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チート勇者ろうらく作戦  作者: 脆い一人
第七章:勇者と魔王の誕生
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そして虎穴に入る(2)

 「その仕掛けも魔導道具ですか?」


 何気ない問いかけ____そうする一方でオーマは、フェンダーの姿形、そして通路の奥の様子を注意深く観察する。オーマはそれをフェンダーに気付かれない様にではなく、堂々と行った。

オーマは自分ではバレない様に観察しても、フェンダーには見抜かれることを以前の晩餐会で理解している。

 要は、危険を確認しつつフェンダーに、「ここに来てはみたものの、まだお前を信用したわけじゃない」と意思表示しているのだ。


「そうだ。ウーグスが開発した魔道具で岩の内側の人の気配、生命反応、魔力反応を完全に遮断し、岩の内側から外を見ることもできる。使用には暗証番号が必要で、知っているのは皇帝陛下と側近護衛の私だけだ。クラースや、これを作ったカスミですら知らない」


オーマの質問に、フェンダーはつらつらと国家機密を話してくれる。

悪ぶる様子も怪しい様子もない。

その堂々とした物言いに、オーマの方は信用できそうだと言う気持ちと、だからこそ怪しいという気持ちの両方が強くなる・・・。


(これから俺を消すなら秘密を喋っても問題無いからはずだからな・・・・)


フェンダーとしては、隠さずに本当の事を言って自身の誠意を示しているつもりだが、オーマの方はまだ懐疑的な感情が残っていた。

 オーマのその感情と、そうなってしまう事情を察しているフェンダーは、そのとこを気にする様子はない。

ただ自分を見極めてもらおうと、誠意を尽くすのみだった。


「さて、いつまでもここに突っ立っていて秘密の通路を空けてっぱなしにして置くのも危険だ。他に質問がなければ、早速中に入ってついて来て欲しいのだが?」

「あります」

「・・・・・」

「私をどこに連れて行って、何をしようと言うのですか?」

「それは、ここでは_____」

「____今ここで申し上げてくださらないと、中には入れません」


オーマは静かだが、きっぱりと強くそう言った。


「・・・・・」


フェンダーはそのオーマの様子に、単に慎重に成って警戒しているだけではない事を察した。


「フェンダー様。正直に申し上げまして私は、貴方個人はかなり信頼できる方だと思っております」

「光栄だな」

「ですが、それでも、ここで何をするのか話してくださらないと中には入れません。中に入ってしまえば後戻りできませんから」


何気ない口調だったが、譲れない理由があるオーマは執拗に食い下がった。


 今オーマは、懐にある物を忍ばせている。

緊急時に指揮官のヴァリネスにメッセージが送れる、特殊な通信魔道具だ。

 それは、ミクネがこの日のために用意してくれた魔道具で、通信魔法どころかオーマの様に風属性魔法を扱えない者でも通信を可能にするという、帝国の魔法技術も凌駕している代物だった。

それだけに、この短い期間ではオーマとヴァリネス用の一組しか作れなかったが、今回の作戦では状況の全貌を把握するのはヴァリネス一人なので問題は無い。

 だが、ミクネ自作の高性能魔道具ではあるものの、やはり魔道具ではあるので、高性能な魔導設備が整っている帝国の貴族区画内では、使える場所が限られるだろう。

使えたとしても、場合によってはカスミなどに盗聴される可能性も有るので、一度中に入れば、使用チャンスは緊急時の一回限りになるとオーマは考えている。

 だからこそ中に入る前に、目的だけでもフェンダーから聞き出してヴァリネスに伝えておきたかった。


「・・・・・」

「・・・・・」


 オーマの発言に二人の間でしばしの間、生唾を飲む音さえ響く沈黙が流れる_____。

観念した・・・いや、理解したのはフェンダーの方だった。


「分かった話そう・・・・目的は反乱軍に加えてもらうために、君達から信頼を得る事だ。そのために私にできる最大限の“誠意”を見せようと思った」

「最大限の誠意?それは・・・?」

「_____第一貴族の強さの秘密だ」

「!?」


フェンダーの申し出にオーマの心臓が跳ね上がった。


 第一貴族の強さの秘密_____。

これは、スカーマリス捜査の際に、ハツヒナたちの強さを目の当たりにした時、反乱軍として帝国と戦う前に調べたいと思っていた事だ。

もし本当なら、正直に言って喉から手が出るほど欲しい情報だった。


「そ、それは・・・」

「君も薄々変だと思っていただろう?魔法の才は、出生や血脈などに左右されないはずなのに、第一貴族の者達は何故、誰しもが突出した魔導士になるのかと」

「・・・ただ最先端の魔法技術と教育を受けているからではないと?」

「そうだ。それならば、第二貴族や平民からも突出した力を持った魔導士が現れるだろう?」

「い、いえ、私は帝国が手にした魔法技術は、第一貴族が支配を盤石にするために、技術の一部しか第二貴族や平民に教えていないのだと思っておりました」

「歴史上、そうしようとした事もあるそうだが、それだと結局、魔法技術の底上げにならず、国力が強化されない。他の敵対勢力に後れを取ることになるかもしれないと判断して止めたそうだ。エルフという人間より魔法に長けた種族も居るからな」

「・・・・」

「なにより、その必要が無かったのだ・・・・いや、その必要が無くなったと言った方が正しいか?」

「それはどういう意味です?」

「それは着いて来て、この秘密を知れば分かる」

「・・・・・」

「聞きたいのなら、今ここで喋っても構わないが、口だけでは信用できまい?」

「・・・・」

「教えるのは事実だ。信じて欲しい。この秘密を教える事の意味を考え、私がどれだけの誠意とリスクを背負っているかを感じて欲しい・・・・」

「・・・・・」


 フェンダーの言葉にオーマは覚悟を決める。

元々ここに来た時点で・・・いや、クラースから「もうする事は無い」と言われた時点で答えは出ており、作戦を立ててフェンダーに会いに来た時点で、ある程度の覚悟も出来ていた。

だがここで、オーマは改めて覚悟を決めた。

 もし本当に第一貴族の力の秘密が知れるなら、罠であっても飛び込む価値がある。

魔法の才に血脈や出生は関係ないにも拘らず、ドネレイム帝国の第一貴族たちは誰しもが、熟達したエルフを凌駕し、勇者候補たちに迫る程の強さを持つ。

その力の秘密を知る事は反乱軍にとって、帝国に勝つための必須条件の一つと言える。


(何よりフェンダーは、第一貴族の強さは知識や教育では無いと示唆した。それはつまり、時間を掛けて強化したり、何か特定の条件を満たしたりという事では無いという事で、俺たちが手に入れられない類のモノでもないということ・・・)


 ならばもし、反乱を起こして上手く帝国を追い詰めることが出来たとしても、いよいよとなれば第二貴族なんかにもその力を与えて戦力を強化できるという事で、最上級魔族とさえ渡り合える第一貴族並の強さを持つ魔導士を量産できるというわけだ。


(そんな事されたら、組織力で劣る俺達反乱軍に勝機は無い。だが、言い方を換えれば______)


 その秘密を手に入れられれば、自分達も第一貴族並の魔導士を量産できるという事でもある。

それは、仮にフェンダーが反乱軍に加わらなくても危険を冒す価値があるものだろう。


(秘密を知った後、フェンダーが少しでもおかしな言動をしたら、速攻でヴァリネスに連絡してフレイス達を送ってもらって帝国から脱出だ_____!)


極論、それさえ手に入れば、オーマ達にとって、もはや帝国に居る意味も必要も無くなる。

 冷静に現在の状況(クラースに追い込まれている現状も含む)を踏まえて、オーマは決断した。


「分かりました。見せてもらいしょう。貴方の“誠意”を」

「ありがとう。感謝する」


 覚悟を決めたオーマは、フェンダーが案内するままに脱出用の通路に入って行った______。

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