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チート勇者ろうらく作戦  作者: 脆い一人
第七章:勇者と魔王の誕生
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フェンダーからの誘い

 それはオーマにとって、突然の申し出だった。


「は、反乱軍に・・・・?」

「そうだ」

「な・・・・」


 ダマハラダ砂漠の戦いが終わった数日後、フェンダーは一足先に帝都に帰国するという事で、わざわざオーマの下へと挨拶に来てくれた。

そこでオーマは、礼儀としてお見送りをするため、野営地の外に出てしばらくフェンダーに付いて行くことにした。

 そして、フェンダーの後ろについて歩き、野営地の外を出て、少し歩いた人気の無い場所で、次の一言をフェンダーに言われたのだ。


“オーマ、私を貴方の反乱軍に加えて欲しい”_____と。


(どういうつもりなんだ・・・・・?)


 オーマはフェンダーが自分の反乱に気が付いている事自体には驚かなかった。

クラース達にはもう知られていると思っていたし、スカーマリスでハツヒナが言っていた様に、第一貴族はそうなる事も想定して動いていた。

だが、その事をフェンダーがオーマを反逆者として断罪するために問い詰めて来るならともかく、“仲間になりたい”とは一体どういう事だろうか?

オーマにとっては予想外過ぎる発言だった。


 何故?どうして?_______限りなく怪しい。


 そう思う反面、「フェンダーなら信用できるかも・・・」とも思ってしまう。

この戦いでのフェンダーといい、晩餐会でのフェンダーといい、フェンダーからは第一貴族らしくない、裏表のない印象があった。


 これは“クラースの計画”だろうか______?そんな事もオーマの頭の中を過った。


 クラースたち第一貴族は、勇者候補たちを自分達のコマとするため、オーマに死んでもらうつもりでいる。

一瞬、このフェンダーがその処刑役かとも思ってしまい、人気の無いところで二人きりになってしまった事に焦ったが、冷静に考えれば、フェンダーを見送って来ると言って野営地を出たオーマが死んでしまえば、フェンダーが疑われるに決まっている。

そうなれば、クラース達の計画は失敗するので、こんな安易な方法ではオーマを処刑しないだろう。


 「な、何故ですか・・・・?」


 話を切り出されたオーマは戸惑った挙句、駆け引きも何もなく、率直に理由を問うことしかできなかった。


「皇帝陛下をお護りするためだ」

「陛下を?」

「そうだ。帝国・・・いや、第一貴族に対して反乱を企てている君なら分かるだろうが、クラースとマサノリは帝国を含めた大陸の全てを牛耳るつもりでいる。そして、その計画は順調だ。計画がそのまま進み、勇者とその候補者達を傀儡にして、魔王も倒したならば、その時点でもうクラースに敵はいなくなる。そうなれば、クラースは容赦なく次の標的を皇帝陛下に定めるだろう」

「!?陛下にまで!?」


そんなバカな!____と言いかけて、そう思うことこそ、そんなバカな!と思ってしまった。

フェンダーの言う通り、大陸に敵がいなくなればクラースにはもう隠れ蓑は必要ない。クラースが何故、皇帝に遠慮する必要があるだろうか?


「奴は必ず自身が皇帝となるシナリオを描き、それを実行するだろう。皇帝に反乱を起こすのか、もしくは皇帝を幽閉するのかは分からないが、傀儡にするだけでは済まないだろう。そうなる前にクラース達を討たなければならない・・・」

「・・・・・・・・・」


 筋は通っていると感じた_____。

これまでのフェンダーの態度と言動を見て、もしクラースと皇帝ルーリーが対立するならば、フェンダーなら間違いなく皇帝ルーリーに付くだろう。

そして、勇者を手に入れて魔王を滅ぼし、大陸を制覇したならば、クラースがルーリーに牙をむくというのも納得できた。

それは、これまで見てきたクラースの人間性____


(_____奴に忠誠心なんてものは無い!)


どころか、クラースは己以外、誰のことも信用していないとオーマは思っている。

人を信じない人間に、どうして忠誠心が芽生えるというのか?

 クラースは物事に対しては恐ろしく利己的で、悪意や敵意を悟らせずに強かに自身の事を成す。

その人間性は、オーマのこれまで出会ったすべての存在の中でも、ぶっちぎりで逸脱している。

今、クラースがルーリーの下に付いているのは、その方が安全で、得だからでしかない。


(だが、どうしろと____?)


 フェンダーという人間は信用できる。信用したいとも思う。

フェンダーの言う事も信用できる。信用したいとも思う。

だが、疑惑は拭いきれない。


 そう思わせてこちらを油断させる作戦だろうか_____?


そう考えてしまう。


(いや・・・それは無い)


そう考えておきながら、オーマは心の中でその可能性を否定する。

これはフェンダーの人間性というより、自分の能力に対する自信だ。

オーマとてバカじゃない。そうと分かっているなら、相手の意図を見破れないほど愚鈍じゃない。

オーマの審美眼は、フェンダーは限りなく信用できると言っている・・・・。


「・・・・くっ」


 だが、それでもオーマは踏み込めない。

フェンダーの立場が“第一貴族”というだけで、オーマは信用しきれないのだ。

 “救国の英雄”となったときに第一貴族から受けた仕打ち。

その時に見た第一貴族たちの人間性。

そして大陸を牛耳る戦闘と戦略、智謀の“力”・・・・。

これらがトラウマとなっていて、どうしてもオーマには決断できなかった_____。

 その時は結局、答えを保留にしてフェンダーとはその場で別れた。

フェンダーもいきなり反乱軍参加を申し出て、オーマからすんなりと信用して迎えてもらえるとは思っていなかったのだろう、誰にも悟られない様に連絡を取れる手段だけをオーマに教えて、先に帝都へと帰国していった。


 この問題、もちろんオーマ一人では抱えきれないので、オーマは一人にだけこの事を打ち明けた。

 ヴァリネスだ。

隊長達との付き合いも長い。勇者候補の子達とも信頼関係は築けている。

だが、こんなときにオーマが一番に頼るのは、やっぱりヴァリネスだった。

だが、ヴァリネスの回答もオーマと同じだった。


「話の筋は通っているし、フェンダー自身は信用できると思う。けど、やっぱり第一貴族だし、フェンダーが信用できても、フェンダーが自覚無くクラースに利用されている可能性もあるから、信用しきれないわ____」


_____だった。


 そういうわけでその後、帝都に帰国するまで、ずっと頭の片隅にフェンダーの申し出が離れなかった。

こう言うと、勇者候補たちにとっては言い訳にしか聞こえないかもしれないが、そういうわけでオーマには勇者候補たちの相手をする余裕が無かったのだ。






 「_____というわけで、マサノリからの報告では、ココチアとの会談も順調だ。リジェース地方はほぼ支配を終えており、エリスト地方も、ジョウショウからスカーマリス攻略は弊害無く侵攻できていると報告がある。ラルス地方は武力侵攻から外交制圧に方向転換したせいで、侵攻がやや遅れているが、その分危険は少なく、不測の事態が起きても対応しやすい。加えて、スカーマリス同様にタルトゥニドゥもカスミのウーグスが研究を進めていく過程で制圧が進んでいている。そして勇者候補たちは君が引き入れてくれた。周辺国、魔族、勇者候補と、我々に対抗できる力を持った存在は全て抑えることが出来たと言えよう」

「表立って対立する勢力は無くなったという事ですね」

「そうだな。まだ潜在的には敵対する存在は居るだろうが、今の状況でなら、我らが油断しない限り、我らを打倒するための大義は作れないはずだ。敵対する存在が我らに反抗しても大衆が味方をする事は無いだろう。なら問題は無い」


 表立って敵対勢力がいなくなった帝国には今、敵対できる理由が無い。

仮に、帝国を打倒する大義もなく無理矢理に帝国と対立しても、世間からの支持は得られない。

そうなったら、魔王は問題無いが、人間である勇者は反乱軍同様に社会で生きてゆけない。


「では、今後の私の役目は、新たな勇者候補の捜索と引き抜きになるのでしょうか?」

「いや、今のところ貴君にそれをやらせる気は無い」

「はい?」


むしろそう言われる方がオーマにとっては苦しい・・・。

なんだったらフェンダーからの申し出の事もあるので、合法的に再び帝都を離れる理由が欲しかった。

オーマの中で、自身の処刑の時期が迫っている事をここでも感じ取るのだった_____。

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