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チート勇者ろうらく作戦  作者: 脆い一人
第七章:勇者と魔王の誕生
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魔都への帰還(1)

 ダマハラダ砂漠での戦いを終えたオーマ達サンダーラッツ。

そのまましばらくの間はココチア連邦を牽制するため、野営地に駐屯するよう命令されていた。

その後、ココチア連邦がドネレイム帝国との和平会談に応じると、ドネレイム帝国とココチア連邦の戦いの場はテーブルへと移行し、サンダーラッツにも帰還命令が下り、オーマ達はサンダーラッツ並びにラヴィーネ・リッターオルデンを連れて帝都へと帰還する

 そうしてオーマ達がドネレイム帝国の首都へと帰還する頃には、月日は1か月以上流れおり、暦は6月手前にまで進んでいた______。






 FD921年、5月下旬、帝都ドネステレイア______。


 「_____へっくし!」

「なになに?ミューラー君風邪ひいたの?大丈夫?そう、ダメなのね。任せて!今夜はお姉さんが一肌で_____」

「ぬぅぁああ!!うっとおしぃい!」


ヴァリネスの畳み掛ける様なアプローチに対して、ミューラーは心底うっとおしいという態度をとる。

因みにヴァリネスには、まったく堪えていない。


 「でも真面目に大丈夫ですか?ミューラー?」

「ロジ・・・」

「帝都に戻って来て、気候が大分変わりましたから。ボクたちは遠征軍で慣れていますが、短い期間で気候の違う地域を移動するのは大変ですよ?」

「・・・確かに真夏から春に戻って来たような感覚で、体は戸惑っているみたいだが、でも、まあ、大丈夫。少し肌寒いくらいだ」

「それ、風邪の引き始めじゃないですか?」

「?____おい」


そう言ってロジは、ミューラーのおでこに自分のおでこをくっつけた。


 「ホモォオオオオオオオオオオオ!!」


そしてユイラから“腐のオーラ”が放たれた______。


「うおっ!?ユイラ、うるせーぞ!」

「だってミクネ、だってミクネ!ロジ×ミュラですよ!?美少年のツーショットですよ!?萌えませんか!?」

「・・・だってよ。どうなんだ?サレン?」

「だから私に聞かないでください!」

「サレン、照れなくてもいいのですよ?」

「素直になれよ」

「照れているわけでも、素直になれないわけでもありません!」


サレンは顔を赤らめながら、手をパタパタと振って拒否していた・・・。


 「ふぅ・・・まったく、道中でも賑やかでしたが、帰って来てもうるさいですわね。帰国したのですから少しは寛げばいいのに・・・落ち着きませんわ」

「コレルがそんなこと言うって珍しいね(笑)」

「からかわないでくださいませ、アデリナ様。アデリナ様は不快に感じないのですか?」

「ああ、私はこういう賑やかなのは嫌いじゃないね」

「うぅ・・・その社交性が羨ましいですわ」

「そういう事ならお任せだよ!コレルちゃん♪」

「キャァアアアア!!」


_____ドンドンドン!


「うぉおおおおお!?コレルちゃん!さすがに街中で魔法はダメだよ!?」

「うっさいですわ!!この変態!なら近寄らないでくださいまし!!」

「そんな・・・よー、サスゴット、どうして俺はコレルちゃんに嫌われているんだ?」

「・・・・自覚無かったのか?」

「え・・・・」


やはり、自分達の居場所に帰って来るとはしゃぎたくなるのか、こんな調子で、他所ではフランやコレル達も羽目を外し始めていた______。


 「むぅ・・・どうすればサレンとこの感動を共有できるのでしょうねぇ・・・ねえ?ベルジィ?・・・・・あれ?ベルジィ?」

「そういえば、居ませんね」

「どうりであのクソオーラが出ていないわけだ」

「クソオーラは心外ですよ!?ミクネ!」


いつもなら、こういうときに真っ先に腐のオーラを放つはずのベルジィからの反応がなく、ユイラたちは少し戸惑う。

 そうして周囲を探してみれば、ベルジィはいつの間にかオーマの隣に立っていた。


「あ・・・・」

「____っと」


オーマの隣を歩いていたベルジィは、急にフラついて体をぐらつかせたかと思えば____トスっとオーマの懐に収まった。


「「____む!?」」


 瞬間殺気が放たれる_____。

その事に嫌な予感を覚えるオーマだが、努めて無視してベルジィの方に意識を向けた。


 「だ、大丈夫か?ベルジィ?」

「すいません。オーマ団長。今までスラルバンを出たことが無かったものですから、少し体調を崩してしまいました」

「そ、そうか・・・それは無理も無いな」

「・・・団長?すみませんが、もう少しこのままでもいいですか?」

「え?あ、ああ、ま、まあ、それくらいなら_____」


「「____よくない!」」


と、ジェネリーとレインの二人が、ベルジィの手を片方ずつとって引っ張り、オーマから引っぺがした。


「____あん」

「お、おいおい二人共、ベルジィは体調を崩しているんだぞ?」

「兄様、そんな訳ねーです」

「は?」

「オーマ団長、よく考えてみてください。これは、“あの”幻惑の勇者ベルジィですよ?薬学に精通していて薬物魔法まで扱える魔導士が、こんな事で体調を崩すなんてないですよ」

「兄様もソノア・エリクシールで、その品揃えは見ているでしょう?」

「あ・・・そういえば」

「_____チッ」


 言われて思い返してみれば、ソノア・エリクシールには様々な薬品が置いてあった。

化粧品から農薬まで種類が豊富で、医療薬に関しても、腹痛、頭痛、二日酔い、解熱から、不眠症、精神安定剤と、医者いらずなほどの商品が並べられていた。

それらを使えば、多少の体調不良など問題にはならないだろう。


 「ずいぶん手の込んだマネしますね、ベルジィ」

「・・・何の事ですか?」

「ふん、とぼけても無駄だ。オーマ団長は気付いていらっしゃらないが、我々には貴方の“本当の気持ち”など、もうとっくにモロバレだ」

「フレイス加入を切っ掛けに、隠さなくなりましたよね!」

「そうでしょうか?」


「「そうだよ!」」


 ジェネリーとレインの指摘は正しい。

フレイスの「全員“オーマの女”でいいだろう」という開放的過ぎる発言が出て以降、ベルジィは事あるごとにオーマに近づいていた。

 最初はフレイスがオーマとイチャついている時に、フレイスから「一緒にどうだ?」と誘われて、“じゃあ、せっかくだから・・・”というスタンスで加わって、オーマとスキンシップをとるだけだったのだが、帝都に戻る道中でベルジィはどんどん積極的になり、気が付けば一人でオーマとイチャつくようになっていた。


 「最初は“腐女子”なんて呼ばれて、恋愛に興味なさげだったというのに・・・」

「さすが策士ですね。どうしてくれましょう?」

「策士とは人聞きが悪いですね」

「いーや、策士です。兄様に異性を意識させずに距離を詰めるという芸当含めて、相当な手練れです」

「まさしくだ。どうしてくれようか?」

「お、おいおい、お前達・・・」


ジェネリーとレインの“いつもの”不穏な空気を感じ取り、オーマは慌て始める。

 と、そこに何とも覇気のある気配が近づいて来る。

そして_____


「____どうしてくれようも何もない。一緒にイチャつけばいいだろう?」


_____ドンッ!


「「____あう」」


「_____と」


後ろからフレイスに押されて、ジェネリーとレインはオーマの胸にダイブした。


「ちょ!?何をするのですか!?フレイス!?」

「そうです!ありがたいじゃないですか!」

「ありがたいなら、いいじゃないか・・・とにかくケンカするな。みなでイチャつけば良かろう?」

「うぅ・・・で、でも・・・」

「そう簡単にはいかないだろう。貴方と違ってそんなに直ぐには割り切れないんだ。こっちは・・・」

「ふむ、そうか。だが、だからってオーマも、そんな毎回目の前で自分の女がケンカする様は見たくないはずだ。なあ?オーマ?」

「お、俺に聞くんじゃねーよ」

「・・・他に誰に聞けというんだ?」

「それでも俺に聞くんじゃねー」


 これからこの帝都で自分達の身に何が起こるのかを知らないオーマ達は、新たな仲間とのスキンシップと、故郷への帰還を楽しむのだった______。

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