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チート勇者ろうらく作戦  作者: 脆い一人
第七章:勇者と魔王の誕生
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反撃の狼煙を・・・(2)

 “これは何だ_____?”

リッツァーノの石像を指差して、ルーリーからの問いかけ_____。

 オーマとフェンダーは、膝を付いて頭を下げた姿勢のまま互いに目を合わせる。

二人はお互いに、“どうする?”と目で訴え合っていた。


(どうする!?どうやって取り繕う!?)


オーマはこの気まずい状況を打破するために必死に頭を働かせる_____。

 オーマが思うに、先程フェンダーがルーリーにオーマがここに居る理由を問われた際、すんなりと答えられたのは、事前に考えていたからだろう。


 実際にフェンダーは、万が一誰かに見つかったときに、どう取り繕うかを予め決めていた。

勿論、第一貴族に対しては、そんなごまかしは通用せず、後日問われる形になるだろうが、既に第一貴族と見切りをつけているフェンダーにとっては、その場さえ乗り切れれば良かった。

だから、出会う相手によっては、その場で“消す”事さえ想定していた。


 だが、この事態はフェンダーにとって想定外の事態のはずだ。

ならば、フェンダーも内心では慌てているだろう。オーマから見て、誠実で騎士道を重んじるフェンダーは取り繕うのが得意なようには感じられない・・・・。

 それに、ルーリーはまだ若いが、かなり察しが良く聡い女性だ。

言動に違和感が有れば、直ぐに怪しむだろう。

後々の事を考えれば、ここでルーリーに不信感を抱かれるのは避けたい。


(何と言ってこの場を乗り切る?どう取り繕えば、陛下は怪しむことなくこの場を立ち去ってくださるのだろうか・・・怪しまれない様に取り繕わないと、後日これを_____あ?)


 頭の中で、必死にどう言い訳をして逃れるかを考えていたオーマだったが、考えている途中で、逆の発想に頭が回転し始めた。


(・・・・むしろ、今ここで告発するか?いずれ伝える事なわけだし、ここで不信感を抱かれて妙な誤解を受けたら、改めて陛下に告発するときに面倒なことにしかならない・・・だが、今ならどうだ?急な展開で幾つかの工程はスッ飛ばすことになるが、タイミング自体は悪く無いんじゃないか?)


 今の状況は、先ず直ぐそばにフェンダーが居る。

勇者候補も呼べるし、軍も待機させていて直ぐに国外に出る事だってできる。

 フェンダーはともかく、オーマはルーリーに面会するのは勿論、貴族区画に来るのでさえ、そう簡単にはいかない立場だ。

今はクラースもマサノリの応援で、ココチア連邦に行っているから何とかなっているが、本来なら例えフェンダーの手引きが有っても、クラース達に怪しまれずにフェンダーやルーリーに会うのは色々と調整が必要になる。

オーマがルーリーに面会できる機会は、そう簡単には手に入らないのだ。

皇帝や第一貴族のスケジュールを把握して、フェンダーに手引きしてもらい、バグスにもバレない様に内密にルーリーと面会できるようになるのは、この機会を逃したらいつになる____?

“ルーリーと話す機会を得る”という視点で見れば、今は千載一遇のチャンスではないだろうか?

 そして今ここでの告発も、いきなりとは言え、分が悪い賭けになるとはオーマは思っていなかった。

皇帝ルーリーの人格は、オーマだけでなく第一貴族たちも認めているところだ。

ここで話しても、目の前に証拠がある以上、信用されないという事は無いはずだし、真実を知ったルーリーがクラース達を許すとも思えない。

ルーリーがこの真実をしったならば、第一貴族を処罰をすると言ってくれるだろうというのは、期待だけでなく、自信としてある。

 唯一の危惧は・・・


(陛下がその正義感の強さで、自らクラース達を問い詰めると言い出す事だが・・・・)


だがこれも、今クラース達がいないなら、真相を知ってすぐにクラース達に問い詰めに行くという事は物理的に不可能だ。


(フェンダーもルーリーにウソをつくよりは事実を話して、クラースを討つように説得する方が気が楽だろう)


幾つかの工程も、フェンダーの二人でルーリーを説得できれば問題ない。

そう判断してオーマは決断する_____。


(陛下を説得。理解して頂いた後は、一時的に非難するとこを提案して勇者候補たちを呼んで、陛下とフェンダー、そしてリッツァーノ様を連れて国外へ出る!)


 決断し、後の展開も決めたオーマは、慎重に言葉を選んで口を開いた。


「実はフェンダー様より、その石像に関して相談を受けていたのです」

「!?(オーマ!?)」

「ほう・・・?この石像には何か問題が有るのか?見たところ、魔法が掛かっている物の様だが・・・だが、フェンダーがオーマに相談とは、どういうことだ?クラースやマサノリではないのか?いや、オーマを信用していないという訳ではないぞ?」

「・・・はい。この石像に関しまして、第一貴族の方にはご相談できない事情があるのです」

(!?そこまで陛下に話すとは・・・オーマ、まさか今ここで?)


オーマの言動から、フェンダーもオーマの考えを察知した。


「そうなのか?オーマ、この石像は何なのだ?」

「それは・・・相談を受けた私からではなく、フェンダー様ご本人より聞くのが筋かと・・・」


 そう言ってオーマは説得役をフェンダーに任せる。

少し無茶振りではあるが、ルーリーを説得するなら第一貴族で付き合いも長いフェンダー以上に適役はいないだろう。


「・・・・・」

「・・・・・」


 オーマの意図を薄々感じ取っているフェンダーは、確かめる様にオーマに視線を向ける。


(そうか・・・日は改めず、今ここで話してしまうんだな?オーマよ?急な展開だが・・・仕方があるまい。出来ない事は無いとも思うしな!)


目が合ったオーマの瞳に決意が宿っているのを見ると、全てを理解し、フェンダーも覚悟を決める。


「陛下、実はこの石像は_____」


そして、意を決したフェンダーは、ルーリーに石像の真実を告発した_____。






 「ま、まさか・・・・そんな・・・・・」


ルーリーは体をワナワナと震わせて、言葉を失っていた・・・。


「・・・・・・」

「・・・・・・」


 フェンダーからこの石像が先代の勇者リッツァーノ本人であることや、これまで帝国の第一貴族が、このリッツァーノを利用して力を得ていた事を聞いたルーリーの第一リアクションは、二人の予想通りだった。


「この世界を救った英雄に対して、なんという・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」


 全てを話したオーマとフェンダーの次の行動は、“黙してじっと待つ”だった。

ルーリーが今の話を飲み込み、どうするかの答えを出すのを待っているのだ。

 その中で、ルーリーの言葉、表情、仕草と、その全てを一つとして見落とすことなく観察している。

二人はルーリーのことを信じている。ルーリーならば、絶対に自分達の思う答えを出してくれると・・・。

だが万が一、ルーリーの考えがそれとは異なっていた時には、直ぐに口を挟めるように集中していた。

 ルーリーの心情の変化を見落とすことなく観察を続ける・・・。

ルーリーからは、この事実を容認しそうな気配は出ていない・・・・。

 そして、その気配が出ないまま、しばらくした後、ルーリーは決意するかのように口を開いた。


「・・・・・許せん」

「陛下・・・」

「そうだろう?フェンダー?恐らくは、大陸を統一して世を平和にするための非情な決断なのだろう・・・。だが、そうであっても許してよい事ではない。この様な・・・大陸の英雄を辱める様な手段を取らねば、大陸をまとめられぬというのなら、我らには覇者たる資格は無いだろう?」


「「陛下!」」


 結果は、オーマとフェンダーの予想以上だった。

ルーリーは、帝国の闇の部分を理解した上で、断ずると言ってくれたのだった_____。

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