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チート勇者ろうらく作戦  作者: 脆い一人
第七章:勇者と魔王の誕生
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反撃の狼煙を・・・(4)

 新たな決意のもと、オーマは今後の展開について頭を働かせいた・・・。


「オーマ」

「ハッ!陛下」


だが、ルーリーから声が掛かると直ぐに気持ちをそちらに向ける。

今のオーマはすっかり皇帝に忠義を尽くす騎士だった。


 「オーマは遠征軍だったし、特命で世界各国を渡り歩いていただろう?ならば、何処か私を・・・いや、“ドネレイム帝国の皇帝”を保護してくれる相手に心当たりは有るか?」

「は、それでしたら・・・センテージがよろしいかと」

「センテージ?」

「ハッ。私の知る限り、現在、帝国に対して反抗心を持っており、陛下を保護してくださる可能性が有る勢力はゴレストとセンテージ、そしてココチア連邦になります。ですがココチア連邦は信用できませんし、現在クラースとマサノリが外交で交渉中ですので、ゴレストかセンテージがよろしいかと思います。この二か国でしたら、行き先はセンテージの港湾都市ベルヘラがお薦めです」

「そうか?ゴレストは宗教国家だろ?そちらの方が帝国に対する敵対心も強く、ダークエルフが味方に付いている分、戦力としても有意義では?ベルヘラを薦める理由はなんだ?」

「はい。確かに陛下の仰る様にゴレストの方が帝国に対する対抗心も強く、戦力も整っております。ですが、最西にあるゴレストは軍を送り込まれたら逃げ場がありません。帝国は西方の攻略を、武力侵攻から政治外交に変更しております。そのため、帝国の西方軍は直ぐにでも動ける状態です。ゴレストはダークエルフと連携すれば、オンデンラルの森もあって籠城戦も強いでしょうが、包囲されれば他国と連絡を付けるのが難しくなり、孤立する可能性が有ります。その点、センテージは以前の親善会合で反抗心が弱まっているとは言え、センテージの核の一つである港湾都市ベルヘラ領主、プロトス様には帝国に対する反抗心は強く残っており、ベルヘラには帝国には無い精強な海軍が備わっております。ワンウォール諸島とも連携できますから、行動できる範囲は広く、また陛下の身柄を確保しに来る帝国軍とも、海上でならば渡り合えます」

「なるほど。海に出れるのは良いな。ではベルヘラへ向かうとして、オーマ、ベルヘラ領主のプロトス殿

と渡りをつける事は可能か?」

「ハッ!プロトス様のご令嬢、レイン・ライフィード様に協力してもらえれば可能なはずでず。レイン・ライフィード様も断らないでしょう」

「そうか・・・・・」


ルーリーは一通り納得した表情を浮かべて考え込む。

 そして何かを考え終わった後、再び口を開いたとき、またしてもオーマを驚愕とさせるのだった。


「それとオーマ」

「ハッ」

「オーマ、ひょっとして、外に軍を待機させていないか?」

「は!?な、何故それを!?ご存じだったのですか!?」


ルーリーからの突然の指摘に、オーマは本気で動揺してしまった。


「別に知っていたわけではない。このリッツァーノ様の秘密を知ったときに、そう思っただけだ。フェンダーの先程言っていたオーマへの相談とはウソなのだろう?本当はこのリッツァーノ様の石像の秘密を明かすためだ。そうだろう?フェンダー?」

「は、はい・・・」

「この秘密を明かす事はつまり、第一貴族達との敵対を意味するはずだ。それを理解していながら、秘密を明かす方も明かされる方も、なんの備えもしないのはおかしい。クラース達の事を知っていながら備えていないのなら、それは無謀というものだ。お前達はそうではあるまい?だから、この国を・・・いや、第一貴族と対立する覚悟と準備があるのではないか?と思ったのだ。ベルヘラに行くべきという提案も、それでだろう?オーマ?」

「あ・・・・・」

「あ・・・・」


ルーリーの推測に、オーマとフェンダーの二人は、再び言葉を失っていた。


(本当にスゴイ!この方は・・・!!)


オーマの中でルーリーの株が天井知らずに上がっていく____。


「仰る通りでございます、陛下!私は感嘆しました!」

「だから固いと言っているだろうオーマよ。まあ、いい。ならばオーマ、その準備、私が遠慮なく使わせてもらうが構わないな?」 

「ハッ!是非に!」

「よし。では先ず、誰にも見つからない様にリッツァーノ様を連れて、ここを出る。その後はオーマが先導して我らをベルヘラまで案内せよ」


「「ハッ!」」


 ルーリーの指示が出ると、オーマもフェンダーもい疑問を挟むことなく、ルーリーの指示を実行に移し、潜在魔法を使って二人掛でリッツァーノを持ち上げた。


「二人だけで大丈夫か?」

「ハッ、問題ありません」

「陛下、何処から出ますか?」

「隠し通路は魔法が使えんから二人で運ぶのは難しくなる。少々危険だが、ゴールド・ゲニウス・ナイツの宿舎を通ろう。私とフェンダーが居れば誤魔化せるはずだし、その後は戻らんからな。ついて来い」


「「ハッ」」


 そうして先導するルーリーに続いて石像を持ったオーマとフェンダーの二人は後に続く____。


(やってやる・・・やってやるぞ!陛下と共に第一貴族の悪行を終わらせてやる!!見てろよクラース!今までの分、全て倍にして・・・いや、十倍にして雪辱してやるからなぁ!!)



___________グサッ!



「ッ!」

「・・・・・ん?」


 ルーリーの後に続いてリッツァーノを運ぶ中、オーマが心の中で闘志を燃やしていると、中庭の出口に差し掛かったところで不快な音がオーマに耳に入って来た・・・。


(・・・何だぁ?今の・・・嫌な音だな。誰かが刺されたような・・・まさかな。ここには俺とフェンダーと陛下しかいない。他に気配も無い)


だが、そう楽観的になるオーマを他所に、リッツァーノの頭部を持ってオーマ前にいたフェンダーの足が止まった・・・・。


(・・・何だ?何故、立ち止まったんだ?フェンダー?)


リッツァーノの足を担いでフェンダーの後ろにいるオーマからでは、状況がよく分からない。


「フェンダー?・・・陛下?」


よく見ると、フェンダーの前に立っているからなのか、ルーリーの姿も見えない。


(?・・・何で俺達を先導する陛下が、フェンダーの前に?何をしているんだ?)


“急いで、ここを離れるべきでは?”____そう言いたかったが、これまでのルーリーを見て、何か理由があるのかもしれないと、オーマは黙って様子を見ていた・・・・見てしまっていた。

そして_____


______ガクンッ


フェンダーの膝が折れた・・・・それに伴い、リッツァーノの重さがオーマに伸し掛かる_____


「ッ!?」


______持っていられない。オーマは体勢を崩して転んでしまった。


______ゴトンッ!


「つッ・・・おい、フェンダー?どうしたんだっ・・・て・・・・・え?」


 オーマが起き上がると、そこにはオーマでは理解できない光景が飛び込んできていた。


「へ?・・・あ、へ、陛下・・・・?」


オーマの視界に入って来たのは、膝を折ってうずくまっているフェンダーの後姿・・・そしてそのすぐ上に仁王立ちしているルーリーの姿だった。

 これは理解できた。

フェンダーの後ろにいたオーマだったが、ルーリーの姿が見えない事から、フェンダーの前に立っていたからオーマからは見えていなかった。それが、フェンダーが膝を折った事で見えるようになった・・・。

これは理解できた。

オーマが分からなかったのは、フェンダーが何故、膝を折ったのかという事と_____


「・・・・・・」


______ルーリーが血の滴る短剣を持っている事だった。




 フェンダーが膝を折っている。ルーリーが血の付いた短剣を握っている。

オーマの視界に入っている、この情景・・・・状況を理解するのは本来簡単な事のはずだ。

だが、オーマの思考は停止しており、その状況を理解することが出来ないでいた。


「オーマ!」

「_____ッ!?」


フェンダーの叫びでビクンッ!と反応し、止まっていた思考が動き出し、オーマは正気に戻る。


「っ・・・カ、カスミだ!」

「!!」


一瞬だった____。フェンダーの叫びで正気に戻り、次のフェンダーの一言、“カスミ”というキーワードが頭の中に入ると、オーマは一瞬で事態を理解した____と同時に、ミクネの通信魔道具を使い、ヴァリネスに救難信号を出すのだった______。

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