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チート勇者ろうらく作戦  作者: 脆い一人
第七章:勇者と魔王の誕生
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魔都への帰還(2)

 「むぅ・・照れ屋だなぁ我が運命の夫は、まあ、そこもカワイイがな」

「か、カワイイとか言うな・・・」


 幾ら最強と謳われる騎士とは言え、年下の女の子(しかも超美人)にカワイイとか言われると、素人童貞ではリアクションすらままならない・・・。

だがフレイスの方は、そんなオーマの態度にますますSっ気のある笑みを浮べて近寄って来る。


 「何を言っているのだ、奥手のくせに。本当は私にリードしてほしいのだろう?」

「う、うるせーよ!マジでいい加減にしろ!フレイス!」

「いや、いい加減にするのはオーマの方だ!」

「は、はい・・・・?」

「もう一月も経っているぞ?だというのに、私とオーマは一向に進展していない。なあ?そろそろいいだろう?」

「な、何がだよ?」

「初夜ろうじゃないかっ!!」

「バカ言うんじゃねーーーーーー!!」

「バカを言っているつもりは無い!私は本気だ!初夜ろうオーマ!!」

「だから戦闘態勢でバカ言うんじゃねーーーーーー!!」

「______ぶぅ」

「と、とにかく、今日はダメだ。本城にも呼ばれているし、やる事がある」


そう言うオーマの視線の先には、ヴァリネスの姿があった。


「・・・・・」

「むぅ・・・まあ、帰って来たばかりならバタつくか、仕方が無い。今日は引き下がろう。だがオーマ、いずれちゃんと初夜ってもらうぞ?」

「・・・・・」

「初夜ってもらうぞ!?」

「・・・・はい」


口に出した瞬間に、“言ってまった・・・”と後悔するオーマだったが、フレイスの迫力に気圧されてしまった。


 「_____と、それより団長さん」


フレイスとの話の決着が付くまで待っていたのか、オーマとフレイスの話が済むと、コレルがすぐにオーマに声を掛けて来た。


「何だ?コレル?」

「何だ?では、ありませんわ。我々はこれからどうすれば?帝都に帰還して安心するのは勝手ですが、我々は右も左も分からないのです」

「よし!それなら、このフラン様がコレルちゃんに手取り足取り_____」

「兵が寝泊まりする宿舎は用意してくださっているのでしょう?案内してくださいまし」

「む、無視・・・・酷いよ、コレルちゃん。相手してくれよぉ・・・」

「へぇ、なら私が相手してやろうか?フラン?私は今独身だしよ」

「私はむしろ、貴方に構ってほしいくらいですが?」


アデリナとナナリーの二人が並んでそう言って、フランに笑顔を見せていた。


「あ、いや・・・遠慮しておきます」


アデリナとナナリーに詰められたフランはすごすごと退散するのだった・・・・。


 「そうだな。いつまでも、門の前で兵を立たせていてもなんだ。副長、シマズとナナリーとユイラを連れてラヴィーネ・リッターオルデンを宿舎に案内して、各役所の手続きを済ませてくれ」

「はいはい」

「サンダーラッツの各隊長達は、いつもの様にサンダーラッツ兵達の事を任せる」


「「了解」」


「ジェネリー、フレイスの住まいは君の屋敷を使うよう通達があった。案内してやってくれ」

「分かりました。さあ、案内しましょう。フレイス」

「私は別にオーマと同じで_____」

「さあ!案内しましょう!フレイス!」

「ふぅ・・・分かったよ」

「では皆、ここで一旦解散だ。次の指示があるまで、ゆっくり旅の疲れを癒してくれ」


「「おー」」


 オーマの指示を受け、各隊長達は兵を連れて門の前から移動していった・・・。

そしてオーマも、道中まで勇者候補と付き合った後、クラースに面会するためにドミネクレイム城へと入るのだった_____。




 ドミネクレイム城、クラース政務室_____。


 「本当によくやってくれた。あのフレイスを引き入れ、ココチア連邦との戦いにも勝利した。最早、言う事は無いな。ここ数年での貴君の働きには、我ら第一貴族も頭が下がる思いだ」

「とんでもない事でございます。クラース様を筆頭に、帝国貴族の皆さまのご協力あってこそでございます」

「そこまで謙遜する必要は無い、オーマ・ロブレム殿。貴君の働きがなければ、この大陸にはまだ帝国に対抗しようという勢力が存在し、勇者候補達もまだ帝国傘下には入っていなかっただろう。大変な功績だと私は感服している」


 クラースと面会すると行われる、いつもの前口上。

だが今回は、クラースの様子がいつもと違う様に感じていた。

クラースは“本当に”オーマを褒めているようにオーマには見えていた。


(ならやはり、いよいよか・・・)


だが、いや、だからこそ、オーマは警戒する。


 クラースは本当に喜んでいる_____。


 それはつまり、“クラースの計画”が順調に進んでいる事を指すはずで、そのクラースの計画の先にあるのが、自分の死であることを自覚しているオーマにとっては、全く喜べるものではない。


(勇者候補は全員加わった。敵対勢力もココチア連邦との戦争があの結果なら、ココチア連邦も他の勢力も反抗するという事は無いだろう。俺達反乱軍を除けば、もう存在しないと言える。なら、こいつらは計画を次の段階に移すはずだ・・・・)


その“クラースの計画の次の段階”とは、どのようなモノだろうか?

考えれば考える程、オーマの背中は冷たくなり、纏わりつくような圧迫感に支配される。


(新たな勇者候補の選別、魔王の捜索、他勢力への影響力の拡大、自国の支配強化、そして____)


今存在する勇者候補を帝国の傀儡にするため、オーマを生贄にする事______


(・・・その日は近い気がする)


そうオーマは予想する。


 では、どうするか_____?


 オーマはこの事について、帰国前から考えていた。

最初に思い付いたのは、ダマハラダ砂漠の戦い終了時点で反旗を翻すか?____というものだった。

 その時一緒に戦場に居た、第一貴族(フェンダー含む)とその傘下の軍団は、戦いが終わると早々と引き上げて行った。

そのため、オーマ達サンダーラッツとラヴィーネ・リッターオルデンはノーマークだったのだ。

勇者候補が全員揃ったことで、タイミングも申し分ない。

戦後で弱体化しているボンジアを通ってワンウォール諸島に出れば、プロトス達と合流だってできる。

或いは、そのままフレイス(アーグレイ)に渡りをつけてもらって、ココチア連邦を反乱軍に誘うという手も思い付いた。

だが結局、それらはボツにした。

 その理由は先ず、ラヴィーネ・リッターオルデンは加わったばかりで、連携が期待できないこと。

練度の高い帝国軍相手に、数と質で劣る反乱軍。そんな反乱軍の中で有力なのはサンダーラッツとラヴィーネ・リッターオルデンだ。

この二つの連携が上手く行かないと、帝国との戦いは厳しい。

 次にダマハラダ砂漠で反乱起こすと、孤立する可能性が有ったこと。

フレイス達も決してココチア連邦と仲好しというわけではない。

ならば、ココチア連邦を反乱軍に誘っても確実に仲間に出来る保証が無い。

ココチア連邦の残存勢力を考えれば、こちらが吸収される可能性だってある。

それは、自分達の支配者が変わるだけで、ほとんど意味が無い。

逆にココチア連邦の心が完全に折れていれば、反乱軍を生贄にして帝国に擦り寄る可能性だって有る。

 そしてもう一つが、今の段階で反乱を起こしても市民、つまり世論が味方にならない事だ。

今、ただ反乱を起こしても、オーマ達は完全に悪者となってしまい、仮に帝国を打倒できたとしても、大陸は乱世となり、混乱するだろう。

いや、帝国が圧力を掛ければ大陸自体が敵になる可能性が有り、そうなれば、反乱軍はまともに物資を調達する事も出来なくなり、軍を維持できず、戦えないだろう。

加えて、プロトスやデティットの様に、本国が帝国の友好国である反乱軍志士は、その立場から反乱軍のために動くことが難しくなってしまう。

 更にもう一つ大きな問題が、魔王と勇者という不確定要素だ。

今、オーマの味方には勇者候補全員が加わってくれているものの、この中に真の勇者が居るという保証はない。

帝国の中から真の勇者が誕生したりすれば、もうそれだけで反乱軍の敗北となる可能性が有る。

 更には魔王の存在もまだ不明で、いつ誕生するのかも不明だ。

反乱を起こして、世が混乱しているタイミングで魔王が誕生してしまったら、最悪、人類が滅ぶかもしれない。

 反乱を起こすなら、帝国が大陸での支配力を強める中で、魔王が誕生、帝国が対応できずにいるところに、勇者候補の中から真の勇者が現れ、その人物を旗印に決起_____。

帝国と戦う上でも、魔王軍と戦う上でも、世論を味方にする上でも、これがベストタイミングだろう。

ここまでとは言えなくても、もう少し舞台に上がる準備をして時期を測りたいところだった。

だが、このクラースの様子を見る限り、その時間は決して多くないだろう。

そうなると、オーマにはほとんど選択肢がない。仕方が無い事だが、追い詰められている状況だ。


(やはり、フェンダーに会って話を聞いてみるしかないか?)


 クラースとの面会で自身の窮地を自覚したオーマは、ダマハラダ砂漠での戦いの後、一足先に帰国したフェンダーから出された提案を思い出していた______。

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