様だ。

 だが、だからこそオーマには打つ手が無い。

オーマの膂力も魔力もクラースの魔力を上回れないからだ。

フェンダーほどでは無いが、第一貴族でもトップクラスのクラースの魔力は、勇者候補たちと比べても見劣りするものではなく、オーマとでは圧倒的な差があった。


(絶対に・・・絶対に許さん!!)


 それでも希望があるオーマは、クラースを睨みながら勇者候補たちの到着を待つのだった____。

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